[北海道日本ハムファイターズ観戦日記 2021]10/26 稲葉GM! 新庄監督!

 日本ハム・ファイターズの人事問題。前回の記事は新庄新監督の就任というスポニチのスクープを受けてのものでしたが、その後各紙の後追い報道が続き、稲葉GMの就任というさらに驚きのニュースがあり、まだシーズンが終わってもいないのに最下位ハムの人事が球界の話題を独占する勢いです。

水面下では、すでに本人への打診を済ませており、同氏も内諾。組閣を進めているもようだ。球団はシーズン終了を待たず、近日中に「新庄監督」誕生を正式に発表し、11月上旬にも就任会見が行われる見通しとなった。
 プロ野球北海道日本ハムが新たなゼネラルマネジャー(GM)に、球団OBで東京五輪の野球日本代表監督を務め金メダルに導いた稲葉篤紀氏(49)を充てる方向で調整に入ったことが24日、関係者への取材で分かった。吉村浩チーム統轄本部長兼GMはGM職を退き本部長職に専念する見通し。

 大本営の北海道新聞や密接な関係の日刊スポーツ、さらに共同通信まで含むほぼ全紙が報道して、球団からの正式発表はまだですが、稲葉GM=新庄監督の就任は決定と言っていいでしょう。あとはマーリンズのコーチを辞任したというトレイ・ヒルマンがチームに加わるのではないかという噂もチラホラ……

「他球団での機会を追い求める意思を球団に伝えた」

 この驚きの人事の裏側をいくつかのメディアが報じています。

 関係者の話を総合すると、すでに退任が決まっている栗山監督の後継問題としては、当初から今夏の東京五輪で侍ジャパンを率いて金メダルに輝いた稲葉氏が最有力候補で、基本的にはその方向で交渉が進んでいたという。しかし、日本ハム本社サイドからの「強い意向」があり、急浮上したのが新庄氏。本社的には2023年にオープンする新球場を前に、何としても「マイナスイメージ」を払拭したい。そのためにネームバリューがあり〝新生・日本ハム〟を強くアピールできる新庄氏に白羽の矢を立てたという。
 とはいえ現場から離れて久しい新庄氏に「いきなり監督業がつとまるのかという問題はある。それは球団としてもすんなり受け入れがたい部分だったが、球団フロントとしても今季は「中田翔問題」の対応のまずさでファンに批判を浴びた負い目があった。
 今年8月、チームメートへの暴力事件で謹慎処分となった中田は、8月20日に巨人に移籍した後に謝罪会見に臨んだが、日本ハムで謝罪会見をしなかったことには球団内外から疑問の声が上がった。この問題は日本ハム本社にもクレームがくるほどの大きな問題となり、球団は8月31日になって突然、公式サイトに謝罪文を掲載。これには本社サイドの強い意向もあったといわれている。
 そして、最終的にたどりついたプランが、今回の「稲葉氏がGMとして新庄監督を全面サポートする」という形式。この形なら「編成権を球団フロントが持つ」という従来のスタイルを崩さないまま、現場の意向も稲葉氏が可能な限り吸い上げることができ、稲葉氏も思うようなチーム作りができる。現フロントは実質的に〝中田問題〟の責任をとり、稲葉氏率いる新フロントにバトンを託す格好となる。
 新庄氏が次期監督候補に浮上している日本ハムで、日本ハム本社が今シーズン中に現状把握のため、水面下で〝事前調査〟をしていたことが分かった。
 今季の日本ハムは長く最下位に低迷。「中田翔事件」も起きるなど、ファンからも強い不満の声が本社に寄せられていた。調査は主に球団フロントと現場スタッフや首脳陣、選手との関係性について。これにより、チームを立て直すためには監督の首をすげかえるだけでなく、現フロント体制を「見直す必要あり」との本社判断があったとみられる。

