[日本ハムファイターズ観戦記] 6/25 ファイターズ新時代の到来

日本ハム 8 - 5 楽天
 いま我々は時代を変えるようなスーパースターの誕生を目の当たりにしているのかもしれません。ファイターズの高卒2年目、野村佑希内野手。練習試合でホームランを連発し注目を集め、開幕1軍に抜擢された19歳(あした26日に20歳になる)。開幕3試合にサードスタメンで出場したものの西武バッテリーの徹底した外角攻め、変化球攻めに苦しみ無安打。楽天戦に入って出場がありませんでしたが、今日の試合でスタメンに復帰、いきなり3安打猛打賞3打点、ヒット2塁打3塁打と打ちまくって、あわやサイクルヒットかという大活躍を見せました。中田も大田も西川も打ちましたし、来日初先発のバーヘイゲンの好投もありましたが、今日に関しては野村の働きこそがチームに勢いをもたらし勝利に導いたといっても過言ではないでしょう。

 まずは3回の第一打席。カウント2-2から外角低めに落ちるフォークに食らいつきセンター前にプロ初ヒット。その後バントで2塁に進み、西川のヒットで生還、プロ初得点も記録します。ボテボテのゴロながら飛んだところが良かったというラッキーなコースヒットですが、これでラクになったのでしょう。第2打席は良い当たりのライトフライに倒れるものの、チームが5−1とリードを広げた6回2死1,2塁でカウント2-1から、内角低めの難しいツーシームを拾い上げて左中間を深々と破る二塁打。これがリードを6点差に広げる2点タイムリーとなってプロ初長打、初打点、初マルチ安打を記録します。解説の福本が感嘆の声を上げるほど見事な打撃でした。これだけでも十分すぎる活躍ですが、本当の見せ場は続く第4打席でした。8回、2死2塁のチャンスに、カウント3-2から6球目の外よりストレートを打ち返し、相手の前進守備をあざ笑うかのようにライトオーバーの、フェンスまで達するタイムリー3塁打を打ちます。チームが3点差に追い上げられ、楽勝ムードが一転し流れが楽天に行きかけていた時だけに、実に効果的な追加点となりました。こういう大事な場面で打てるのがすごい。これでプロ初三塁打、初猛打賞の完成です。3球続けて同じようなところにストレートを投げてこられりゃ、そりゃ打つよなという感じですが、楽天バッテリーととしては過去2打席、決して易しいタマではない低めの変化球をヒットされていることが頭にあったのかもしれません。そこを逃さずきっちりと、しかも長打を決めるとは並みの19歳じゃない。打撃センスも度胸も勝負強さもパワーもすごい。追い込まれてもきっちり仕留めるあたり、野村の前後の清水や石井が実にあっさり淡泊に初球を打って凡打に終わったのとはあまりに対照的でした。あとホームランが出ればサイクルヒットでしたが、残念ながら打席が回ってきませんでした。

 久々に、本当に久々に現れたハムの大型スラッガー候補、大谷以来といっていいでしょう。今日の成績で、栗山監督も、野村を使い続ける決心がついたんじゃないでしょうか。この先当然プロの壁に何度もぶち当たるでしょうが、それでも我慢して使い続ける価値がある、いや、使い続け、育てなきゃいけない選手です。1つ上の先輩、清宮が伸び悩んでいる間に、一気にスーパースターの階段を駆け上る可能性すらある。プレー中は緊張しているのかほとんど笑顔を見せませんが、それもチャラチャラしない硬派のイメージでいい。

 果たしてこの先どんな選手に育っていくか。同じ右の強打者なら楽天の浅村、ヤクルトの山田、広島の鈴木誠也、巨人の岡本……何人かいますが、第4打席の3塁打、無理のないフォームから逆方向に大きな当たりを打つ姿は、西武時代の清原和博や中島宏之(現巨人)を思いだしました。決して根っからのホームランバッターではないが HRも量産できる中距離打者、という未来像でしょうか。いずれにしろ、ハム新時代の到来を告げる超大型新人の登場です。去年は一軍出場がないので、まだ新人王資格が残っている。ぜひ狙ってほしいと思います。

日本ハム野村10代最後の日に 初安打 初打点 初猛打賞(道新スポーツ)

 さてそんな華々しい若手の活躍で見逃されるかもしれませんが、決してハムの試合運びは褒められたものではありませんでした。いろいろありますが、目立ったのは守備の乱れ。3回は二死1,3塁からのダブルスチールに易々とひっかかり失点。6回は二死2,3塁から中田がロメロのゴロをはじき失点。そして7回の2失点も、近藤のエラーがきっかけでした。そして極めつけは4点差に追い上げられた9回裏。先頭茂木の凡フライを石井近藤西川がお見合いして2塁打にしてしまい、その後2つの犠飛で1点を返され3点差まで迫られています。つまり守備の乱れや注意力不足がすべて失点に繋がるという最悪のパターン。試合展開から言ってハムの楽勝であるべき試合が、結局玉井宮西秋吉と勝ちパターン継投を注ぎ込むはめになってしまった。ファインプレーなど必要ないから、アウトにすべきタマをアウトにすればいいものを、何を焦っているのか。9回のお見合いなど、無観客試合なんだから野手同士が普通に声を掛け合えばおきるはずもないプレーなのです。

 もちろん、そういう相手のミスにすかさずつけ込み、点をもぎとっていく、実にいやらしい野球を楽天がやっているということでもある。茂木鈴木大地ブラッシュ浅村ロメロという上位打線は破壊力満点、勝負強さも相手への威圧感も一級品ですが、それだけが楽天打線の怖さではない。楽天三木監督がハムで選手を引退し、その後長い間ハムのコーチをやっていた(梨田〜栗山時代)キャリアを考えると、そうしたソツのない野球はハムから学んだ、とも言える。今のハムからはそんな野球が失われてしまったわけで、実に複雑な気分ですね。いずれにしろ、勝ってもなお、いや勝ったからこそ相手の強さを思い知ることになった一戦でした。

 さてこれでなんとか成績を5割に戻しました。明日は有原則本のエース対決。なんとか今日の勢いを明日に繋げてほしいものです。野村は初めて見るであろう、プロの超一流投手のタマにどう立ち向かっていくか。たとえきりきり舞いしても、得るものは大きいはずです。

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