【詩】 踊る人形
板の上で踊っている紙の人形
両腕を上げて斜めに見上げて
パーツのない顔で遠くを見る
そこは雨があたるから
こちらへいらっしゃい
そこは雨があたるから……
昨日のことさえ忘れているのに
どこかで覚えた振り付けだけ
体に染み付いているようで
そろそろ雨が降りそうな
ほの暗い空の色です
あなたは少しも構ってないけど
ステレオ感たっぷりの
しっとりしたノイズに包まれて
薄い 脆い 今にもへたりそうな
紙の脚でリズムに乗り
指のない手でメロディを愛でる
風が吹いたら煽られながら
表情のない顔で踊りつづける
そこは雨があたるから
……そこは雨があたるけど
数分後に濡れて崩れるのも
数十年かけて朽ちていくのも
あなたにとっては同じことなのでしょう
私はただ見守るしかないのでしょう
甲斐もなく呼びかけながら
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