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ECで卒塔婆を販売

こんばんは卒塔婆通販サイト「卒塔婆屋さん」代表の谷治です。
なぜ卒塔婆をECで販売したのか、ECサイト開設から現在に至るまでの試行錯誤の歴史を綴りたいと思います。

卒塔婆をECで販売すると決めた背景

私はもともとは、都内企業に務めていて2011年結婚を機に退職し、妻の実家が経営する卒塔婆製造業、有限会社谷治新太郎商店へ転職しました。
2013年に代表取締役に就任し、会社の経営状況を分析するところからスタートしたところ、客数、客単価の変動は直近10年でほとんどなかったのですが、数年前から1件あたりの年間購入数量が少しづつ減っていて、売上も微減傾向でした。

顧客である寺院へヒアリングをすると、法事の縮小や檀家の寺離れなどにより卒塔婆の使用本数が減ってきているとのことでした。
原因はわかりましたが、お寺や弊社の努力ではどうにもならない世の中の流れなので、1件あたりの使用本数は増えるどころか、今後ますます減っていくだろうと予測が付き、新規顧客を獲得していくしか生き残る道は無いと判断しました。
新規顧客獲得へ向け、お寺への飛び込み営業を試みるも、業界的に弊社を含めてお寺との取引が100年以上続いており、取引先を変えるという選択肢はほぼない状態で、まったく相手にされず、2ヶ月ほど回りましたが、1件も新規獲得できませんでした。

次に考えたのがECで卒塔婆を販売するということでした。
当時は、仏具店などが品揃えの一つとしてECで販売しているところがある位で、本格的に専門店でやっているところはありませんでした。
私自身も売れたらラッキー、本音は卒塔婆がECで売れるわけ無いと思っていました。社員や同業の仲間に相談しても、一様に「売れないでしょ」という反応でした。
ただ、これしか新規顧客を増やして売上を増やしていく方法が見当がつかなかったので、参入することにしました。

いよいよECへ参入

ECで販売すると決めたものの、全くの素人で何から手をつけて良いかも分からず、とりあえず、ネットショップ開業マニュアルという本を買ってきて、そこで、カラーミーショップというカートシステムが金額も安く、初心者にも分かりやすいということだったので、カラーミーショップに申し込み、商品登録をして、2013年9月に開業しました。
ショップ名はシンプルで分かりやすくということで「卒塔婆屋さん」としました。
デザインも無料テンプレートをそのまま使い、オプションも無く、最低限の簡素なショップでした。
開業初月は売上はゼロ、10月に入り初めて売れました。このときは、ほんとにECで卒塔婆が売れるんだと感動しました。
その後は、1週間に1,2件ペースの注文で、2013年は9月からですが結果は売上件数18件、年商30万円でした。

2014年の施策と結果

2014年も特にサイトは商品点数を少し増やした程度で、何も施策は行いませんでした。ECサイトへの情熱も無く、ただECでも販売しているだけ、売れればラッキーという感じでした。注文も月に1~14件というレベルで、とても売上減少分を補填できる感じではありませんでした。
2014年の結果は、売上件数93件、年商233万円でした。

2015年の施策と結果

2015年は大きなターニングポイントでした。この年、同業他社がECサイトを開店させました。サイトデザイン、サービス、広告どれをとっても弊社は足元にも及ばず、これは本気でECに取り組まないとまずいと、いよいよ本腰を入れようと決意しました。

サイトデザインリニューアル
先ずは、無料テンプレートで作成していたサイトを有料テンプレートの見栄えのするものに変更しました。商品の写真も適当に撮っていたものを、主命機材など購入し、商品撮影を本や動画で勉強して、全て撮り直しました。

リスティング広告開始
それまでは、広告も打たず、検索順位も低く、逆に言うと良く売れたなと言う状態でしたので、初めてグーグルとヤフーで広告を打ちました。

初めて、ECに力を入れた結果、売上は伸び2015年は、売上件数185件、年商520万円でした。
ライバルの存在は大きいなと改めて感じた出来事でした。

2016年の施策と結果

2016年は2015年にやれば出来ると確信したので、私自身EC専属になり、寝ても覚めてもECのことばかり考えるようになりました。各種セミナーにも通い、どうすれば売れるかを徹底的に研究しました。

