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小説紹介

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#ストーリー

短文小説紹介 #2

概要 僕は自分のTwitterアカウント(@OnishiHitsuji)で小説の紹介をしている。ここにまとめられた7つの紹介の文章はそちらで共有しているものと同様だ。  今回は011から017までとなっている。 011-川端康成「伊豆の踊子」 その山道を抜けると、僕は予想していたその好機に胸が高鳴るのを感じる。立ち寄った茶屋にはあの踊り子の集団が座していたからだ。  学生のうら若き青年と、自然美に包まれた踊り子との純粋なラブストーリーを展開する本作。伊豆の雄大さに囲まれてあ

短文小説紹介 #1

概要 このごろ、僕は自分のTwitterアカウント(@OnishiHitsuji)で小説の紹介をしている。とくに誰に向けたものというわけでもないのだが、書いていると楽しくなれる。もちろん読んでくれる人がいれば嬉しいし、それら小説で楽しんでくれるといいな、とも思う。 「大西書評堂」でも似たようなことをしていた。だが、あちらは書き込みが激しいあまり、体力と時間を消耗してしまう。実際、それがいやになって筆が止まってしまった。ああして作品の文体を意識しながらやってみることは経験として

大西書評堂#6 『左ききの女』

ペーター・ハントケ『左ききの女』(池田香代子訳) ・あらすじ  女がいた。女は子供といた。スカンディナヴィアに赴任している夫が「居住ユニット」と呼ぶその部屋でトウヒの眺めを見つめていた。子供はだだこねて、遊び続けている。女は文句を言うが、それでも子供は遊んでいる。  女は空港にひとりでいき、夫を迎える。帰りしなに、彼はスカンディナヴィアで孤独だったと話す。誰にも言葉が通じなかった、と。  帰って荷物をおろしてから、夫は変な感じだと話す。孤独でないことになれない感じだと。女は夫

大西書評堂#5 「何を見ても何かを思いだす」と「静けさ」

アーネスト・ヘミングウェイ「何を見ても何かを思いだす」(高見浩訳)・あらすじ  受賞したその小説を読んで、父は驚いていた。「どんなにいい出来かわかってるかい?」と息子に尋ねる。息子のほうでは「パパには見せたくなかったな」と言う。「お母さんが勝手に送ったのは心外だったな」とも言う。息子ははっきりしない態度で、しかし嬉しそうにしている。父のほうではじつに驚いていた。息子の小説を素晴らしい作品だと評していた。父は創作について尋ねる。どれくらいかかったんだ?――そんなにかからなかった