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台湾旅行記 Ace8編

寧夏夜市で食事を済ませた私たちは台湾のポーカールームに行くことにした。

ここでポーカーのことをあまり知らない人の為に説明をしておくと、ポーカー(ここではノーリミットテキサスホールデムのこと)には主に2種類のプレイの仕方がある。それは「トーナメント」と「キャッシュ」である。

「トーナメント」は各プレイヤーが最初に決まった同じ量のスタック(持ち点)を持っていて、それらを取り合うことでスタックがゼロになったプレイヤーから脱落していき、プレイヤー同士での順位を決める戦いである。
「キャッシュ」は各プレイヤーが現金をチップに換えて、それらをポーカーによって取り合う戦いである。

トーナメントは途中でプレイを止めて利益を確定させることはできず、最終的に一人の優勝者が決まるまでプレイを続けるのに対し、キャッシュはいつでもやめてその時点でのチップを現金化できる点で大きく異なることさえ理解してもらえればよい。

閑話休題。(この言葉使ってみたかった。)台湾では実は「キャッシュ」形式のポーカーは法律で禁止されている。しかしながら、「トーナメント」形式は説明した通り最後の一人までプレイを続けるから時間がかかる上、多くのプレイヤーの参加が必要だったり、順位に応じた賞金の設定がプレイに影響を与えたりと結構面倒臭い。

そこで、台湾では「トーナメント」の体裁をとった「キャッシュ」形式の卓が良く開かれている。自分も最初この話を聞いたときは「一体どういうことだよ、、、」となったが、別に難しい話ではない。8人から9人のプレイヤーを集めて「トーナメント」を行い、あらかじめ決めておいた時間(Ace8では2時間半か3時間だった)でスタックと同比率の賞金割合でディールすればよいのだ。ディールとはその時点で持っているスタック(持ち点)の量に応じて賞金を分配する方法であり、全員の了承があればトーナメント中ならいつでも行うことができる。こうして台湾では実質的な「キャッシュ」形式のポーカーを行っており、Ace8もこの方式をとっている。

というような、説明をHさんから受けたのだが、内心「本当に法律的に大丈夫なのか」という気持ちはぬぐえなかった。ちなみにAce8は変哲の無い台北市街のビルの3階にある。外に分かりやすい看板は無く、ぼろっちいエレベーターをの先に急にポーカールームが現れるといった感じであった。怪しい。怪しさ満点である。

外から何にも分からない。怪しすぎる。
(google mapのストリートビューより引用)

そんな不安を抱えつ入店すると、ものすごい数の台湾人がポーカーをプレイしていた。完全にイメージはカイジ沼編の一条が経営する闇カジノである。
受付に行ってポーカーをプレイしたい旨を伝えると、専用のアプリをダウンロードして、そこにパスポートの写真をアップロードしろと言われた。恐る恐る指示に従う。レートは3400台湾ドル(1万7000円)から22000台湾ドル(11万円)からピンキリであったが、一番低い3400台湾ドルを選択した。しばらくすると、自分の番号が呼ばれて、30000点分のチップを渡されて自分の座るべき席を教えられた。最終的にこの30000点を10分の1倍にした値の台湾ドルがもらえる賞金である(4000点分はポーカールーム側の取り分、所謂レーキである)。こうして、自分の初めてのオンレートのライブポーカーは始まった。

時刻は11時ほど回っている 夜はまだまだこれから

最初の方は緊張も有りプレイも奮わなかったのだが、運良くチップの量は少しずつではあるが増えていった。そんなときに来たハンドはJJであった。強いハンドなので戦いに参加し、ボードにはJが落ちた。トリップス(スリーカード)の完成である。ほぼすべての相手のハンドに勝っている状況に変わり、勝つか負けるかではなく、相手からどれだけのチップを奪えるかを探る方向に考えは移行した。どんどん自分からベットをしていって主導権を握りリバー(ボードに開かれる最後のカード)が開く。するとボードには3枚目のダイヤ、相手にフラッシュが完成した可能性のあるカードである。するとそこで、相手から大きなベットが飛んできた。自分は長考した挙句フォールドしたのだが、のちにこのハンドを隣の台湾人に話すと、「めちゃめちゃブラフするであいつ」と話して笑っていた。対面に座る台湾人は「マルチウェイだし降りてもいいかも」と真剣に話していた。「どっちだよ」ともやもやしていると何かエレベータ付近が騒がしくなっていた。

ドドドドドドドドド

「プレイを止めて」

警察だ。それも10人ほどの大所帯で受付の方に詰め掛けていた。

日本の警察と感じは同じ 怖くて実際の写真は撮れなかった
https://japan.focustaiwan.tw/society/202310020003より引用

公務員に内定が出ている私はここで違法賭博で捕まったら、内定取り消しで将来がめちゃくちゃになってしまう。いろいろなことが頭をめぐる。必死に勉強した浪人時代、辛かった就職活動、そして台湾に誘ったHさんへの恨み言。

震えつつ隣の台湾人にここに警察が来ることはよくあるのかと英語で聞くと「sometimes(ときどき)」と言っていた。警察はプレイヤーたちのパスポートや身分証を確認すると何もなかったかのように帰っていった。どうやらやっぱりこの場所の違法性はないらしい。ほっとしたのも束の間、ディーラーはカードを撒き始めゲームは再開した。

その後のポーカーのプレイはもうよく覚えていない。なんか良いプレイをした気もするし、悪いプレイもした気がする。そんなことはもどうでもよく無事にプレイを終えることができて良かったという感情だった。結局、2時間ほどプレイして最終的なチップ量は68000点、つまり3800台湾ドル(1万9000円)勝ちであった。

ポーカールームを出たのは深夜1時であった。バスもタクシーもないので、20分ほど歩いてホテルに帰った。そうして、飛行機と夜市とポーカーの疲れを洗い流すようにシャワーを浴びて、泥のように眠り、朝の9時からホテルを出発しASPT(Asia series of poker touranament)の会場に向かうのだった。

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