サイトデザインリニューアル
2015年に引き続き、サイトデザインを色々と弄りました。オリジナルデザインにすべく、HTML、CSS、Javascriptも独学で勉強を開始し、試行錯誤を繰り返しました。

SNSの運用開始
卒塔婆屋さん公式のFBページを開設し、商品紹介など毎日投稿するようにしました。

様々な広告
リスティング広告も、文言や画像を色々と試して、一番効果が上がった広告に集中的に資本を投下、また、プレスリリースや地方の新聞への広告、FB広告など先ずはやってみるをモットーに広告を打ちまくりました。

2016年は広告費に年間300万円ほど使いました。色々試した結果、効果があるもの無いものがはっきりと分かり、今後の広告の打ち方、方針が見えてきました。2016の結果は、売上件数336件、売上金額1161万円でした。

2017年の施策と結果

このあたりから、EC業界でも商材の珍しさもあり、少し注目されるようになり、メディアからの取材依頼がポツポツ入るようになりました。

サイトデザインリニューアル
毎日のように、サイト上のテキスト見直しや、ボタンの色、大きさなど細かいところを変更してみては検証するという、完全にECオタクとなっていました。

コンテンツの拡充
この年から、商品以外のコンテンツの拡充にも力を入れました。ただ、魅力ある文章を書くことは自身がなかったので、プロのライターさんにランサーズを通して依頼しました。結果、コンテンツからのサイト流入が激増し、PVも月間1万を超えるようになりました。

広告の絞り込み
広告は前年に色々と試した結果より、効果のない広告は止めて、費用対効果の高い、リスティング広告にのみに集中させました。

決済方法の拡充
ECセミナーで、AmazonPayが始まるという話を聞き、Amzonアカウントが使え、いちいちお客様情報を入力する手間も省け、お客様にとっても安心・安全に決済が完了できるので、これは導入しない手はないと考え、即申し込みしました。現在ではクレジットカードに継ぐ人気の決済手段となています。

2017年の結果は、売上件数535件、年商1,459万円でした。

2018年の施策と結果

サイトデザインリニューアル
前年に引き続き、リニューアルという程ではありませんが、細かい修正は日々行いました。できるだけシンプルで直感的に操作できることを目標としました。弊社の商材はお客様が欲しいサイズなどは予め決まっていて、目的を持ってサイトを訪れる方がほとんどです。ページビューを稼ぐよりも最短で欲しい商品を見つけられ、そのまま、簡単に購入できることが求められます。長さ幅、等級など商品属性で絞り込める機能をつけました。

レビューシステム導入
ECやWEBサービスの展示会で見つけたレビューシステムを導入しました。レビューはデフォルトの機能としてもありましたが、商品詳細ページでしか表示されず、商品一覧に星を表示できないなど、制限が多く、なんとかならないか模索しているときに出会ったので、展示会場で説明を聞きその場で契約しました。

CRM導入
これまでメルマガもほとんど配信はしていませんでした。デフォルトのメルマガ機能ではただ配信するだけで、開封率やCVも計測できなかったので、外部のCRMツールを導入し、2週間に1回、顧客のセグメントに合わせた配信をするようにしました。

2018年の結果は、売上件数963件、年商3,181万円と大幅に飛躍しました。

2019年の施策と結果

2019年はカラーミーショップ大賞で東京都を代表するECサイトとして、カラーミーショップ大賞にて地域賞を授賞しました。
カラーミーショップ大賞とはカラーミーショップを使用している全国45,000店舗の中から、デザインや情報発信、売上伸び率において優秀と認められたショップ40店舗位が選ばれるコンテストで、私も存在は知っていましたが、雲の上の存在で、まさか選ばれるとは夢にも思いませんでした。

サイトデザインリニューアル
サイトデザインに関しては引き続きABテストを繰り返し、バナー変更などを行い続けました。

仕入れ販売も強化
今までは自社製造商品のみの取り扱いでしたが、墨汁や筆ぺんなど関連商品をメーカーから仕入れて販売するようにしました。製造コストがかからず、ついで買いをしやすいということで導入を始めました。

