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【ono no note Vol.88】笑顔が1番難しい、な話

「はい、笑ってー!」とは言わない。


ありがたいことに、僕が写真をやっている(表現合ってる?)事を知ってくれた友人から撮影の依頼をもらうことがある。撮らせてもらう写真は結婚式の前撮り、二次会、プロフィール写真と色々。スタジオを借りて照明を焚いて撮ることもあれば、外で撮ることもあるし、オフィスで撮ることもある。同じシチュエーションで撮影することは、ほとんどない。

これが結構大変。経験不足の僕は毎回結構必死笑 失敗できないっていう緊張感とプレッシャーの中で、時に冷や汗をかきながら撮らせてもらっている。

でも、大変だからといって嫌という訳ではない。

これは同時にありがたい事でもある。撮る場所も光の感じも被写体も違う中で、どういう表情を抑えれば良いのか、なるべくバリエーションに富んだ写真にするにはどうしたら良いかを考える。限られた条件の中で考えながら撮影をすることは、自分の成長に繋がっている。だから、ありがたい!!


成長を感じながら撮影していく中で、僕が1つ決めているルールがある。


「はい、笑ってー」と言わない事。


僕は、結婚式用の写真とか、プロフィール写真とか、比較的笑顔の方が良いとされている写真を撮らせてもらうことが多かった。ところが、撮り始めた頃は「シャッターを切る瞬間にどんな声を掛ければ良いのか」が分からなかった。

どうすれば笑顔を見せてくれるのか。「ハイ、チーズ」なんて言うのは持っての他だけど、僕にはその辺の知識も経験も無かった。だから、何とか頑張って撮ってみてはいたものの、自然な笑顔を引き出せずにいた。


思い悩んでいたある日、僕は知り合いのカメラマンであるmonaさんの現場にアシスタントとして同行させてもらった。カメラをもっと勉強したいという僕の想いを知って、誘って頂いたのだ(その前から写真・カメラのことを教えてもらっている方です)。

とてもありがたかった!何から何まで学ばせてもらおうと思って、僕は気合充分に当日を迎えた。


僕は、その現場で多くのことを学んだ。撮影に臨む準備から照明の使い方、当日の撮影の進め方等。いろんなことを学ばせてもらったが、1番勉強になったのは「コミュニケーション」だった。

monaさんはとにかく喋っていた。シャッターを切るとか切らないとかに関係なく、初対面のモデルの方とも、現場を仕切るスタッフの方とも、ずっと喋っていた。他愛もない話からポージングの指示まで、ありとあらゆる場面でコミュニケーションを取っていた。

だからだろうか。気が付けば、撮影現場は実に和やかでアットホームな雰囲気になっていた。モデルの方からは自然な笑顔が溢れていた。


monaさんは「はい、笑ってー!」なんて当然ながら言っていなかった。ごくごく普通の会話をしながら、シャッターを切っていた。僕には、モデルの方との会話を楽しんでいる様に見えた。

そこで僕は気が付いた。「笑って」と言われて自然な笑顔を出せる人なんて、この世にどれだけいるだろうか、と。本当に自然な笑顔をして欲しいなら、自然なシチュエーションを作らなければいけなかったんだ。その為には、ただただ「笑ってー」と声を掛けながらシャッターを切っているだけではダメだったんだ。

そんな当たり前のことに気が付いた僕は、会話を楽しみながらシャッターを切る様になった。


撮影をする上で最も大事なのは、カメラを扱う技術でも、照明を巧みに使いこなす事でもなくて、コミュニケーションだったのかもしれない。

だから僕は決めた。

「はい、笑ってー!」とは言わない。


2020/08/16

Daisuke Ono



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