[北海道日本ハムファイターズ観戦日記 2021]5/16 「ファイターズらしさ」とは何か

 依然低迷が続く我がファイターズ。今カードも、数カード連続で勝ち越しがなかったというホークスにあっさり連敗し負け越し決定です。それも両試合とも、チーム力の差をまざまざと見せつけられての完敗で、コロナの離脱者が戻ってこようが関係なさそう。栗山監督は昨日の談話でこんなことを言っています。

「連敗に関しては全然、気にもしていない」としながらも「うちがまだ、うちらしく野球をやっていない証明。そこは反省して、しっかりやります」と話した。

 本拠地でホークス相手に10連敗しても「全然気にしない」とはすごい言い草ですが、シーズンはまだ序盤、目先の勝ち負けなんて気にしない、オレはもっと長い目で野球をやってるんだ、と言いたいのでしょう。しかし「うちらしさ=ファイターズらしさ」って何でしょう。栗山監督はよくこの言葉を使いますが、明確に「これがファイターズらしい野球だ」という定義を聞いたことがありません。チームの勝敗よりも優先するらしい「ファイターズらしさ」って何だ?

 栗山監督の理屈で言うと、負けていても「ファイターズらしさ」が出ていればそれでよしだし、たとえ勝ちまくっていても「ファイターズらしい野球ができなければダメ」ということになりますね。ここらへんに栗山監督の考えがよく出ている気がします。チームに対しても個々の選手に対しても、栗山監督は「こうあるべきだ」という理想が明確にあるのでしょう。選手に対して「お前らしくやってくれればいい」という言葉は一見優しく理解があるようですが、その「らしさ」が何なのかちゃんとした説明があるのか。そしてその「らしさ」の定義が選手も納得のいくものなのか。もしかしたら、選手の状態や現在の実力、本来持っている能力、選手としてのタイプなどを無視して、栗山監督が脳内で考えた「らしさ」(理想)を押しつけてるだけなんじゃないか。せっかくチームがいい勝ち方をしても、どんなに選手が活躍しても、栗山監督が考える「らしさ」に合致しないと、満足できない。だからしゅっちゅうスタメンを変えるし、打順をいじる。だからたとえ勝ってもチームの勢いが続かない。活躍した次の試合ではスタメンから外され、打順もコロコロ変わる。試合ごとに自分の役割が変えられるわけですから、それは選手も戸惑うでしょう。しかも栗山監督の「らしい野球」「理想の野球」の中のメンバーとして選ばれている選手と、そうでない選手の厳然たる差がある。つまり「栗山監督が大好きな選手」「使いたい選手」「栗山構想に入っている選手」がいて、その選手が活躍しないと栗山監督の考える「ファイターズらしい野球」「理想の野球」ではないんでしょうね。

 「現状に満足せず理想を追い求める」というとえらくカッコイイですが、その理想があまりに現実とかけ離れていては意味がないどころか、チームに悪影響を及ぼすだけです。

 さて、今日こんな記事が公開されました。

「栗山さんのおおらかな放任主義はチームが強いうちはよかったが、大谷翔平や有原航平ら才能ある主力が抜けて弱体化した現状では、すべて裏目に出ている。『もっと練習させるべきだ』と考えている小笠原道大ヘッドコーチや金子誠野手総合コーチとも方針が嚙み合わず、最近は溝ができています」
「緩めの環境に選手もすっかり慣れきってしまって、緊張感がなくなっている」

 理想を実現するためには、ただ漫然と試合をこなすだけではダメで、日々の努力と鍛錬、つまりは厳しい練習を積まなければいけない。選手が「らしさ」を発揮するためには、それなりの努力の積み重ねが必要。当たり前の話です。でも栗山監督は選手の自主性に任せて放任してるだけだから、一向に選手はうまくならないしチームも強くならない。そう金子コーチや小笠原コーチは考えている、ということでしょう。さらにチームOBの田中幸雄は最近こんなことを言ってます。

 プロにもいろんなタイプがいて入団時から「こいつはモノが違う」という選手がいます。ファイターズなら西川遥輝、近藤健介がそのタイプ。彼らは高い能力に加え、自分に必要な課題を理解していて、自主的に質の高い練習ができます。現在はエンゼルスで活躍する大谷翔平もそうでした。
 ただ、そんな手のかからない選手はごく一部。なかには言われなければやらない選手や言われてもやらない選手だっています。
世界中から選手が集まり、ルーキーリーグから3Aまで下部組織だけでも巨大なピラミッドが形成されているメジャーに対して、日本では三軍組織が充実したソフトバンクや巨人でさえ抱えている選手は育成を含めて90人程度。明日、クビになるかもしれない不安と背中合わせでしのぎを削る米球界では自主性に任せても問題ありませんが、日本では「親御さんから預かった選手」を大事に育てるしかないのです。
 センスだけで生きていけるほどプロ野球の世界は甘くありません。古い考えだと笑われるかもしれませんが、令和の世でも最後に勝つのは人より鍛錬を積んだ選手です。
 ファイターズではキャンプ中でもユニホームが泥だらけの選手をほとんど見かけません。打球に飛び込んでみて初めて、どう起き上がって、どう投げればアウトを奪えるか分かるもの。練習でしないことを試合でできるはずがありません。過去3年間で2度もファイターズの併殺数がリーグワーストだったこととも無縁ではないはずです。

