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最利用価値をつきつめる

 ホテル・旅館にとって最も重要な利用価値は何だろうか。価値を「自分の欲求を満たしてくれる相手の働き」と定義しておく。  

 私は、おかげさまで、今でも、いろんなところに出張させてい ただけている。年間 80 泊から 100 泊の宿泊でホテルや旅館に お世話になる。なるべく同じところには泊まらないように、ホテル・ 旅館を探してはいる。しかし、複数回泊まらせていただくところと、 1 回で終えてしまうところに分かれてしまう。行くエリアは、同じと ころが多いから、価値と価格のバランスが、今の私にとってベス トなところを繰り返し利用させていただく結果になる。

 相手にとっての中心を押さえた商品が支持される。それもお客さ まの予算内で最適なものを選ぶ。お客さまから選ばれる。これらは、 業種や業界に関係なく適応可能な原則だ。うみの・岩本社長(今まで数回に渡って連載)の自転車哲学「目的地に安心してたど り着けること」であった。「目的地に安心してたどり着けること」に 予算的な制約がなければ、優秀な運転手のハイヤーでいいだろう。 当たり前だが、多くの人にとって毎日の利用は難しい。  
 毎日の移動を確実なものに、予算内でかなえるための道具が 自転車である。見た目とか、表面的なかっこよさだけでなく、お 客さまにとってもっと重要な所を押さえている商品だからこそ、支持されていくものになる。

  私が出張で泊まる場合の利用価値は「よく日の仕事に備えて よく眠れること」が最も重要なものになる。ベッドの質、壁、空 調などの質さが、これだけの回数を泊まっていると分かってくる。 そして残った仕事を片づけられるスペースがあれば、なおいい。プラスアルファで朝食がおいしく健康的で、広さが、立地が、非日常感が、と続いていくが、当然、予算内での制約がある。  

 繰り返し利用しているホテルも多いし満足もしている。だが残 念ながら、それらの利用価値が深化している、と感じられるとこ ろは少ない。大規模リニューアルをしなければ、深められないと 思っているからだろうか。新聞が選べることも、布団が気持ちよく なっていることも、使いやすい電気スタンドがあることも、私にはありがたい。もう一回泊まろうと思える理由にもなるのだが、一部の ホテルを除いては、この客層にさらに支持されていくには、という掘り下げが少ないように感じてしまう。  

 少し理想を押し付けているのかもしれないが、フロントで次の 予約を「来月はこのようなことやっています。もし、来られる予 定があれば予約されませんか」と言ってくれるホテルはないだろ うかといつも考えている。なぜなら、相手にとっての利用価値を 深めていくアクションが中心になってくれば、フロントの方が勧めた くなる理由があるはずだと思うからである。そして私は、またその エリアに行く理由ができるというループになる。  

 自分たちのホテル・旅館が、目の前にお客さまにとって、最も 利用していただきたいお客さまにとって最も重要な利用価値を、 今、どのように定めているだろうか。そして、近隣の宿泊施設と 比べた場合の価値と価格の関係 はベストなバランスで提供できた、 と言い切れるだけの根拠を少しず つ見直し続けているだろうか。

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