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小野瀬雅生の2020年ベストアルバム10選

僕の2020年ベストアルバムを10選んでみた。年を取ってくると新しくリリースされた音楽を聴かなくなりがちなので、年末から年始にかけては無理矢理にでもその年にリリースされた音楽をチェックして、自分の心に響くもの、掻き立てるもの、嬉しいもの、ビックリするもの、それらをピックアップするのが毎年の僕の恒例行事になっている。誰の参考になるかなんて考えないけれど、こうして発表することでまた自分の意見もまとまるのでお付き合いください。かなりバラバラなので呆れる方もいらっしゃるかも知れない。僕はそう云うヤツなんです。それでは行ってみよう。

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特に順位付けはしないのだけれど、ベストワンだけはこれで決まり。アメリカのドゥーム・メタル・バンド、ポールベアラー Pallbearer の4枚目のアルバム『Forgotton Days』が僕の2020年ナンバーワンアルバム。チューニングが極限まで下げられて音程判別可能音域ギリギリの低さと、テンポが遅くて重い重い曲調、それにこうした音楽に付きもののデス声ではないメロディアスなヴォーカルが相俟って独特の世界観を作り上げている。ファーストアルバム『Sorrow and Extinction』(2012年作品)を最初に聴いた時の心の昂ぶりと魂の震えを今でも忘れられない。重い。低い。内容も悪魔とか地獄とかを越えて宇宙空間の空虚さに到達する程の陰鬱さに溢れて救いようがない。ラブクラフトの小説世界を音にしたらメタリカではなくてポールベアラーになるはずだとも思った。ああこう云う人達がいたんだ、ありがとうありがとう本当にありがとう、と感謝すらしたくらい。このファーストアルバムは無人島に持って行く何枚かに入りそうなくらいにスキスキスー。この4枚目もとてもスバラシイ。たまに入るシンセの音の選び方がバツグンで身悶えしそう。ありがとうポールベアラー。ずっとずっと続けてね。応援してます。

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続いてはこう来ちゃう。カイリー・ミノーグ Kylie Minogue の『Disco』だよ。ステイホーム中に自宅に簡易スタジオを作ってレコーディングしたと云うアルバム。希望の光でこの難しい時代を照らすようなスカッとしたナイスなナンバーが目白押し。サイコーです。2001年の『Fever』も2010年の『Aphrodite』もダイスキですがこのアルバムもお気に入りになりそう。カイリーももう52歳となっ。でもとってもキレイ。歌声も全く淀みなくクリアでハッピーでセクシー。サイコーでサイキョーです。

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続いてはクルアンビン KhruangbinMordechai』。独特なサウンドと世界観のクルアンビン、剣さんも大好きです。今作はヴォーカルが多めですが歌モノと云うわけではなく歌も参加している、歌も混ざってると云う感じでどこをどう切っても金太郎でなくクルアンビン。ギタリストの僕としては「Father Bird, Mother Bird」や「If There is No Question」のギターサウンドを聴いて、ギターに最強のエフェクトはやはりリヴァーブ(残響)であると納得した次第。Mark Speerのギタープレイはそのリヴァーブの在り方からベンチャーズを想起する方も多いのだが、僕としてはロイ・ブキャナンやアラン・ホールズワースのギターサウンドにも通じる異次元空間感を深く愛でるものである。マイナーキーのメロディーをしっかりマイナーコード(トライアド)に納める曲調もやっぱりスキ。あまり聴き込んでいるとクルアンビンになっちゃいそうなので程々にしておきます。世界観はもう沁みちゃっているんですけどね、僕の中に。

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アメリカのメタルバンド、ラム・オブ・ゴッド Lamb of God のニューアルバム『Lamb of God』。30年近いキャリアを誇るベテランバンド。来日も何度もしている親日家で、ヴォーカリストのRandy Blytheの肩にはデビルマンのタトゥーが掘られております。ここへ来てアルバムタイトルが自分たちのバンド名と云う素晴らしさ。全く枯れたりなんてしない充実した内容の作品。気の抜けた曲なんて一切ナシ。全曲リスナーの首の骨がガタガタ云うまでのヘッドバンギングを要求。気分が優れない時はこれを聴いてスカッとすべし。でもメタルバンドやりたくなっちゃう。