2019年の結果は、売上件数1,394件、年商4,768万円となりました。

2020年の施策と結果

このあたりから、ECサイトとしての認知もだいぶ上がり、収益もかなり安定化してきました。しかし、新型コロナウィルスの影響もあり、法事が縮小され、寺院1件あたりの使用頻度・数量ともに大幅ダウンとなりました。弊社もEC以前からの既存顧客に関しては、その傾向は特に顕著で、同業他社も平均売上4割ダウンという噂でした。弊社はECサイトのお陰で、既存の落ち込みをカバーできました。また、カラーミーショップ大賞にて今回は上位10店舗に入り優秀賞を授賞しました。

サイトデザインリニューアル
コンテンツを今までは、フリーページ上に書いていましたが、階層分けやカテゴリー分けが出来ず、使いづらいというのとSEO対策として、コンテンツをワードプレスに移行して、連携することにしました。
この改善により、コンテンツの管理やSEO対策が分かりやすくなりました。

リスティング広告変更
リスティング広告はいままで、テキストを自社で考えていましたが、動的検索広告という、検索ワードに合わせて内容をAIが自動で変更、最適化するものへ変更しました。コンバージョンなどは格段に上がり、より費用対効果が高まりました。

2020年の結果は、売上件数1,562件、年商5,593万円でした。新型コロナウィルスの影響で伸び率は鈍化しましたが、改めて、時代はECを求めていることを再認識しました。

2021年の施策と結果

昨年はTV、ラジオ、雑誌、オウンドメディアで取り上げられる回数が増え、認知度は相当上がりました。

サイトデザイン大幅リニューアル
これまでもマイナーチェンジは繰り返してきましたが、昨年はロゴを含めてトータルのブランディングを見直し、サイトも余分な情報を極力カットし、シンプルで機能性重視なデザインへ変更しました。

リスティング広告変更
主要キーワードで検索順位はほぼ1位を獲れて来たので、検索広告を廃止し、ショッピング広告のみに絞りました。結果、コンバージョン率は16%を超え、コンバージョン単価も400~800円と、広告の費用対効果は劇的に高まりました。

オンラインサロン
今までは卒塔婆の購入を検討している方へ向けて広告や施策を主に売ってきましたが、「寺ハウス」という宗派を超えた寺院関係者やお寺好きが集まるオンラインサロンを開設し、潜在顧客の獲得へもにも乗り出しました。
こちらのサロンでは、お寺の抱える問題解決や、イベント情報共有などができればと思います。まだまだ会員数も少ないですが、少しづづ会員も増えてきており、将来的にはこのサロンに来れば有益な情報が得られると思われる様にしていきたいですね。

メディア露出
ECサイト系オウンドメディアでの連載を開始しました。全くの素人がECサイトに関して、実践を通して得た知見をお話していくという内容です。カラーミーショップ大賞2年連続授賞とあいまって、ECサイトについての相談が来るようになりました。コンサルという程ではありませんが、サイトを見させていただき、ここはこうしたほうが良いなどとアドバイスをさせていただいております。実際にアドバイスしたお店では、年商200万円から1,000万円を超えたところもあります。

2021年の結果は、売上件数1,913件、年商6,863万円でした。

2022年の施策と結果

今年は、まだ3月までですが、昨年比167%と好調で、売上件数3,000件、年商1億を目指しています。

コンテンツの領域拡大
コンテンツも商品以外にもお寺の課題などお客様層へ向けた情報をより拡充し、潜在顧客へアプローチしていきます。
コンテンツ作成に向けて、新たにキーワード分析ツールも導入しました。

まとめ

さて、以上が弊社がECサイト構築から現在までの軌跡となります。
商材によっては爆発的に売れるものもあるでしょう。しかし、一番大切なのは日々の改善と、どれだけECサイトに情熱を傾けられるかだと思います。商材や店のコンセプトによって、デザインや広告の仕方も変わってきます。答えが無いというの答えで、色々と試してみて、よりベターな施策を見つけるしかありません。今回は、上手く行った施策のみを紹介していますが、この裏では数々の失敗もありました。とにかく多く打席にたち、失敗しながら成功確率を上げていく、諦めず、しつこくやるしかありません。

卒塔婆屋さん


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