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「そして、バトンは渡された」

noteで本紹介をしようと決めて、最初に悩んだのはどの本から紹介しようか、ということでした。考えた末、小学生の時に初めて作品を読んでからずっと好きな作家の一人である、瀬尾まいこさんの作品を紹介することにしました。

この本の主人公である森宮優子は、他の人にはなかなかない、特殊な事情を抱えています。それは、これまでに苗字が4回も変わっていること。生みの親を含め、3人の父親と、2人の母親のもとを転々としながら育ちました。この事情だけで考えると、不幸な少女の身の上話だと思う人が多いかと思います。
しかし、優子は不幸ではありません。本人がのっけから「困った。全然不幸ではないのだ。」と述べるほど。自分の境遇を心配して気遣いを見せる先生に、逆に悩みとして話せる材料がないと申し訳なく思うほど。優子は、それぞれの親から形は違えど愛情と優しさを受けながら育っていきます。
そんな彼女は高校2年生となり、現在父親である森宮さんと二人暮らし。ちょっと親バカで心配性、時には愛情が空回ることもある不器用な性格の森宮さん。その不器用さにクスッと笑えるところもありながら、心がとても温まる作品です。
さらに、森宮さんが優子のために作る料理も、この本の魅力の一つです。優子が学校で嫌な目に遭った時は、スタミナをつけるためニンニクたっぷりギョーザとチヂミ。新学期にはふわふわの卵が乗ったカツ丼。などさまざまな手料理がこの作品には登場します。描写がとても美味しそう。私はこの本を読んだ時、無性にオムレツが食べたくなってしまいました(笑)。
この本は、日常生活に疲れ暗くなってしまった心にほうっと明かりを灯してくれるような、そんな一冊だと思います。皆さん、ぜひ読んでみてください。

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