見出し画像

Wanderer's Notebook| とうもろこし農園のお話

はじめに

関東圏の騒々しい都会から車で約2時間ほど先に位置する千葉県田館山市のとうもろこし農園である「安西農園」さんにお邪魔させていただいた時のお話&備忘録。

とうもろこしのえんそく

私の大学時代の先輩達がとうもろこしのえんそくという名でシングルオリジンコンポタージュを提供するといった、少し奇抜で魅力的な企画をしている(詳細はリンクから)のですが(下の動画は昨年企画・制作した動画)

そのお手伝いをさせていただいた時にその農園さんと間接的に関わりを持ってはいたものの、実際に足を運ぶのに躊躇(物理的な距離の問題)していました。そのため、前日の夜に誘われてから3時間ほど迷いに迷った挙句行く決断をしたのには、彼等のとうもろこし農園の話をしている時の活気にどこか魅力を感じたからかもしれません。

農園と地域社会の繋がり

農園に対して深い理解がないと思っていた私ですが、実際は2019年の留学先でSustainabilty (持続可能な社会解決)といった分野での課外活動で農園で2週間住込みでのボランティア活動をしていました。(動画はボランティア先の紹介)

私がボランティアしていた農園は、有機野菜の育成に注力した農園であり、地域の病院などと協力して食育などの取り組みを行なっている場所でした。当時東京からアメリカのバージニア州という田舎に移動したばかりだった私からすると、この大自然に囲まれた人のいない生活というのはとても新鮮であり、少し不自由に感じる部分もありましたが、非常に有意義な時間を過ごすことができました。

画像1

今まで「食」という楽しみ方が外食に家族や友人と行くという一辺倒な視野が少しだけ広がった様な気がしたのです。住み込みの間の2週間は基本的に農園で作られた作物だけで生活をしていたため、菜食主義(ベジタリアン )中心の食生活でしたが、想像以上に豊富な食事の種類に驚きを感じたことは今でも覚えています。また、野菜そのものの素材の味を感じる楽しみにもこの時触れた気がします。

その時は今まで遠い存在だと思っていた第一次産業である農業に、少し近づくことができたと思っていたのです。


密接で疎遠な農業と私達

アメリカのボランティア先での農業経験は私自身に改めて農業の重要性について考える機会を与えてくれたのですが、一方で農業という産業自体に親近感を持てず、どこか遠い存在にあると思ってしまう部分もありました。それについて手伝いをしている最中にどこかモヤモヤしていたのですが、農園先と密接に連携を取っている病院見学にいった際にはっきりとしました。

それはあくまで「私達が消費者目線から農業を見ている」から、でした。

画像2

(訪問先の病院:Augusta Health Institute)

病院見学ツアーを終えて私達は昼食を取ることになったのですが、その際にカウンターに並べられている食事のラインナップを見てどこか安心感を覚えたのです。農園ではその日暮らしの様に畑から取れる野菜を収穫して(計画的に量を計算した上で収穫します)料理して...という一連の流れがあり、食事に関してもシビアにならなければいけない部分があったのですが、そのフードコートに溢れんばかりの料理・食材を見た時に安心したのです。

画像3

それは、私達が普段スーパーに向かうと品切れになっている野菜が少ないのが当たり前という前提が日常生活に植え付けられている様に、農園先での収穫体験もあくまで「体験」止まりの理解でしかなかったために、その日暮らしで食糧計画や収穫量にシビアになっている農家の人達をどこか傍観せざるえなかったのです。

画像4

そのため、この当たり前の潜在認識の齟齬を確認できたのが非常に有意義だったのと同時に一種のカルチャーショックとなりました。これらの経験を通じて、より一層農業の重要性を感じたのと同時に、職業として営んでいる方々への尊敬の念が強くなりました。

そしてここで改めて、農家での収穫体験や住込みといったプログラムは農業に携わらない人達に農業と実生活とのギャップをブリッジしてくれる手始めとしてとても有効だと思ったのです


アグリカルチャー|農業

画像5

ここで一旦脱線するのですが、農業の成り立ちについて少し興味がわいたので調べてみようと思います。(基本的にGoogleさんにお任せなので、情報の信頼性は担保できません。ご了承いただけますと幸いです)

農業とは英語でAgricultureを示す言葉ですが、AgricultureにはAgriとCultureの2つの構成要素が存在し、共にラテン語をルーツとしたMiddle English*となっています。 なおそれぞれの語源は

Agri :  ager / agr- = field (フィールド)                  Culture : cultura = growing, cultivation (育成, 栽培)

の二つがagriculturaというラテン語を形成し、「フィールドを耕す」という意味でのAgricultureという言葉が誕生したそうです。ちなみにAgricultureをWebster辞書で検索すると

: the science, art, or practice of cultivating the soil, producing crops, and raising livestock and in varying degrees the preparation and marketing of the resulting products

の様に定義づけられています。個人的には最初の the science, art, or practiceという部分が好きです。農業を科学や芸術などに当てはめた見識は非常に魅力的だと思いました。

次に農業の起源はいつなのでしょうか?とてもシンプルな答えがあると期待したのですが、調べていくうちに情報量が多く困難を極めそうでしたので、シンプルな理論をここでは記そうと思います。

そもそも農業の概念は人間が文明を築かなければ誕生しないものだと説明する理論があり、文明が構築された後に人間の生活が狩猟中心から農作中心へと遷移していったと言われているのです。農業は狩猟に比べて安定した食料供給をすることができる最適な方法であり、10-12000年前に世界の4つの異なる地域で誕生したと言われています。

