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一つ外側の「問い」を持つ

岡村 衡一郎

「商品部は、現実が分かっていない」と鈴木部長。「営業は、お客さまの言いなりだ」と山田部長。夜の会合でもある居酒屋では定番の討論ネタだ。

日中の会議では調整し合って両部長が面と向かって戦うことはない。

後輩の田中さんにとって影の衝突はやっかいな出来事だ。実務を調整するのは現場だし、ムダな仕事も増える。部長には、かっこよく仕事をまとめてほしいものである。

現場社員から見れば二人の部長は若手社員のあこがれの対象だった。30代のころ二人とは日本一を目指して何をするのかをよく話し合っていた。今の二人はベクトルが下向きにあることに気づいていない。

二人の中心にある問いとは何か。

営業部が数値を上げるためには、商品部がブランドを守るためには、といった視座は正しいように見えるが実は部門最適になっている。

後輩の田中さんから見れば二人は実力のある二人。部門長としての言い分は正しいから厄介だ。価格とスピードを要求する営業部。価値を伝え丁寧にブランドを育てようとする商品部の主張は一理ある。

互いの立ち位置に固着すれば仕事は平行線をたどる。

日本一を目指していたころの論点はどこかにいってしまったままに、価格 VS 価値という構図で調整は続く。

調整をする。
ストレスがたまる。
裏で発散する。

聞かされる部下が「言ってもしょうがない」とあきらめ感を持つ。この連鎖は創業から数十年たった組織に多く見られる。

共に高みを目指していた青年期を過ぎ、仕事と役割分担が固まる中で真の目的から離れはじめる。解決するためにあるはずの問題は先延ばしにされ、折衷案的な業務に仕事が転化していく。

外で部門長がほかの部門への不満を口にする場面が増えていればイノベーション不全への初期症状。

部門をまたいだところにある真の目的より手前にある役割目標に縛られた「小さな問い」のもとに仕事が増えてきた証しである。部門長は部門を守るのが仕事ではない。

ユニットリーダーの仕事の中心には、自部門の一つ外側にある成果に焦点を合わせた問いが必要だ。

営業部として数値を上げるには。
商品部としてブランドを守るためには。

これらとは別の問い、ブランド育成 VS 業績達成から離れ、お客さまにどんな存在に今なっているのか。これからどんな存在になるのかの問い立てと答えの見直しである。

問題は絶えず部門の間で起こる。
成果はお互いの仕事の合作である。
成果に早く近づくために役割を分化専門化している。

これらの認識は、分業のもとに忘れやすいものになっている。

会社とはお客さまとの関係である。

互いの部門の衝突は、顧客との関係が以前よりもうまく行っていない故に起こる。業績が下降線をたどっているとしたら、思った動きと違う行動を他部門がとっていると感じたら、見直すのは、部門を超えた顧客接点を主語にした問い立てと答えにある。

部門長に必要なのは「一つ外側にある問い」。

わが社を主語に対立を調和へと昇華させていこうとするスタンスである。お客さま接点をよりよきものにするための創意工夫が連携してできる仕事に成果とやりがいは宿る。

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