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かつて水晶は「氷の化石」だと考えられていた【化石の日】

毎年10月15日は化石の日!

アンモライト(宝石化したアンモナイト)を閉じ込めた氷華®

本日、10月15日は「化石の日」です。
この記念日は、2017年に国際古生物学協会が「国際化石の日」を10月の第2週の土日として制定したことを受けて、日本古生物学会によって10月15日に制定されました。

また、この日は日本古生物学会のシンボルマークにもなっている奇妙なアンモナイトの一種「ニッポニテス・ミラビリス(Nipponites mirabilis)」が、明治37年(1904年)に地球科学者であった東北大学名誉教授、矢部長克氏によって新種記載された日でもあります。

「化石の日」は、化石や古生物学の認知度を高め、生命や地球の歴史への人々の興味関心を高めるきっかけになり、すべての人が「化石」を楽しむ日になればという考えから制定されました。

化石というと、我々の生活と縁遠いイメージもあるかもしれませんが、今でも火力発電や製鉄などに盛んに用いられる石炭は、太古の植物化石です。

また、石油がどのようにできるかには諸説あるものの、主流な説(ケロジェン根源説)では、石油も元々は古代の海で生活していたプランクトンなどの海洋生物の遺骸が海底に堆積して、地下深くで長い年月をかけて化学反応したものだとされています。

つまり今を生きる我々の日々の営みは、今や消え去った古代生物の営みによって支えられている訳です。
逆に、もし我々が化石燃料の使い過ぎによる温暖化や、化石燃料を巡る争いで破滅することになれば、まさにミイラ取りがミイラならぬ、化石取りが化石になるという何とも因果な結末といえるかもしれません。

SDGsなどを考える上でも、化石を通じて地球の過去やこれからのことに思い馳せて見るのも意義深いかもしれません。

水晶は「氷の化石」?

実は、古代ローマではアルプス山脈から採掘される水晶は「氷が化石になったもの」と信じられており、ロック・クリスタルと呼ばれていました。

クリスタルはギリシャ語の「krustallos(クルスタロス)」が語源で意味は「氷」、つまりロック・クリスタルとは「岩の氷」という意味になります。

しかし、いつの間にかロック・クリスタルという言葉はクリスタルと縮められ、本来は氷を意味する言葉がいつの間にか水晶を指す言葉に変わってしまいました。
さらにクリスタルの意味は次第に水晶にとどまらず、結晶そのものを指す言葉へと変化していきました。

また、透明度が非常に高いガラスは「クリスタル・ガラス」と呼ばれるようになりました。
しかしガラスは、実は分子のパターンが綺麗に整った「結晶」ではなく、パターンが一応ありつつもランダムに近い状態で分子が固まっている「アモルファス」という状態にあるので、「クリスタル(結晶)・ガラス」では矛盾した意味になってしまいます。
しかし「氷のように透明なガラス」という意味ならば、その通りですね。

水晶が氷の化石であるという考え方は、古代から中世まで続きましたが現実には水の結晶である氷は、地下で何年埋まり続けても、決して二酸化ケイ素の結晶である水晶になることはもちろんありません。

しかし、化石が元々は生き物であったという認識は、昔の人にもあったと考えるのが自然ですが、生き物ではない水が化石化することがあると考えられたのは中々奇妙です。

もしかすると雨や水蒸気や、一つとして同じものがないと言われる雪の結晶を見て、生き物のように姿形を変える水に生命に近いものを感じたのか、あるいは生命の存在に欠かせない水は、それ自体が生命に近い性質をもっていると昔の人は考えたのかもしれませんね。

参考文献
:田口哲也.氷の文化史「人と氷とのふれあいの歴史」.冷凍食品新聞社.1994.



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