[野球][北海道日本ハムファイターズ観戦日記 2022]4/13 新庄監督の目指す野球とは

 追撃及ばず、スコアの上では惜敗でしたが、「あ〜惜しかった!」ではなくなんともすっきりしないもやもやする終わり方だったのは、最終回の攻撃の新庄采配に大いに疑問が残るからです。勝つために最善の策をとったとは思えない。だから「相手の力が上だった。仕方ない」という気分になれないのです。

 先発・立野の乱調で序盤で4点を先行されたものの、中継ぎが踏ん張って追加点を与えず、その間に石井の活躍で1点差まで追い上げ、最終回に相手守護神・増田から相手エラーも絡め無死一二塁の大チャンス。ここで打席に立った石井は初球送りバントを決めて一死二三塁。この日当たっていた石井にバントはもったいないという意見もあると思いますが、さすがにここは送りバントがセオリーでしょう。問題は次です。

 まずはこの日初先発マスクだった古川に代えて代打ヌニエス。しかしヌニエスは増田の外の変化球を追いかけて空振り三球三振。そして次打者万波はそのまま打たせ、初球の真ん中高めの甘いストレートを打ち上げて平凡なセンターフライで終了。その間、たったの4球でした。問題はヌニエスや万波が打てなかったことではなく、彼らを打席に送った監督の采配の是非です。

--もう一歩のところまで追い上げた。

「最後、(アルカンタラの)あのバントを源田君が(捕球)ミスしてくれて、あそこで逆転しておかないかんね。相手のミスを利用してこっちが持ってくるっていう。乗らないといけなかった。最低でも同点じゃなくて最低でも逆転くらい」

 記者たちは「あそこでヌニエスを打席に送ったのはなぜか、万波をそのまま打たせたのはなぜか」という、ハムファンなら誰もが感じたはずの疑問をなぜ訊かないんですかね? 新庄の茶坊主みたいなゴマすり記者たちは、BIG BOSS様の機嫌を損ねるような質問はできないんでしょう。

 代打ヌニエスの場面。ベンチには渡邊、宇佐見、細川などが残っていました。増田との対戦経験の多い渡邊、今季打撃好調で外野犠牲フライならなんとかしてくれそうな宇佐見、大きい当たりは期待薄でもなんとかバットに当てて打球を叩きつけて足で稼いでくれそうな細川と、一発逆転の可能性は低くても、それなりの確率で同点には持っていけそうなメンツですが、監督が選んだのはヌニエス。一発長打で逆転まで狙った代打でしょうが、ヌニエスはまだ日本のストライクゾーンに対応しきれておらず、打撃も好調とは言えない。増田とも初対戦。つまり一発逆転の可能性はあったが、その確率はかなり低い。案の定、ストライクゾーンと増田の球筋を確認するだけに終わり、打てそうな気配は全くありませんでした。

 さらに問題なのが次打者の万波をそのまま打たせたことです。ここまで33打数4安打の.121。HRは2本打ってますが三振は14個と、チーム内でヌニエス、淺間に次いで多い。とにかくストライクゾーンに来た球は状況考えずなんでもフルスイングしてHRを狙う。新庄監督がそう指令を出しているから、万波も今川も清宮も、全員同じように振り回す。繰り返しますがランナーは2,3塁にいて、ヒットが出れば同点は間違いないという状況。万波も積極的に行くのはいいが、自分が打てそうな球を打つという冷静さがない。全員が監督の顔色をうかがい、チームが勝つためのプレイではなく監督が喜びそうなプレイをしている。さるデータによれば、今季の万波のボール球見極め率はチーム内でダントツのワースト、そしてストライクの空振り率もダントツのワーストだそうです。ボール球をガンガン振り、ストライクは捉えきれず空振りする。相手投手にとってこんなラクな相手はいませんね。そのパワーや素質以前に技術も選球眼も低すぎてとても1軍レベルではない。ほかに選択肢がないならともかく、渡邊も宇佐見も残っていた。少なくともヒットを打つ確率は万波よりもはるかに大きい。

