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【詩】 おもちゃ箱

おもちゃ箱みたいに
頭の中がごちゃごちゃしてるんだ
何年もかけて集めたおもちゃで
頭の中がごちゃごちゃしてるんだ
街の中を歩いていたって
頭の中はおもちゃで散らかってて
少し見上げた視線の先の
空中に見えないおもちゃが浮かんで
散らかって あれやこれや
遊びながら歩いているから
段差に躓いたり枝に顔ぶつけたり
心がこぼれて空に広がったり
うっかり目を閉じて歩いていたら
真横をバイクが走り抜けたから
出しっぱなしのおもちゃが
引っかかって持ってかれてないか
そればっかりが心配で
ほんとにそればっかりが心配で
もいっかいペリカン見たいとか
五一分の電車に乗りたいとか
バナナ皮ごと食べちゃだめだよとか
日が短くなったねとか
いろんなこと言うけど
いろんなこと言うけど
おもちゃで頭いっぱいだから
ぜんぶ大事だから
おもちゃ触ってもいいけど
見えないところに持ってかないでね
かなしくて仕方なくなるから
ほんとにかなしくて仕方なくなるから
どうしていいのかわからなくなるから
頭の中に入りきらなくても
びっくりするくらいいっぱいあっても
ぜんぶぜんぶ大事だから
名前も形も色も手触りも
どこから来たかも何して遊んだかも
ぜんぶぜんぶ覚えてるから
じっとしてたら死んじゃいそうだよ
歩いてないと体が溶けて
地面に染みてしまいそうで
広い場所が必要なんだ
長い長いまっすぐな道が必要なんだ
いつまでも歩いていられるように
目をつぶっても歩いていられるように
散らかしたままでも歩いていられるように




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