 要は、中田問題、そしてここには書かれていませんが、万波への差別発言問題などが大きく報じられ社会問題化し、球団のみならず日本ハム本社にまでクレームが殺到し、企業イメージは大きく毀損された。チームの成績が低迷するぐらいならまだしも、一般消費者相手の客商売である以上、企業イメージアップのためにやっているプロ野球チーム経営が本業の足を引っ張るなど言語道断。それまでも球団フロントにはさまざまな問題があり、ファン離れも深刻、巨額の資金を注ぎ込んだ新球場プロジェクトの先行きも危うくなりそうな状況が訪れた。そこでこの大失態を招いた球団社長〜吉村GM〜栗山監督をピラミッドとする球団フロントに責任をとらせ、体制を刷新する。フロント最大の権力者であり現在のハムの惨状を招いた元凶と目される吉村GMを解任(統轄本部長に専任)しその後釜に稲葉を、吉村GMの傀儡だった栗山監督の後釜に新庄を据えた、という経緯のようです。つまり今回のフロントの大失態は、単に監督のクビをすげ替えるだけでなく、稲葉GM=新庄監督という飛び道具でしか補うことができない、という判断でしょう。

 新庄監督就任に対する世論は予想通り賛否まっぷたつに分かれています。工藤監督退任の後釜に、派手な大物ではなく長年チームを支えてきた古参コーチの藤本を据えたソフトバンクとはいかにも対照的なやり方で、知名度と話題性を優先しチームの底上げや強化ではなく、目先の不祥事誤魔化しと観客動員だけを目的としたような人事が一部から反感を買うのはある意味で当然でしょうし、ハムはただのネタ球団になった、という声もゆえなきことではない。ただ、この人事を強引に押し進めた日本ハム本社の怒りと危機感はそれほどのものだった、とも言えるわけです。

 ただ、なにをしでかすのか、なにを考えているのかわからない宇宙人・新庄だからこそ、未知数の面白さもある。思いもよらず監督適性を発揮し、淀み停滞したチームを立て直すかもしれない。2006年の劇的な日本一を経験したファンにとっては、新庄とはそれほどの夢でありロマンなわけです。なのでここは彼の可能性に賭けてみたい。本社の思惑はともかく、決まった以上は応援します。

 そしてこの、夢はあるが危なっかしい新庄監督を補佐するのが稲葉GM。ハム球団はフロントの力が強く監督の権限は極端に少ない。現場の指揮権しなく、編成権がない。だから監督のなり手がない、という声は以前からある。古田や秋山など巷間噂された大物の監督就任や、稲葉の監督就任が思うようにいかなかったのはそれが原因じゃないか、という声が出るぐらい(新庄監督決定までには、そうした大物たちとの交渉が挫折した経緯があると私は見ています)。だがGMという形なら、編成権を手にしてチームを思うように作り上げることができる。新庄監督が失敗したときは、すかさず稲葉が監督として就任すればいい。別の言い方をすれば、数年後の監督就任を見据えて自分の思い通りのチームを作れる権限を稲葉は手にしたとも言える。もしかしたから球団としてはそこまで考えているのかもしれません。

 GMとしての稲葉もまた、未知数です。チームの将来を見据え編成を考えるだけでなく、隠密で行動し、時には腹芸で表に出せないような裏取引もこなす。しかしほぼユニフォームしか着たことがなく、実務経験など皆無に等しいであろう稲葉が、そんな役回りをすんなりこなせるとも思えない。だからこそ吉村GMはGMを解任されても統轄本部長という形でフロントの要職に残り、稲葉を実務面で補佐する役割を与えられたわけです。吉村さんが残ることで、結局彼の独裁体制は続き、稲葉も新庄もしょせん傀儡であることに変わりはない、という声もあります。しかしこればかりはやってみないとわからない。GMと統轄本部長って、どっちが立場上上なんですかね?

 さて、次はGMと監督の就任会見、そしてコーチ人事でしょうか。特に私の関心事はコーチ組閣です。

従来のフロントと関係の良くなかった一部首脳陣にも残留の目が出てきており、今後は稲葉氏の人脈による組閣作業が進められていくことになるが、これまで球団フロントとの対立から疎遠となっていた球団OBたちが、復帰しやすい環境となったことも事実だ。

 ということで、私は田中幸雄や白井一幸の現場復帰を激しく要望しておきます。

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