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Martin KhanjaとSam Karuguの2名によるケニアのデュオユニット、デュマ Duma のデビューアルバム『Duma』。いきなり過激で強烈なサウンドが炸裂。ポップさなど皆無。超高速打ち込みリズムとノイズの嵐。激辛。でも何度か繰り返し聴いていると予期しなかった変なビジョンが見えてくるのは激辛カレーとかと一緒か。変なビジョンってのがどうだったかはうまく表現出来ないけれど、僕が子供の頃に住んでいた家の隣の家の玄関先が見えたり、どこだか判らない街の商店街アーケードが見えたりした。あと夏空。

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レッド・ホット・チリ・ペッパーズのギタリスト、ジョン・フルシアンテ John Frusciante がリリースしたエレクトロミュージックのアルバム『Maya』。ギターなど一切ナシ。エレクトロ。スクエアプッシャーと見紛うばかりの作品群。Mayaはジョンが飼っていた猫の名前。大好きなMayaが亡くなったのでアルバムタイトルにして、エレクトロ作品を発表する時の別名(Trickfinger)も使わなかったそうな。精緻な音世界の中にちょっとした哀愁を感じたのはそのエピソードを知る前からだった。音楽ってやはりスバラシイ。

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クゲアニヤークゲアニヤーでお馴染みの(そうでもないか)韓国ルーツニューヨーク在住のDJ/プロデューサー、イージ Yeaji のアルバム『WHAT WE DREW 우리가 그려왔던』。クールなエレクトロサウンドにキュートなヴォーカル。最新の世界の音楽事情。開かれている。サウンドと共に韓国語が国の中から世界に羽ばたいている。様々な低音域も見事にスムースに扱われている。この辺りを聴いてないといかんと思うのよ。個人的見解。

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韓国のインディーズスリーピースバンド、セソニョン Se So Neon のアルバム『Nonadaptation 비적응』(邦題:非適応)はスゴイ。1曲目の「Midnight Train 심야행」からして音楽の極にある。数年前の「The Wave」という曲にも度肝を抜かれたが、更に進化している。ソニョンと云うのは少年と云う意味だが、ヴォーカル&ギターのファン・ソユンは女性。彼女の歌がスゴイ。彼女の韓国語も世界に羽ばたいている。そしてギター。クルアンビン級のショッキングなギター。才気に溢れている。コードプレイもリードギターもヤバイ。サウンド的にも曲によってはベースがセンターにいないなどやりたい放題で手加減ナシ。ロックでソウルでポップでサイケでバカラックで渋谷系でもある。アルバムラストの曲「E 이」ではファズギター炸裂! これからもずっと期待。いや付いていきます。兎にも角にもカッコイイ!

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僕と同世代以上の皆さん、カンサス Kansas ですよ。「Carry On Wayward Son」や「Dust in the wind」のあのカンサスのニューアルバム『The Absence of Presence』が2020年にリリースされてますよ。僕が中学生や高校生の頃にヒット作を連発していたバンド。当時のメンバーはギターのRichard WilliamsとドラムのPhil Ehartのみとなってますが、サウンドは紛うことなくあのカンサスのあの曲調であの作風であのサウンドです。とにかく曲がみんなイイです。カッコイイです。今アメリカ大変ことになってますが僕はこのサウンドがバッチリ存在し続けているアメリカを信じます。

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カンサスで驚いていてはいけない。こちらは何とブルー・オイスター・カルト Blue Öyster Cult の新作『The Symbol Remains』がリリースされております。シンボルと云うとすぐに梅宮辰夫を思い出してしまう僕ですが、それはともかくブルー・オイスター・カルト健在。2枚看板のEric BloomもDonald "Buck Dharma" Roeserも現役バリバリです。ギターがイイ音なんだなーどの曲も。3曲目「Tainted Blood」はエイジア風で何だか涙が出た。枯れたりなんかしない。生涯現役。音楽ってスバラシイ。僕もギタリストの端くれとしてもっともっとがんばろう。2021年もよろしくお願いします!

末永くがんばりますのでご支援よろしくお願い致します♫