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「行けないけどお参りしたい」願いをのせた江戸の山岳信仰

当社本殿の左手にある三峯みつみね神社。

当地の御嶽信仰者によって古く創建された御嶽おんたけ神社」に、江戸末期に「琴平神社」が、大正時代には埼玉・秩父にある三峯みつみね神社」より御分霊を受け、相殿で三社がお祀りされているものです。

三峯神社は景行天皇の命により東国平定に遣わされたヤマトタケルが秩父の三峯山の山川が清く美しい様子をご覧になり、国をお生みになられたイザナギ・イザナミの二神を偲んで創建されたという古い謂いわれのある山岳信仰のお社です。



◆願いを乗せた山の旅

世情が安定し交通網が発達した江戸時代も中期を過ぎると、富士信仰の流行と時を同じくして江戸の町には関東近県の山岳信仰が隆盛を極めました。

当社境内にも末社として長野・木曽の御嶽山おんたけさんに鎮座する御嶽神社おんたけじんじゃが設けられ、相殿あいどの埼玉・秩父の山に鎮座する三峯神社みつみねじんじゃが大正時代よりお祀りされていますが、それらもやはり、“行けないけどお参りしたい”という地域の信仰者(講組織)の強い信仰心に応えたもの。

頻繁に本社に参詣が出来るものではないので、平素は自宅の神棚でお札をお祀りし、節目節目に神社に詣で祭礼を行い、一年に一度、代表者で本社に詣でお札をいただくという形が通例だったようです。

◆「大口真神」神となったニホンオオカミ

三峯神社の神様の使い(神使)はオオカミです。
ヤマトタケルが信濃国(現在の長野県)を旅していた時、白いシカの姿をした山の神が現れます。

山の神はヤマトタケルが投げつけた野蒜のびる(=全国で自生する、食べられるネギ属の野草)が目にあたり倒れてしまうのですが、その祟りか山中で道に迷ってしまうヤマトタケル。

そんなヤマトタケルの道案内をして、危機を救ったのが白いオオカミ(山犬)だったことから、現在もヤマトタケルと縁の深い神社にはオオカミが祀られています。

こうした逸話からは、『もののけ姫』に登場するシカの姿をした『シシ神』や、そのシシ神の森を守護する白い犬神『モロ』が想起されますよね。

稲荷神社のキツネをはじめとして、さまざまな動物が神様の使いとして信仰されておりますが、オオカミはその中でも別格です! 

『大和風土記』では、逸話を呈して大口真神おおぐちまがみ」と呼ばれ神格化されています。


オオカミは攻撃性への畏怖だけでなく、畑を荒らすシカやイノシシなどの害獣から作物を守護する動物でもあるため、盗難除け・魔除けの象徴として、親しみを込めて「おいぬさま」とも呼ばれ、現在も広く信仰されています。

当社境内の三峯神社の正面にも、神使のオオカミの石像が鎮座されています。

どうかこの機会に、本殿と合わせてご参拝ください♪



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