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心筋梗塞(AMI)患者へのリハビリ

心筋梗塞と聞くと、リハビリでは怖い、イベントが起きたらどうしよう、、、という声をよく聞きます。
私自身、心臓リハに関わり始めた当初は同じ気持ちでした。
しかし、勉強し少しずつ知識が増えることで、ただ漠然と怖いのではなく、何が起こりうるか予想することでの怖さを感じるようになりました。
知識をつけて、正しく怖れるということが大切だと思います。
以下に心筋梗塞の概要やリハについて記してますので、良かったら閲覧下さい。

病態

心筋梗塞は「心筋を栄養している冠動脈の血流が局所的に一定時間以上減少し、その灌流領域の心筋が壊死に至る心疾患」と定義されています。
心筋梗塞は発症からの経過日数や重症度(Killip分類)、発症時のST偏位と梗塞部位、異常Q波の有無などから細かく分類されます。

https://blog.goo.ne.jp/matsubomb/e/7a29d734d8fce3c8f5c139991936aebe

ST−T変化や異常Q波による分類

ST−T変化からの分類
・ST上昇型
・非ST上昇梗塞
  ST低下型
  T波変化型

異常Q波の有無による分類
・Q波梗塞(貫壁性梗塞)
・非Q波梗塞(心内膜下梗塞)

貫壁性の方が重傷であり、リスクも伴います。
貫壁性かそうでないかでST-Tの波形も変化しますのでしっかりと心電図を確認しましょう。

症状
・AMI発症時には、多くの場合、胸痛を認めます。
・その胸痛は「心臓を握りつぶされるような」激しい痛みまたは絞扼感や圧迫感が安静にしてもいても20分以上持続します。また冷や汗や顔面蒼白になることが多いです。
・胸痛は胸の中央が多いが、左肩や左腕、背中に放散することもあります。
・硝酸薬の舌下投与して5分経過しても改善しない場合は救急要請すべきです。
・高齢や糖尿病性末梢神経障害があると無自覚性の心筋梗塞を発症することがあります。

このような情報は診断にはとても大切ですが、患者さんの教育にも必要な内容です。
いち早く適切に対処するには患者さんが正しく理解しておくことも大切です。

検査と診断

12誘導心電図

・心筋梗塞を発症するとT波が増高し、続いてSTが上昇します。
・発症2〜3時間後には、ST上昇に一致した誘導で異常Q波を認め、数時間後にはQSパターンになります。
・ST上昇や異常Q波は冠状動脈の閉塞部位に対応して出現します。
・Q波心筋梗塞は貫壁性心筋梗塞で、異常Q波が出現しないものは心内膜下梗塞に分類されます。

血液検査

・ 心筋梗塞になると、心筋トロポニン、CK,CK-MB,ミオグロビン、心臓型脂肪酸結合蛋白(H-FABP)などの心筋バイオマーカーが上昇します。
・最も一般的な心筋壊死のマーカーの1つであるCKの上昇は、心筋梗塞の診断、予後の子測に用いられます。
・血中CKは心筋梗塞発症後3~8時間で上昇し、10~24時間で最大となり、その後急速に減少し、3~6日後に正常化する。
・ST 上昇型心筋梗塞では、血中CKの最高値が心筋壊死量を反映するといわれています。

心エコー検査

・局所壁運動異常,心臓の動きや大きさ、左室収縮機能・拡張機能の評価、弁の動き,壁の厚さ、など心機能の評価が行えます。
・心腔内血栓,心室中隔孔,乳頭筋断裂による僧帽弁閉鎖不全症などの機械的合併症の診断や急性大動脈解離、急性肺血栓塞栓症の診断にも有効です。
・左室収縮機能を示す左室駆出分画(LVEF)の正常値は56~78%.40%未満を左室機能障害と呼びます。
・左室末期径が52 mmを超えると左室の拡大とされます。
・心筋梗塞では梗塞巣とほぼ一致して壁運動異常が認められます。

冠動脈造影検査(CAG)

・冠動脈造影により、冠動脈の狭窄部位と狭窄度(狭心症の可能性)、側副血行路の有無と発達の程度、石灰化の程度,血栓の有無、スパスムの関与などの評価ができます。
・狭窄部内径と狭窄冠動脈前後の正常部の平均内径から、狭窄部内径比をパーセントで表現します。
・AHA分類では0~25%を25%狭窄、26~50%を50%狭窄、51~75%を75%狭窄、76~90%を90%狭窄、91~99%を99%狭窄(90%狭窄と99%狭窄の違いは、狭窄部に造影剤がみえれば90%,狭窄部末梢は造影されるが狭窄部自体は造影されない場合は99%とする),完全塞は100%としています。
・冠動脈の有意狭窄は75%(51%)以上の狭窄である。ただし、左冠動脈主幹部のみは50%(26~50%)以上の狭窄を有意としています。
・冠動脈の不安定プラークを冠動脈造影で同定することはできないが、近年、血管内イメージング法(血管内エコー、血管内視鏡,血管内干渉断層法)の進歩により、不安定プラークを可視化することが可能となってます。

リハビリテーション

段階的にADL up!

①医師や看護師に前日からの変化の有無を確認する。
②患者自身からも昨日からの体調の変化等を確認する。
③安静時の12誘導心電図や血圧を確認する。前日との比較も忘れずに!
④座位負荷;端座位にし自覚症状の有無を確認する。
⑤立位負荷;下履を履いて起立する。自覚症状や起立性低血圧に注意する。
⑥歩行負荷;指示された距離を歩く。
 歩行距離を患者に前もって説明しておく。
 杖や歩行器は臨機応変に。
 自覚症状は常に確認する。
 常に見守りを忘れず、モニタリング(心電図)も行う。
⑦階段昇降負荷;
 昇りやすいペースで1フロア分昇段する。
 自覚症状や心拍数、心電図を確認し、問題なければ降段する。
 見守りは忘れずに行う。
⑧運動負荷後には背臥位となり、その後の安静時12誘導心電図や血圧を確認する。
 測定中は会話をしない。
 測定後にBorgスケールを確認する。
⑨運動負荷内容や運動後のバイタルサインについて医師に報告し、必要に応じて負荷のステージアップを図る。


リハ中のポイント

・残存狭窄の有無を確認し、心電図の変化を予測する。
・ADL 拡大中に不整脈が増加してきた場合にはすぐに運動を中止する。特に心室性不整脈の増加に注意する.
・ 広範囲の初回前壁梗塞、梗塞後の高血圧の持続、高齢の女性では発症後7日以内に心破裂を起こす危険があるので細心の注意を払う。血圧を低めに保ち、過負荷を控えることが心破裂の予防に重要である。
・入院前の活動性、運動機能、認知機能を確認し,退院に向けての目標とする。
・リハビリテーション時間だけでなく、それ以外の1日の座位時間の設定も行い、離床を促す。1日の座位時間は合計で3時間以上を目標とする。
・冠危険因子の把握と教育指導を効率よく実践していく。
・退院時には運動負荷試験に基づく具体的なADL範囲の指導を行うことが望ましい。

緊急対処方法と二次予防への動機づけ

1.  胸痛が生じた際の対処方法と連絡先を確認すること
2.  硝酸薬の舌下錠またはスプレーの使用方法を確認すること
3.  患者が家族とともに心肺蘇生法講習を受けていること
4.  患者の有する冠危険因子についての説明をすること
5.  二次予防のためのリハビリテーション参加と生活習慣改善への動機付けをすること
6.  禁煙(とその継続)をすること

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