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京町家一棟貸し初体験! ミナペルホネン皆川明ディレクションの京町家に泊まった話。

《こんな時だから、庭園のある京町家に泊まりたい話。》の続きと言えば続き。引続き『いい感じの京町家』を探しています。
これまで紹介した2箇所『ゲストハウス鯉屋』『胡乱座』は、別に「今だから安く泊まれる」とかではなく、純粋に「今、その町の人が泊まりに行かなければ」と思って行った場所。

一方で「今だからめちゃめちゃ高い旅館が安くなったりしないかな〜〜」みたいな場所も探してました。正直な話。

ミナ ペルホネンが好きだったらいつか泊まりたい『京の温所』

中年男性だけどmina perhonenが好きです(23、4の頃から好きなので許してほしい)。
昨年↑この記事をCasa BRUTUSで見て、「うわーめっちゃいい」と思った。この「京の温所」はワコールの展開する新事業で、京町家をリノベーションして一棟貸し宿にするというもの。

…でもこの『西陣別邸』は1泊15万円ぐらいします。
西陣別邸が第二弾で、第一弾は『釜座二条』という場所なのだけど、こちらも1泊5〜7万円ぐらい。うーーん、趣味が合う友人が5〜10人ぐらい居ないとムリだな…というのが以前の印象でした。

そして2020年、緊急事態宣言、《こんな時だから、住んでる町のホテル・旅館・ゲストハウスに泊まりたい》ーーの中で、この京の温所含めていくつか“憧れている”京町家一棟貸しがあり。「ちょっと安いプランが登場しないかな」と思ってちょくちょくチェックしていた。
そしたらまさにピッタリなプランが…!

ミナ好きの京都府民なら今がチャンス…!『京町家 ご連泊おこもりプラン』

京都府民の“家族”(世帯)限定で、普段一泊5〜7万円する一棟貸しが「1名:22,500円〜」。そしてこういう場所って「2名以上」という条件もよくあるのだけど、1名でもOK。おおお…!
ただし条件は「二泊以上」。なので実質的には45,000円〜。人の稼働を考えればそういう最低限の値段設定は必要だと思うので、“1泊OKならなぁ”とは思いません。

こんなお得なプラン見つけてしまった以上は、「知りながらも諦める」よりは「体験したい」気持ちが勝る。
そしてせっかく2泊するなら本気で“40時間こもろう”(←貧乏性)と思い、週末ではなく平日のテレワーク日をそこにぶつけることに。

(なお西陣別邸も半額ぐらいにはなっているのですがさすがに8万円×2は自分には無理…(ヾノ・ω・`)ムリムリ)

人生初めての「京町家一棟貸し」を体験してみた(…一人で)

平日の仕事を早上がりして自転車で京都駅の『ワコールスタディホール京都』へ行き、チェックイン。自宅から宿までは自転車で20分ぐらいで京都駅は30分ぐらい。遠回りにはなるけどしょうがないです。
そしてこのビル、存在は知ってたけど初めて入った。へーコワーキングスペースとかもあるのかー。

そしてチェックインを済ませて宿へ。自分は自転車だけど、公共交通機関を使う方なら地下鉄烏丸線で烏丸御池駅まで行けば歩いてそんな時間はかかりません。

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そして無人の京町家にチェックイン……なんか「無人の知らない一戸建てに足を踏み入れる」という行為自体が初めてなのですげー新鮮というか違和感(笑)ゲストハウスで京都の一戸建て上がるのも初めてだ〜。

設計は建築家・中村好文とレミングハウス。内装にはmina perhonenのファブリック。トオリニワだった場所から部屋に上がろうとする時、いきなりミナの“ちょうちょ”柄の生地が出迎えてくれます。

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そして中はリノベーションされた、現代的な住心地の良い家。それ以外のアメニティも選び抜かれたもの…だと思うけどこの辺は知識がないので省略。

そしてお庭には、この家の目玉の一つ、ライブラリー!ブックディレクター・幅允孝選書による本が並びます。これは2泊でも読みきれない…!

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今回自分は前述どおり「こもった」。良い宿に泊まっておきながら足を運んだのは御池通にあるスーパーとドラッグストアのみ、それも普段から足を運ぶフレスコとウェルシア…(笑)って感じだったけど、『暮らすように旅する』ならばスーパー近いと助かるよね。将来的には“この京町家のオーナー”に返還される建物なので、キッチンも充実してます。

旅行として使うならば、『二条城』のような巨大観光地はもちろん、宿から少し上がって二条通や夷川通を横に動けばカフェに飲食店、服屋さんなどなど色々“隠れ家”的なお店があります。
そのあたりは、自分は別日に普通に行くことにしよう。笑。一つ行くか迷ってたカフェがあったんだけど結局家から出なかった…。

どの価値にお金を使っていくか

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そんな感じで“自分の家じゃない家で2日間暮らす”かつ“ミナペルホネンのファブリックの中で過ごす”という貴重で不思議な体験をしました。うまく言えないんだけど言葉にするならば『宿泊』に対してこの価格を使ったというよりは、その体験に使ったという感覚。

今回泊まった釜座二条の周囲は、ほんとに近い範囲に4つ、5つとホテルが建つ。
今後、国内旅行の足は戻ったとしても半年前に想定していたような「世界中からの旅行客が365日集まる」状態からは程遠い。差別化できる要素がなければ価格競争にしかならない。昨年時点で自分は“アパートメントホテル”に1泊2,000円で泊まっていた。ビジネスホテルもそれぐらいまで下がる所が増えるんだろう(それでも予約が入らないところもあるんだろう)。…考えるだけでしんどい。

「モダンにリノベーションされた京町家の一棟貸し」も、本当に沢山ある
そしておそらくそのリノベーションの際に既存の庭は潰して建物を広げているところが多いと思うので、庭園目線の自分としては、坪庭の写真を見てても「ここなら!」と思える場所が、正直少ない。

今回はやっぱ“自分の好きなクリエイターが携わっている場所だったから”に尽きる。ここにしかない魅力があった。『胡乱座』も『鯉屋』もそう。(特定のクリエイターだったり、文化財だったり、庭園だったり)
アート、デザイン、ファブリック、オーディオ、食、酒、庭…なんでもいいから、クリエイターとともに「そこにしかない」価値のある宿でないと、選ぶ側も選べないんじゃないかな。なんてそんなことを思う。

すごい変なアイデアだけど、『くるり/10-FEETの世界に染まれる京町家一棟貸し(ゲストハウス)』とか。
今は難しいけど、平常時にはライブのために遠征するファンってむちゃくちゃ多い。それを考えれば、もっと“音楽側のアイデアに寄った”宿ってあっても面白いのにな。

もう一つ変な話。
昨年、京都市指定有形文化財の京町家『川崎家住宅』を購入した東京の業者が、解体を申し出た⇒京都市が警告したというニュースがあった。

問題は解決せずに現在は進行がストップしている様子(今も建物の前を通ると残っています)。

もうこの現状、普通にホテル建てても勝ち目ないと思うんですよね。ぜひ、『ここにしかない体験ができる。歴史的京町家を活かした、高級一棟貸し』等に方向性を変えてくれないだろうか。
…そんな風に、「そこにしかない価値」の重要性が再確認され、歴史的建造物が残されることにつながれば、怪我の功名なんじゃないか。怪我を追ってないリーマンだから言える一言だけど。

京の温所、他にもgrafが手掛けた京町家なども増えてます。…そうそう短期間で泊まれるようなシリーズではないけど、また機会あれば泊まりたいなー!

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