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焼きそばの果てしなき旅【その5】

リアルに旅になってきた。先日茨城県筑西市のしもだて美術館に安斎肇先生の個展を鑑賞に行った時に、安斎先生からじきじきに焼きそばのお店が近くにあるよと教えてもらい、行ってみたところこれがワタシの魂にドンと響く焼きそばに出逢えたのです。

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中山屋』の焼きそば。メニューは焼きそばとペットボトルの飲み物だけ。焼きそばの具はキャベツのみ。追加トッピングなし。300円から100円刻みでいくらでも多いのを出してくれるシステム。写真は400円のもの。

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一見どこにでもありそうな焼きそばだけれど、麺が超低加水でしっかりとした歯応え。ソースの味わいも華美なところはなく、ストラトキャスターよりもテレキャスターの堅実さ。これは素晴らしい。ウマウマウー。ストイックながら優しくポップな焼きそば。ブログ記事はこちら。旅をするとこんなステキな出逢いがある。だから旅をする。だから旅はやめられない。日本のあちこちにその地に根付いた様々な焼きそばがある。僕の本業は天丼だけれども焼きそばも追い続けたい(本当の本業はミュージシャンです)。中山屋の焼きそばブラボー。

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中山屋』でお持ち帰りの蒸し麺とソースが売っていたので購入して、家で作ってみた。具はキャベツのみ。

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ウマウマウー。ウマイのだがお店で食べた方が圧倒的にウマかった。その差は一体何なのだろう。またお店に行って食べて、持ち帰って作って、またお店に行って、と云う反復横跳びを繰り返さねばその神髄には迫れないであろう。そこの旅は何度も何度もループするであろう。そうと決まれば近日中にまた行こう。ちなみにこの焼きそばには七味唐辛子がとても合う。機会があれば試されたし。

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そして数々の疑問にも対峙することとなる。人はなぜ焼きそばパンに挟むのだろう。東京都荒川区南千住にあった『野澤屋』と云うお店が元祖であると云う説が有力だそうな。コッペパン焼きそばを別々に販売していたところ「面倒だからパンに焼きそばを挟んでくれ」と云うリクエストに応えて販売したのが昭和27年。それが大ヒットして、焼きそばパンが広まっていったと云う経緯。キーワードは「面倒だから、面倒臭いから」と云う雑でテキトーな精神。これが進化論の神髄ではないのか。カツレツとカレーを別に食べるのが面倒だから一緒にしろと云う意見からのカツカレー然り(史実には基づいていません)。カツレツとご飯もどうせ一緒に食べるのだから丼にご飯入れてカツを載せちまえと云うチャレンジからのカツ丼然り(史実には基づいていません)。そうした経緯で生まれたそれぞれのジャンルが長い歳月を閲して、洗練されポップになり、ライバルとの戦いを制し、遂には日本一の座を獲得することとなるサクセスストーリーを我々は目の当たりにしているのです。焼きそばパン、恐るべし。そんなことはないか。テキトーに話を広げすぎました。すみません。

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更に玉子サンドの具も同乗してきてスゴイことになって来ている焼きそばパンの個体。焼きそばとナポリタンが呉越同舟しているのも見たことがある。焼きそばパンも恐るべし。ステキなヤツに出逢ったらまたお知らせします。

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そしてこの疑問からも逃れることは出来ない。カップの焼きそば。これはお湯を入れてお湯を切ってソースを絡めて出来上がり。焼くという行程がない。焼くという要素が一つも含まれていない。なのに焼きそば。この件に関しては若い頃からずっと悩まされてきた。焼かないのに焼きそば。焼かないのに焼きそば。二度云った。焼かないのに焼きそば。三度云った。もう哲学的な問いかけである。ふと、焼かないのに焼きそばと云うのを、焼いてみたら何そばと云うのであろうかと思い付いて、焼いてみることにした。正確を期するなら炒めなのだが。ああそうすると世の中の焼きそばは殆どが焼きそばでなく炒めそばになるのだ。どうしよう。また眠れなくなっちゃう。

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とにかく焼こう。ご覧の通り使うのはペヤングソース焼きそば。1975年発売の大ベテラン。関東地方ではこれがスタンダード。西の方では焼きそばUFOが主流らしいと聞いた。これまでの人生でこのペヤングにもかなりお世話になった。かなり大量のペヤングソース焼きそばを食べて生きて来た。でもフライパンで作るのは生まれて初めて。袋麺の焼きそばの作り方を踏襲してみよう。フライパンに水を入れ、沸騰したところに麺とかやくを入れる。水分がなくなって麺がほぐれたらソースを入れて焼いて(炒めて)、出来上がりにスパイスとふりかけをかけて出来上がり。

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ほぼ袋麺の焼きそばの出来上がりと同じである。

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ウマウマウー。正確を期するなら焼いても(炒めても)ウマイ。でも何か釈然としないのはどうしてか。これはやはりフツーの作り方で作った味わいや麺の口当たりに馴染みがありすぎるせいだ。お湯を入れて作って、湯切りが不十分で、そのお湯がちょっと残っている感じがペヤングソース焼きそばらしさでもあると自分で勝手にそう思っている。名称は焼きそばだけど別ジャンル。ちなみに湯切りに油断をすると、カップの中身をシンクに全部ぶちまけてしまうなどと云う哀しい出来事にも見舞われることもある。僕は久しぶりに最近やってしまった。油断していた。悔しい。今後もそうした過ちを繰り返さないように心して生きて行きたい。

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そして以前ご紹介した北海道美唄市の角屋のやきそばだが、これをパッケージ最上部にある「フライパンでいためてお召し上がりください」と云う文言を真に受けて、前回はその通りに作って食べたのだが、後にこれは炒めたりせずにそのまま食べるのだと云う作法が判明した。なので再度購入してそのまま食べてみた。

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そのままガブリと食べた。ウマウマウー。噛み切った麺の集合体が口の中で麺として解けていく妙味。薄味ながら全体にしっかり行き渡ったウスターソースの風味が麺のほの甘さと相俟って絶妙。素朴ながら品位すら感じる。味わいの中から鼻腔にふっと抜けて行く香りはウスターソースに加えられている肉桂(ニッキ)なのだろうか。上質な和菓子を食べている時のあの愉悦の一瞬を垣間見た気がする。ちなみにこの角屋のやきそばの話題を取り上げていたら美唄にはもう一つ「とりめし」と云う名物があるとの情報も戴いた。ありがとうございます。いつか美唄に行かねばならない。こうして旅が旅を呼んで、股旅、ではなくまた旅に出るのであった。これからは職業欄に「旅人」と書いてみようか。冗談です。やりません。第5回はここまで。とりとめのないバラバラな内容でごめんなさい。次回予告。次回はストイックです。

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焼きそばの果てしなき旅はまだまだ続きます。

焼きそばの果てしなき旅【その1】
焼きそばの果てしなき旅【その2】
焼きそばの果てしなき旅【その3】
焼きそばの果てしなき旅【その4】

末永くがんばりますのでご支援よろしくお願い致します♫