 ヌニエスを代打に送り、万波をそのまま打たせるということは、一気に長打で逆転まで狙ったんでしょう。しかしこの2人ではその確率はあまりに低い。新庄監督は就任記者会見で、ノーヒットで点をとるような野球を目指すと公言しました。相手のエラーでもらった一死二三塁という絶好のチャンス。いくらでも策はある。出るかどうかわからない一発長打頼みではなく点をとるために少しでも確率の高い策をとるのが「ノーヒットで点をとるような野球」でしょう。あの場面、仮に3点差あるなら一発長打に期待をかけるのはまだわかる。でも一点差ですからね。外野フライでも内野ゴロでも同点になるケース。点の取り方はいくつもある。でも監督が選んだのは、打者任せの大雑把な攻撃野球でした。

 古川の場面で渡邊か宇佐見。ここでまず同点を狙う。そして万波の場面では渡邊か宇佐見、どっちか残っている方。もし古川の代打が失敗していたら、ここでヌニエスという手もあるでしょう。しかしいずれにしろ、万波をそのまま打たせるという選択肢だけはありえない。それは断言できます。

 結局新庄監督がやりたいのは「ノーヒットで点をとるような野球」ではなく、「打者が好き放題にガンガン振り回して、打ちまくって勝つ野球」なんでしょう。つまりは現役時代の新庄のプレイスタイルそのまま。自分が現役時代にやっていた、自分が好きなスタイルの野球をハムにもやらせたい、ということでしょう。万波も今川も、新庄お気に入りのハム選手はみんな新庄のようなフリースインガータイプです。

 もちろん監督はそれぞれの野球観があるし、好みのスタイルもある。どんな野球を目指すかは監督の判断だし、選手はそれに従うしかない。しかしプロの野球チームの大前提は「チームが勝つ」ことであって、それ以外にはない。もちろん目先の勝利ではなく育成、という考え方もあるでしょう。勝利の可能性を狭めても万波の成長を願い打たせたというなら、それはそれでいい。ですがもし新庄監督が本当に「勝利よりも育成」という信念があるなら、古川に代打を出すべきではなかったと思います。

 もちろんこの試合の第一の敗因は、立野です。立野の不調は、開幕以来の変則的な投手起用に求めることもできる。初登板・初先発で勝利し、チームの初勝利をもたらしてのっていたはずの立野は、いきなりチームの都合で登録を抹消され出鼻をくじかれ、不規則な調整を強いられた。それがこの日の乱調に繋がった、という見方もできます。しかしワンサイドゲームのはずが打線(というか石井)が奮起し中継ぎが踏ん張って接戦に持ち込んだおかげで、チームのもうひとつの大きな問題点が露呈してしまった。

 それにしてもハムの打者は打ち損じが多いですね。西武打線が立野のカウントをとりにきた甘い球を確実に捉えていたのに対して、ハムは同じようにストライクを積極的に振っても打ち損じばかりで、結果的に相手先発を助け長いイニングを投げさせてしまった。最終回にしても、増田はあれだけの大ピンチを背負いながら、結局投球数はわずか8球ですからね。ヌニエスも万波も甘い球を打ち損じて相手を助けている。ストライクゾーンはなんでも振って、アップアップの相手投手をじっくり攻めて球数を投げさせさらに追い詰める、なんてことは絶対しない。それが新庄野球なんだと言われればそれまでですが、それをやるなら甘い球は一発で仕留めるような技術を習得するのが先ではないでしょうか。

 苦手な立ち上がりを難なくクリアした松本は7回5安打3失点で今季2勝目をマーク。辻発彦監督(63)も「(松本は)今日の試合にかける気持ちが非常に出ていた。その中で日本ハムさんの積極的なファーストストライクを打ってくるというところにも助けられて、しっかり腕を振って投げた結果が(93球と)球数も少ない好投につながった」と敵軍への感謝を忘れなかった。

 つまり辻監督は「相手が新庄監督だったから助かった」と言っています。いいんですかねえ、ここまで舐められて。

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