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社長芸人による芸人経営学.4
今回は(3)流通についてです。
一般的に流通とは、工場から問屋や倉庫、小売店などに運ぶ「物流」と
商品を消費者の手元に届けるための「マーケティング」のことを言います。
お笑い芸人における流通とはどのようなものでしょうか。
まず物流です。
芸というのは梱包して運べるものではないので、芸を披露するためのプラットフォームが物流経路となります。
最大の流通経路はテレビでしょう。数十万〜数百万の人たちに同時に芸を届けることができます。また、番組制作者などの多くのフィルターがかかっているため、消費者からの信頼が高いプラットフォームです。
この流通経路に乗るための経路は、「オーディション」と呼ばれる選別過程が一般的です。
オーディションとは、主にテレビ番組制作者側から芸能事務所等に対して、一定の条件を満たす芸人を募集する形で 行われます。一般公募というものもあります。
所属する芸能事務所を経由してオーディションにエントリーした芸人は、テレビ制作者の元へ行き、事前に提示された条件を満たす芸を披露します。最近では、新型コロナウイルスへの感染防止のため、動画審査という形を取ることが一般的になってきました。動画審査を通過した場合に制作者の元で改めて芸を披露することになります。
その後、審査に合格した芸人に対して正式に出演オファーが届き、収録に呼ばれる流れとなります。
これらは一般企業における「コンペ」と同じシステムにも見えますが、本質としては役所に対する「入札」である場合が大多数です。
入札と異なる点は、選ばれるための条件が見積もり金額ではなく、芸の品質という点です。 要件を満たし、最低金額をクリアしたうえで最も安価な見積もりを提出した企業が契約を獲得できるのに対して、募集要項を満たした上で最も企画趣旨に沿った芸人が出演を獲得できます。
しかし、この場合の「企画趣旨に沿う」とは芸単体のことではありません。芸人の知名度やビジュアル、その他の個性などを総合して判断されます。
なので、しばしば「なんでアイツが選ばれるんだよ」という不正疑惑が囁かれます。ただ、芸能において、コネや容姿は「芸のうち」という側面もありますので、総合的に番組に貢献できる可能性の高いものからオファーが来ると捉えて差し支えないでしょう。
一定以上の知名度や実績、特殊な技能や経歴を持っていると、それに対して直接的にオファーが来るようになります。この状況に到達することを、一般的に我々は「売れた」と表現します。
名指しで仕事が来る状況というのは、長期的に複数のオファーが発生する可能性が高く、出演する毎に知名度が向上して次の仕事に繋がるという「売れっ子すおパイラル」に突入します。
この状況におけるマーケティングは、基本的に「置きにいく」が主軸となります。一般社会に対して与えたイメージを守り、確実にオファーをこなして行くことが強く求められます。
しかし、一定期間が経過して需要が減ってくると、「新たな商品力」を訴求する必要が出てきます。しかし、既存のイメージからのオファーが多少でもある場合、「イメチェン」によって既存のオファーがなくなってします可能性が出てきます。
なので、イメチェンが必要になって来た時期の芸人は、SNSで「観測気球」を揚げはじめます。
・料理しちゃいました
・こんな趣味はじめました
この辺りはまだ健全ですが、「占い始めました」「資格取りました」は危険信号です。特に、占いについては一部の成功者を除き、安易に手を出して周囲の信頼を失うケースを散見します。
この場合、占い自体が問題になることは少なく、主に付随する「マルチ」が影響してきます。
スピリチュアルも同様です。それ自体に問題はありません。付随する商品販売と勧誘と売り上げによる階級制などが問題の根源となります。
それでは、次回は流通経路の続きとして、動画投稿サイトとSNS、ライブなどについて説明していきます。
皆さまの支えがあってのわたくしでございます。ぜひとも積極果敢なサポートをよろしくお願いします。