画像6

そこからというもの農業は我々の生活ととても密接した存在となり、一大産業として生活の中心を担う存在となりました。その農業をビジネスとして大規模管理に展開する様な考えを提唱したのが、Harvard Business Review教授であるJohn DavisとRay Goldbergの二人でした。


アグリビジネス | ビジネスにしちゃった農業

画像12

1957年に"Agribusiness"という概念を生み出した彼らはその後世界に大きな影響を与えることとなりました。この概念が考案された背景には、農業とその関連産業の関わりにおける社会的分業が極度に進行したために、農民や企業がそれぞれの相互連関・依存関係について把握する必要が出てきたからです。

画像7

アグリビジネス が1950年代後半に台頭すると、そこから国際貿易・取引が活発的に行われ、1960年代から取引量は拡大しました。2020年にはアグリビジネス国際市場は約400兆円の価値を持つほど、産業の拡大が著しいことが理解できます。

画像8

一方で農業従事者の人口は年々減少傾向にあります。現在では日本での農業従事者は136.3万人と非常に少なく平均年齢も67歳と、高齢化が進行しています。加えて日本の農作物輸出量は1960年代から停滞傾向にあるなど、日本における農産業ビジネスが深刻化している様にも捉えられるのです。

画像9

中でも日本が他国と比較してアグリビジネスに足を引っ張られている理由の一つにコストがあるそうです。下の図を見る通り、日本は他国と比較した時に肥料や化学肥料などに多くのコストをかけていることがわかります。中国やアメリカと比較しても約5.5倍の差があることは一目瞭然でしょう。これは大豆や麦の生産においても他国の3-4倍のコストをかけて栽培している様に、日本の農作物には多額の資金が投じられているのです。

画像11

違う視点で考えると、国産野菜に我々が安心感を覚えながら他国の野菜の安さに驚く理由はこの様な生産コストの差があるからだということができるでしょう。それだけ農家さんが農作物の一つ一つに丹精込めて作っているという捉え方もできるのです。

画像11


たまけいさんと「とうもろこしのえんそく」

話を元あった安西農園の方に少しずつ軌道修正していこうと思います。

振り返ってみると、この安西農園に行くことになった経緯というのは非常に不思議な繋がりだなぁと思います。遡ること4年前になりますが、私が映像の世界に没頭し始めたと同じ時期あたりに

画像13

とうもろこしに囲まれているたまけいさん | 2021, Chiba

同じ寮の先輩であり、現在はTamakei Coffeeというノマド的コーヒー屋さんを営みつつ、豆の焙煎を行っているけいたさん(以下たまけいさん)がコーヒーの道を少し歩み始めており、よくたまけいさんのコーヒーを入れている様子を撮影・編集しながら動画編集の練習を始めた所から始まりました。

COFFEE BREAK | 2019, Tokyo

最初はお互いに趣味の延長線上という所から始めたと思う映像とコーヒーですが、気がつけば大学生活のほとんどの時間を費やしたと思います。ユニークな寮生活については追々書こうとは思いますが、何はともあれ大学卒業後もコーヒーの道を進んでいるたまけいさんはすごいと思います。美味しいコーヒーを求める方はこちらから一度お試しいただいては?と思うほど魅力的な一杯を作る人です。お店もしているので、是非訪れてみてください。

と少しまた話が逸れたのですが、そのたまけいさんが大学生最後の夏に突然始めたのが「とうもろこしのえんそく」であり、その経緯で今回安西農園に行くことになったのです。


「とうもろこしのえんそく」

画像14

Anzai-Farm | 2021, Chiba

ここまでたまけいさんの話を中心に「とうもろこしのえんそく」について快適したが、その他のメンバーの皆さんもとてもユニークな方々達で運営されています。

なりささんという喫茶「おおねこ」を週1回営われており、食に対する愛情の深く美味しいお弁当を作られる方。

とうくんという、テクノロジーと日常品のハイブリッドで何かを成し遂げるであろう非常にユニークな方。

その他、色んな方々が関係して、この「とうもろこしのえんそく」という活動が作られている様です。毎回皆さんのお話を聞くのが楽しく、とても有意義な時間を過ごせているのですが、その彼らの活動拠点の一つである安西農園に行ってみることは、一つまた「とうもろこしのえんそく」について理解を深めることができる体験だったと思いました。

とうもろこしと安西農園

画像15

またまた脱線してしましました。ここでやっと初めて今回の備忘録の主題でもある安西農園について話していこうと思います。

安西農園は千葉県館山市に位置する農園で、東京からアクアライン経由で車で2時間ほどでアクセスできるそうです。また農園には百笑園という直売所があり、直接購入に赴く方も沢山おり、非常に盛えておりました。

あまり農園で盛えているというイメージがなかったので、訪れた際の賑わいに少しばかりか驚いた印象があります。あまり長い間滞在することが出来なかったのですが、少しばかりか久しぶりに農園という場に触れることが出来て良かったです。

私自身半日という時間しか過ごせていないので、またタイミングが合えば赴いてもう少しお話などが出来たらと、その日の帰り道に思ったのでした。


点と点とのつなぎ合わせ

結局膨大な文章になるので、あまり安西農園について触れることが出来ませんでしたが、なんだかんだで点と点が結びつく瞬間というのがあるんだと思える機会でした。

全くもって関係のないコーヒーと動画が、寮という場で交流したことによって農園に行くことが出来た。一見接点のない様なことでも、気付いたら点と点が融和する瞬間があるんだと今回の旅路で感じました。

画像17

それはどこか断裂的な経験しかしていないなと思う、日々の色のない世界に色をもたらしてくれる瞬間であり、その一瞬を大切にすることが、生きることの幸せやありがたみなのかもしれません。




この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?