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【詩】 水を蹴る

いつから潜っているのか
もう覚えていない
床の線を伝って
指をそろえ
尾びれを振りおろして
水を蹴る 水を蹴る

幼い頃に教わった
同じ動きを繰り返す
何年も何十年も
何百年も何千年も
同じ動きを繰り返す
ただ繰り返す

水の上にあった
色や音のこと
ぜんぶ忘れてる
ここにはただ
水があって
線が引いてあって

———どこまでもどこまでも
   続いていく水路に
   ほんの数十秒の永遠を
   泳いでいく水の中に
   やわらかく つめたく
   肌を押し返す水の重さに

どれだけ潜っているのか
もう覚えていない
床の線を伝って
指をそろえ
尾びれを振りおろして
水を蹴る 水を蹴る





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