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第3話 亀の子束子西尾商店/亀の子スポンジ

食器を洗う。蛇口をひねり、スポンジに水を含ませ、少量のチャーミー・マジカを垂らし、シュコシュコと揉んで泡をたてれば準備は万端。食器が描くなめらかなバンク上を、手にとったスポンジを滑走させコース上に落ちた汚れを泡で包み込んでは分解し、こそぎ落としていく。誰でも行う行為だ。

そのやり方については、食器洗い人であるそれぞれに宗教ともいえる作法があることだろう。そしてそこには、道具としてどの「スポンジ」を使うかについても一家言が存在するはずだ。人はこだわりの動物なのだ。

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ホームセンターへ行き、キッチングッズの陳列棚へと足を運びラインナップされたスポンジを眺めると、意外なことに気づく。自分が好みとしている、縦横がすぱっと直線に切られたシンプルな「豆腐型」のスポンジはそれほど多くないという事実に。むだに突起などがある形状のスポンジは、使い続けていくうちにそこから傷んで場合によってはボロボロとくずれてしまう。しかし世の中には波型・豆型・凹凸型というバリエーションに加え、なかにはお魚型・お羊型なんてものも存在している。星座占いじゃないんだ、勘弁してくれ。

また、裏面に不織布が貼り付けられた二層構造のスポンジも実に多い。しかしこれまでの経験で言えばこの裏面を有効に活用できたことがない。鍋にこびりついてしまった頑固な汚れを不織布で落とそうとしても、スポンジよりは幾分かはましだと思える程度の微妙な効果しか生まないため、自分ならより強いタワシやブラシに力をお借りしたい。だからスポンジは、手触りが均一な一層が良い。

なかなか満足するスポンジにめぐりあうことがなく悶々とした日々を送っていた(変わった人物と思われてしまいそうだが来る日も来る日も四六時中スポンジのことを考えていたわけではない)なか、解答は思いがけずインターネットの向こうからやってきた。それは当時から眺めては楽しんでいた Summaly という物の百科事典のようなサイトで、そこにタワシのブランドといえばその名くらいしか思い浮かばないあの「亀の子束子」が生産しているスポンジが掲載されていた。頭のなかに福音が鳴り響いた瞬間だった。

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さっそく取り寄せてみた「亀の子スポンジ」はその見た目からして完璧だった。見事な豆腐型・一層構造の造形。スポンジは厚みもたいへん重要なもので、厚くしすぎるとコシが強くなり扱い一方、薄すぎると今度は頼りないものだが、27mmという厚さにコントロールされた亀の子スポンジは手にも収まりやすく絶妙なサイズ感と言える。

そしてスポンジの目の細かさもちょうどよい。銀イオンを配合した日本製の高品質ポリウレタンで成型された本商品は、目がやや粗めにとられ泡切れ・水切れが良く、かといってボロボロとくずれてしまいそうな不安を感じさせない密度と弾力を持ち合わせている。

セルロースのスポンジは泡切れがわるく何度水ですすいでも中から泡が復活してきてしまい清潔さに不安を感じるところだが、亀の子スポンジにはそれがなく乾燥も早い。パッケージに書かれている「銀イオンパワーの高い抗菌力」のコピーがなんと心強いことか。

そういうわけで我が家のスポンジ界という極めて限定的な世界ではここしばらく亀の子スポンジがその頂点に君臨している。いまのところこれ以上に機能を求めていないため代替となる製品を探していないこともあるが、その座はだいぶ安定したものになることだろう。

パッケージのデザインも良いし、彩度をやや抑えた渋みのあるカラー展開が洒落ているのである程度ストックをしているが、一点公式オンラインサイトで購入しようとすると思ったよりも送料がかかることがネックだ。

5,000円以上購入しなければ、地域にもよるが756円ほどの送料がかかってしまう。しかしタワシやスポンジを5,000円以上買い物する機会はそうそうあるというものではない。そこでおすすめなのが亀の子スポンジのラインナップがあるとは意外な BEAMS のオンラインサイトだ。送料自体の設定もやや低いし、なにか服を買うついでに購入すれば送料無料のラインを比較的簡単にクリア出来るだろう。ビームスオレンジという専用色なんてものもあるのでそうした別注品に目が無い方もぜひ。

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