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水面が揺れると透明が見える

透明なものが僕たちの周りには溢れている。
そもそも、そこにある空気が見えることはない。
水だって透明だ。
そこにあるのに僕たちの視界では認識することができない。

透明度に差があれば初めてそこに透明が現れる。
ガラスやペットボトルは透明だけれど、目に映る。
蜃気楼のように空気が歪んで見えることだってある。
水だって透明度が違って、光の反射が生まれるから目に見える。

では水面とは何なのだろう。
水の底が見える時もあれば、日が陰って鏡のように外を映すこともある。
さざ波で何も見えないこともある。
あれは透明なのだろうか。
濁っている水面ですら、魚影が見えたりする。

子供の頃、海に潜って水面を見上げることが好きだった。
空気が泡になって空に飛んでいく。
海と空の境界線は光で乱反射している。
境界線の向こうの青空と太陽がぼやけている。
波で泡が立って縞模様が出来ている。
僕は透明に包まれて、透明を見上げて、透明を認識する。
普段は気付かない透明が実は世界の殆どだと認識する。

透明は光を通すという意味だ。
空気が透明だからこそ、空は明るい。

認識できないものはきっとたくさん僕の周りに浮かんでる。
実際、僕は僕の気持ちだってわからないことがある。
ましてや僕以外の誰かの気持ちなんかわかりようもない。
時々、透明度が変わって、屈折率が変わって、認識する。
それだけ。
良いものも、悪いものも。

波に揺れる泡は見えても。
水そのものは見えていない。
空との境界線が光の屈折で見えていても。
水そのものは見えていない。
気持ちとか、善意とか、悪意とかもきっと。
何かのひずみで見えるだけ。
それそのものは見えていない。
どんなに目を凝らしても。

作品の空気感とか言うじゃない。
映像に流れている空気なんかカメラで撮影できるの?
だって、透明なんだから。
きっと撮影できるのは小さな歪みで出来た屈折率。

不思議だな。
それで心が動くのだから。
笑ってしまったりさ。
涙を流してしまったりさ。
目に見えるものを頼りに。
目に見えない透明なものを感じて。

僕は水面をみている。
これは透明なのだろうか。
水面は揺れる。風は見えないのに。
僕がみている水面はあなたにはどう見えるのだろうか。


映画『演者』
企画 監督 脚本 小野寺隆一
音楽 吉田トオル
題字 豊田利晃

「嘘ばかりの世界」だ
  「ほんとう」はどこにある

【上映館】
・2023年11月18日(土)より
ユーロスペース(東京・渋谷)
http://www.eurospace.co.jp/
劇場窓口にて特別鑑賞券発売中
先着50名様サイン入りポストカード付

出演
藤井菜魚子 河原幸子 広田あきほ
中野圭 織田稚成 金子透
安藤聖 樋口真衣
大多和麦 西本早輝 小野寺隆一

撮影 橋本篤志 照明 鈴木馨悟
録音 高島良太 絵画 宮大也
スチール 砂田耕希
制作応援 素材提供 佐久間孝
製作・宣伝・配給 うずめき

【あらすじ】
昭和20年春、終戦直前のとある村。嶋田家に嫁いだ3人の女たち。
血の繋がらない義理の三姉妹は男たちが戦時不在の家を守り続けている。

家長であるはずの長男の嫁、智恵は気を病んでいた。
三男の嫁、恵美は義姉を気遣う日々を送っている。
次男の嫁、陽子は智恵がおかしくなったふりをしているのではと疑っていた。

やがて魔物が再び女たちの前に現れる。
世界は反転して、演技は見抜かれる。

◆終映(特別限定先行上映)◆
・2023年4月15日(土)16日(日)※限定2日間
シアターセブン(大阪・十三)
・2023年4月15日(土)18日(火)21日(金)※限定3日間
名古屋シネマテーク(愛知・名古屋今池)
・2023年3月25日(土)~31日(金) ※限定1週間
K'sシネマ (東京・新宿)

投げ銭は全て「演者」映画化計画に使用させていただきます。