いつかの単館上映という魅力
一つでも多くのスクリーンで上映したいなぁと願うのは当たり前のことだと思う。
それはもちろん僕も同じなのだけれど。
「単館上映」という言葉に未だにどこか憧れている自分がいる。
いや。なるべくアクセスしやすく、色々なところで上映している方が良いに決まっているのだけれども。
今、そこでしか観ることができないというスペシャルな感じとかさ。
あとさ、観に行った時のその映画を目指して集まった人たちとの同志感とかさ。上映中も今、ここにいる人たちだけで共有している感じというかさ。
観終わった時に心が動いていると、ええ!ここにいるこの人たちだけで共有しているの?この感覚を!?みたいなあの感じとかさ。
僕が今日まで何度も感じてきた単館上映だけの感覚。
映画は記録されたものなわけだけれど、単館上映ってどこかライブ感があるのはつまり、そこだけという感覚が大きく作用しているのだと思う。
どこかで複製されたものが流れているという感覚がないからかもしれない。
というか、記録されたものであろうがなかろうが、それを鑑賞する行為そのものは常にリアルタイムなわけで、それ自体はライブだから、それをスクリーンを通してその場所だけで共有するという状況がライブの感覚に近いのだと思う。
単館?って聞いて、そうだよって答えが返ってくる。
なんか悔しかったりする。
なんだよ、こいつ、観に行ってるのかよみたいな。
面白いの見つけちゃったのかよ、くそ!みたいな。
なんかそういうスペシャルな感覚がずっとあった。
ああ、それまだ行ってないみたいなのもあるんだけど、単館作品はなんか人より早く観たいとか、人が観てるとどこか悔しい感じがあった。
機会が希少というのはやはり特別だ。
そして実際に単館の作品でものすごく有名になる作品もたくさんあった。
今はさ、意外にそうでもないんだよな。
まぁ、インディーズムービーとか小さな作品はそもそも選択の余地がなくたくさんの映画館で上映なんか難しいわけだけれども。
それよりも少し大きめの映画なんかだと、普通に2~3館で上映していたりもするでしょう?いや、今っていうかそんなのは昔からそうなのだろうけれども、そういうことじゃなくて、あえて単館で勝負するみたいな感覚の映画って意外に見当たらないというか。
常識的に言えばいくつかの場所で上映した方が良いに決まっているんだけれど、単館であるというスペシャルな感じをあえてアピールするような感じはもうなくなっているというか。
前はチラシに「単館上映!」なんて書かれていたんだよ、確かに。
それはつまり世間様的には単館上映という言葉の魔法が溶けてしまったということなんだろうなぁ。
その世間様的なことはともかくとして。
僕はまだまだ「単館上映」という言葉にものすごく魅力を感じるんだけど。
新宿で、渋谷で、池袋で、銀座で。とにかくそこに行かないと観れない。
つまりちゃんと移動も含めた時間を作らなくちゃいけない。
映画館ごと、街ごと、パッケージにしたような映画体験。
空気までぜんぶまるごとなパッケージ。
まぁ、そんなふうに狙ってさ、単館上映なんか出来る立場じゃないよ。
でも結果的に単館上映という形になるわけでしょ。
なんかそのことにワクワクしてしまう自分がいる。
ゆでたまご先生の漫画が読めるのはジャンプだけ!みたいな。
映画「演者」を観れるのはユーロだけ!みたいな。
なんだろうか、このワクワク感は。狙ってないのに。
SNSとかFilmarksとかじゃない場所で、どこかのBARとかで少しずつ口コミで拡がっていくような勝手なイメージ。勝手だけど。
世間的にそんなのはもうなくなってるならなんの意味もないけどね。
僕の中のことであって、誰もそんなことに魅力を感じないなら。
でもどこかで疑っているよ。
ほんとうに?もしかしたら単館上映って言葉も知らないんじゃない?
「単館レイトショー」とか実は今の若い人なんか新鮮な言葉じゃない?
なんて思ったりもしちゃうんだよなぁー。
最近はローバジェットの映画もシネコンなんかで上映して、それが朝の一回だけとかで、一週間とかで打ち切られたりして、それでもなんか凄い!みたいな喜びの声もあがるけれど、実際、嬉しいんだろうけれど、なんか違うぞ、そういうことじゃないんじゃないかって思うよ。
僕はね。
映画「演者」という作品の映画体験は。
誰かにとってよりスペシャルな体験であってほしいと願っているのです。
あの日、あの映画館で観た映画といつか思い出すような。
そんな特別な一本になれたらなぁって願っているのです。
映画『演者』
企画 監督 脚本 小野寺隆一
音楽 吉田トオル
題字 豊田利晃
「嘘ばかりの世界」だ
「ほんとう」はどこにある
【上映館】
・2023年11月18日(土)より
ユーロスペース(東京・渋谷)
http://www.eurospace.co.jp/
劇場窓口にて特別鑑賞券発売中
先着50名様サイン入りポストカード付
出演
藤井菜魚子 河原幸子 広田あきほ
中野圭 織田稚成 金子透
安藤聖 樋口真衣
大多和麦 西本早輝 小野寺隆一
撮影 橋本篤志 照明 鈴木馨悟
録音 高島良太 絵画 宮大也
スチール 砂田耕希
制作応援 素材提供 佐久間孝
製作・宣伝・配給 うずめき
【あらすじ】
昭和20年春、終戦直前のとある村。嶋田家に嫁いだ3人の女たち。
血の繋がらない義理の三姉妹は男たちが戦時不在の家を守り続けている。
家長であるはずの長男の嫁、智恵は気を病んでいた。
三男の嫁、恵美は義姉を気遣う日々を送っている。
次男の嫁、陽子は智恵がおかしくなったふりをしているのではと疑っていた。
やがて魔物が再び女たちの前に現れる。
世界は反転して、演技は見抜かれる。
◆終映(特別限定先行上映)◆
・2023年4月15日(土)16日(日)※限定2日間
シアターセブン(大阪・十三)
・2023年4月15日(土)18日(火)21日(金)※限定3日間
名古屋シネマテーク(愛知・名古屋今池)
・2023年3月25日(土)~31日(金) ※限定1週間
K'sシネマ (東京・新宿)
投げ銭は全て「演者」映画化計画に使用させていただきます。