見出し画像

ありふれた話

 ある大店(おおだな)の主人は、経費が増すので10人の使用人を雇っていたが、節約のために5人にする。それでも仕事に余裕があるので、その5人から3人解雇し、2人にしたがそれでもどうにか商売が回る。奉公人全員隙を出して、夫婦だけで一生懸命働くと店は回る。主人は自分ひとりでも仕事が間に合う、というので妻を離縁し、最後には自分自身もいらない、と死んでしまった。

https://rakugonobutai.web.fc2.com/358siwaikurabe/siwaikurabe.html


ランチをしていたらとある経営の傾いた会社の続編を聞いた。40代を中心とした中堅社員のリストラが始まったというものだ。

あくまで中立な立場ではないにせよ内部事情などを聞いていたが、決して評判がいいとは言えない会社だった。パワハラ発言も、セクハラまがいもトップダウンでしょっちゅう起きていたようで。古株があらゆる中心におり、残りは転職組や新卒採用となるがそのありさまなので新たに入った人々は最短ひと月もたず、最後は半年もすれば、いいところだったようで。じっさい、古株の仕事ぶりは決して褒められたものでなく結果は、数字にも態度にも出てしまう。そして悪循環のすべてを、若手は中堅のせいに、中堅は社長のせいに、と社長は社員のせいにする構図ができあがっていた。

それから数年後の今に戻る。

社長御大は、どうも転職組の優秀なメンバーをあつめて、古株をばっさりリストラという目論見だったそうだ。悪手ばかりの経営難。社長が悪いか、古株が悪いか。はてさて。しかし「社員のせいにする社長」のスタイルをあっさり見破られては案の定というべきか、ついていく優秀な社員はおらず残るのはイエスマンと新人だけのもよう、と締めくくられる。

いざドロ船ゆかん。

ほんとうに落語のようだ。そして過去似たような立場で、わたしは営業マンをしていたので、そっくり同じように沈んだ会社をみた。会社は本当に不思議な生き物で、そう簡単には死なないわけで、なんだったら、死に体でさらしたまま社長御大がまっさきに新たな会社を設立してしまうことも予測できる。ひとり脱皮して、また安全地帯からこれまでの経歴を語りなおせば表面上はきれいにとりつくろえる。部下や社員とのディスコミュニケーションに陥った、遠い未来でこの失敗談を講演で語ればパフォーマンスとしても見事なものだと皮肉りたくもなる。

これらは、コロナ禍でありふれた話かもしれないのだが、そこそこ年季の入った中小でリストラと、バブル崩壊後の平成初期には自死もおおかったことを思い出すとやはりとんでもない出来事のひとつに違いない。

ちなみに、イエスマンが忠実なる部下かといえばわたしの見てきたところによれば、単に個人のミス多く、顧客からのクレームの数々をバレまいとしてイエスマンに身を投じているだけでもある。
経営側の立場にまわると見えぬものがたくさん出てくるのか。それとも見ぬフリをするだけか。真剣に仕事をしている人ほど馬鹿らしくなるだろう。

どこかで誰もが似たような話にたどり着く。さて、リストラや左遷を申し渡されたほうはどのように出るのだろう。今までも悪路だったが、その場所はじわじわと沈んでいく。不思議な生き物の一部から切り離されて、新たな別の生き物になっていくのだろうか。

そうなるだろうな、と会社の行方を聞いてわたしは納得した。わたしがこの話から得る教訓は一生懸命仕事をして、成果をだして、成長し続けたいということ、そして、そのためのチームワークだ大切であることを心にしなくてはいけないね、ということだ。

ここまでお読みいただきありがとうございました。サポートいただいた分は、映画の制作費や本を買うお金に充てたいと思います。