 ここでも練習の重要性が語られています。つまりコユキや金子や小笠原は「理想を追い求めるのもいいが、ただ選手の自主性に任せて放任しているようじゃ、いつまでたってもうまくならないし、チームも強くならないよ」と言っているわけです。

 コユキはヒルマン監督以来ファイターズはメジャー流のチームになってしまったと言います。そのヒルマン時代にファイターズ史上唯一チーム連覇を成し遂げるわけですが、それは必ずしもメジャー流が功を奏したというだけではなく、コユキ、金子、小笠原、あるいは田中賢介や森本など、主力選手の多くが東京ファイターズ時代から猛練習を積んで着々と実力を蓄え、チームが熟成した結果だということです。それら主力選手は十分な経験と基礎があるから、放っておいても自分で考えて練習しプレーすることができる。そして若手選手たちも、練習の重要性がよくわかっているコーチや先輩たちの指導を受けて猛練習して、実力を蓄えていた。いつだったか中田も言ってましたが、彼が若い頃は厳しいコーチや先輩たちに鍛えられて、選手としての基礎を作り上げてきた。それはせいぜい梨田監督時代まで。それ以降、つまり栗山監督以降は、そうしたコーチは全て追い出され、厳しさを知るベテランや中堅はトレードやFAなどでいなくなり、残ったのは放任主義の監督と、ロクにコーチ経験もなく、あっても監督の言いなりの茶坊主みたいなコーチしか残っていない。コユキが辞めたのは当時健康上の理由なんて球団の発表がありましたが、実際はさしたる理由の説明もなく球団から一方的に解雇されたことが最近のコユキ自身の証言で明らかになっています。つまり栗山監督=球団フロントの方針に反するようなコーチ選手を追い出した結果が、今のチームの惨状というわけです。

 そうしたチーム方針は、もちろん栗山監督の考えでしょうが、そうした方針を容認し、そんな監督を10年も留任させてきた球団フロントの考えでもあります。たぶん猛練習をさせないのは、押しつけられた練習じゃ身にならない、というあまり根拠のなさそうな理由と共に、選手のケガを未然に防ぎたいから、というのもあるでしょう。栗山監督はDHを固定せず主力の休養場所として使い、また数試合に一回主力をスタメンから降ろして休ませることがよくあります。その是非はここでは問いませんが、それほど気を遣っていても、ファイターズ選手のケガが他球団より特に少ない、なんて話も聞きません。第一試合に出てプレーしている限りケガのリスクはいつでもあるわけで、そもそも練習で壊れるようなヤワなカラダじゃ、プロとして一流になれるはずもない。淺間や清宮が素質と期待の割に伸び悩んだのはケガが多かったからですが、それはまだ体力もない高卒1年目から1軍で使われまくったことも原因です。本当にケガを恐れるならケガのない強いカラダを作り上げることが先決ですが、そういった体力作りをチームとしてしてこなかった結果が、今の淺間や清宮です。そこらへん、単にチームの方針が緩いだけでなく、チームとして一貫性も感じられませんね。

 以上書いたようなことは、この欄で何年も前から何度も何度も何度も指摘してきたことですが、一向に改まる様子がありません。10年もやってきた監督が今さら考えを改めるとも思えない。コロナのクラスターで選手やスタッフが大量に離脱したのは単に運が悪かっただけでなく、チーム・球団としての緩い体制が原因じゃないか、とこの欄でも指摘しましたが、去年のオフでさえ「チームの不振はコロナのせいで監督の責任じゃありません」なんて理由で監督を留任させた球団が、今オフもコロナを理由に栗山監督の留任を狙うのは間違いないでしょう。もし東京オリンピックが開催されれば、それを花道に辞めるであろう稲葉代表監督が勇退する栗山監督のあとを継ぐことになるかもしれませんが、球団のトップがそのまま居座り、栗山監督の権力が球団内に残される形で現在の体制が維持されるようなら、監督が代わろうがおそらく何の変化もなく、ゆるふわな球団体質はそのままでしょう。

 最下位とはいえ首位とは5.5ゲーム差。といっても首位から5位までが2ゲーム差にひしめき、ファイターズは既にそこからひとり取り残され最下位独走になっていますが、シーズンはまだ100試合以上が残されていて、挽回は十分に可能です。チームとしての練習不足とかゆるふわな体質がそう簡単に改まるとも思えませんし、健康上の理由でもない限り監督休養もまずないと思いますから、少なくとも今季は今の栗山体制でいくしかない。せいぜい監督の理想とする「ファイターズらしい野球」で大型連勝でも期待したいと思います。

 

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