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あすを生き延びるための「嬉しい」貯金

楽しかったなあ。

これまでディズニーランドに行ったときには、過去の自分はこう言っていたと思う。

2年ぶりにそこへ行った私は、帰りのホームでこう思った。

嬉しかったなあ。

楽しいよりも嬉しかったのだ。


おととしの3月、私たちは「今日が最後だね」とも言えずに、大学を卒業した。感染症が広がり、学校に行けない世の中になってしまったからだ。ある日、授業を受けに行ったら、気づけば最後の登校日になっていた。
袴を着る理由がなくなり、ただ家で4月1日までをカウントダウンしていく。
そうして私たちは、社会人になった。

2年ぶりに、私たちは会うことにした。きっかけは、北海道で働いている友人の冬休み。わたしも有給をいただき、わざと一緒に、前日からホテルに泊まり、舞浜駅までスーツケースを引いて行く。全然家から、電車で移動できる距離だけど。

久しぶり、だから嬉しかったのだ。じゃあねも言えないまま生き別れた友達に会えたことが、嬉しかったのだ。

まだある。

入園する人数が制限されていたから、アトラクションの待ち時間が、ほとんど5分だった。山手線に乗るような感覚で、乗り物にのれるのだ。

中でも、スペースマウンテンにある、上りベルトコンベアーにもすぐに登れて、すぐに暖かい建物のなかに入れたのは、特に嬉しかった。

いつもは、ちょっと進んで立ち止まって、またちょっとだけ進んで立ち止まって、そうやって乗り物に乗っていたから。
外は歩くだけでも、すごく寒かったから。


こういう嬉しさって、たぶん明日を生き延びる力になるように思う。日曜の18時30分、お魚くわえたドラ猫を追いかけて憂鬱になる度に読み返せるように、ここに書き留めておく。

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