週1000件の顧客の声を集め、顧客課題解決につなげるオイシックス成長の秘密とは?
おはようございます。小野寺です。
今回のマーケティングトレースでは、食品宅配サービス『オイシックス』をマーケティングトレースしていきたいと思います。
『オイシックス』といえば、「かんたん」「おいしい」「栄養価が高い」「メニューを選ぶ手間がない」ミールキットを販売している企業としても有名な企業です。
そんなオイシックスが成長したポイントは3点に集約されるかと。
①顧客の声を大事にし、プロダクトに反映させていく現場主義文化
②会員に対して、より豊かな食体験を提供することによる単価・LTVの向上
③①と②を支える高い粗利率のビジネス
詳細に説明していきます!
企業概要の整理
成長要因を紐解く上で欠かせない企業の概要をまとめると、
・会社名:オイシックス・ラ・大地株式会社
・代表:髙島 宏平
・設立:2000年6月
・全体売上:710.4億円(2020)
・企業理念:これからの食卓、これからの畑
・事業内容:ウェブサイトやカタログによる一般消費者への有機野菜、特別栽培農産物、無添加加工食品等、安全性に配慮した食品・食材の販売
・従業員数:1,688名
です。
事業では、EC事業と店舗販売、企業向けのソリューション事業を行っています。
(引用:https://industry-co-creation.com/management/44910)
メインのEC事業の売上を構成する主要なKPIは「会員数」「購入頻度」「購入単価」になり、2021年/3月期Q2では、
・会員数:約27.4万人
・月の購入頻度:2.09回
・月の購入単価:約6千円
・ARPU(会員一人当たりの月額売上):約1.3万
となっています。食品宅配で1.3万とARPUが非常に高いのが印象的ですね。
ここからは成長要因を解説していきます。
成長要因①顧客の声を大事にし、プロダクトに反映させていく現場主義文化
オイシックスには、定量的な顧客のデータや定性的な顧客のインタビューから顧客の課題を抽出し、解決していく文化があります。
オイシックスの成長を支えた「ミールキット」の発明の背景にも現場重視文化がありました。
「ミールキット」を開発していく上で、既婚女性100名にアンケートを取り、家事の食事に関する悩みを調査しています。
ここから、
・料理の時短はしたいけど、時短によって手抜きと思われたくない
・食材選びは安全・安心なものを選びたい
・栄養価も考えてメニューを考えたい
・ただし、メニューがマンネリ化することは避けたい
といった主婦層の悩みを引き出し、「ミールキット」開発につなげました。
また、その他の顧客重視の事例としては、
・「お客様満足度向上委員会」により、多いときで週1000件以上の顧客の声を分析し、サービス改善につなげる。
・データから抽出した仮説を素にした顧客インタビューの徹底
・子供にメニューの美味しさ判定をしてもらう「コドモニター」
などなど、様々な施策につながっています。
成長要因②会員に対して、より豊かな食体験を提供することによる単価・LTVの向上
次は、獲得した既存会員の食の体験をより豊かなものにするために、
・モスバーガーや大戸屋などのチェーンとコラボしたミールキットの販売
・料理を楽にしたり、楽しくする料理器具の販売・有名料理人とのコラボ
をしているほか、
・有名店の味を家で再現できる「おうちレストラン」
・ディズニーなどとの共同開発メニュー「Table for Tomorrow」
などなど、大人も子供も食を楽しめるような施策を仕掛けています。
企業理念に掲げている「これからの食卓、これからの畑」に沿ったサービスが目立ちますね。
成長要因③成長を支える高い粗利率のビジネスモデル
ここまでまとめた成長要因①と②を支えている基盤(ここが一番大事)は、オイシックスの約50%という高い粗利率(売上-売上原価)です。
これにより、
・設備の増資やマーケティングに積極的に投資することが可能
・コロナウィルスにより会員数増加に併せて、物流設備の増資へ回せる
などの、より顧客体験の向上のために、お金をかけることが出来ます。(営業総利益は3~5%で通常のネットスーパーは1%ほど)
この粗利率を実現する背景には、顧客に「オイシックスにはこれだけのお金を払ってもいい!」と思わせる顧客体験の設計にあります。
それは、価格の比較だけでは測れない付加価値付けになります。
この点、オイシックスのCMTをされている西井さんは、単純な「おいしい」や「栄養価が高い」という「機能的な価値」だけではく、子供の笑顔が見れるという「情緒的価値」を届ける手段としてオイシックスがあるといった話をされています。
西井:お客様の意識は、「商品を買う」から「体験を買う」にスライドしていると思います。つまり「体験を実現するためのツール」として、商品を手に入れる人が多くなってきている。たとえば、オイシックスの場合、「毎日の食卓を豊かにする」という体験を提供しています。子どもが苦手な野菜を食べられたら、食卓がとてもいいものになりますよね。そういった体験こそ、お客様が商品に求めている価値の一つだと考えています。
(https://musee-marketing.com/topic/oisix/)
プロダクト価値(便益)を明確にすることにより、オイシックスが提供したい価値に共感してくれるユーザーが集まり、通常のスーパーより値段が高くても購入されるという仕組みですね。
■最後に、今後オイシックスをより伸ばす施策を考えてみました。
CMO仮説①MOTTOオイシックス
一つ目は、より食卓の体験を豊かにするために、
・有名料理Youtuberとコラボしたミールキットの開発
・オンラインで家で子供と一緒に料理が作れるオンライン料理教室
・家族の好みを学習し、それぞれに合せたミールキットをコメント付で提供するオイシックスコンシェルジェ
といった食事体験をより広くカバーする施策を想定しました。
CMO仮説②仕送りオイシックス
2つ目は、孤食により食事体験が下がってしまっている、遠方で暮らす大学生や夫婦の親御さんなどなどに対して送れる「仕送りオイシックス」。
これは、
・一人暮らしをする孫や子供、親御さんなどに対してオイシックスのミールキットを送ることができる(「仕送りオイシックス」)。
・手元のスマートフォンで撮った動画や音声メッセージを一緒に送ることができ、ミールキットと一緒に楽しむことができる。
・孤食で悩む人達の食事体験を豊かにし、遠くに住む家族通しをつなぐ手段としてオイシックスミールキットを提供する。
といったものです。
オイシックスの既存会員は、ファミリー層が多く、親御さんとは別で生活している夫婦や子供が独り立ちをして、遠方で暮らし始めた夫婦などもいると思うので、そういった会員さん向けのサービスとして提供を考えてました。
オイシックスのトレースから3つ学んだこと
今回のオイシックスから学んだことは
①定量・定性の顧客課題の抽出↔課題解決
顧客の声から顧客がどんな課題を解決したいか、どんな困りごとを抱えているかを定量・定性の両方でヒアリングし、その課題を自社のサービスで解決する方法を考えてみる
②企業理念⇄企業の施策
企業理念が明確であると、今後の未来にやるべきことがより明確になるので、曖昧ではなく明確な企業理念は事業を伸ばす施策出しに効く
③値下げ→より付加価値を上げ利益を確保し、利益をもって更に付加価値向上
価格を下げる方向に逃げない。顧客にとって必要とされる価値(製品+付加価値)を自社のサービスで作れないかを考え、顧客に寄り添いながら作り、得た利益をもって更に体験を向上させる
です。
僕自身も、今回オイシックスを実際に試してみて、おいしいごはんが簡単に作れて、一緒に作った人とたのしい食事体験をすることが出来ました。
今後オイシックスが食の体験をどのように豊かにしていくのかが楽しみです。