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日常に不穏な空気が漂ってきて
これは夜更けの風と一緒に流れていく類のものでなく
毎朝立ち込める霧のようなものだと予感し始めたのが昨日。

今日「あの人に手紙を書こう」とふと思い、途端、気付く。




彼女は私にとって特別過ぎたのだ。

小さく細い身体に
会うたびに目を惹く鎖骨。
雨が近づけばものが喉を通らなくなり篭りがちになる彼女は
繊細さとか弱さを体現しているように思えた。

それでも
その艶かしい胸元からは
彼女が生きていることを沸々と感じさせられた。

"生"の雰囲気を纏わぬ輪郭の中に
"生"の質感を淡く漂わせている彼女は
私を日常でない時間に連れて行ってくれた。

 
 
 
しかし
長く続く特別は、日常への毒になるものだ。

堕ちていく勇気のない人間は
どこかでその余韻を引きずりながら
日常に戻っていかなければならない。

彼女に想いを馳せることをし続けられなかったのは
その"特別さ"に含まれる毒々しさに耐えかねたからなのだろう。




それでも、彼女を想うとき、
今でも少し、私は現実感のないぼんやりとした空間を漂うことができる。

私はあの時、恋をしていたのだろう。

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