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【詩】 水面の街

湖の上に建つ街は
色ガラスを透かしたように
みんな、うす青く染まっていて
てらてら光る金属の
ビルがまばらに建っていて
鏡のような水の上
ひとは輪になって踊る
どこか知らない国の
ゆっくりした踊りを
踊るひとらの足もとから
いくつも波が広がって
重なって、格子模様を描く
空から降る光は
水面の波に切り分けられて
散り散りになって揺れている
きらきらきらきら揺れている
踊るひとらから離れて
石に腰掛けるひとの
水に浅く浸したくるぶしまで
光のかけらは届こうとして
届かない
いまにも触れそうで
いつまでも触れない

空には雲ひとつなく
飛行機も横切らない
ただ色付きのガラスのように
うす青く広がるだけで
こうしてみると
どちらが空か水面かわからない
そのうちに腰掛けた石の上から
ふわっと体が離れて
空へ落ちていきそうだ
そのときには
輪になって踊るひとらも
一緒に落ちていくかしら
それとも輪になっているから
ちゃんと、この街に
足をつけていられるのかしら

ひとりで落ちていく空の先にも
また新しい街があるかしら





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