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【SS】お友達作りの旅 (ひといろ展)

 晴れた初夏の気持ちいい風に乗ってふわふわと漂っている小さな女の子がいました。「ひといろ」と言われる妖精さんの一人です。色んな所にいるひといろ妖精さんは全部で42人。それぞれの妖精さんはお互いにあったことがありません。妖精さんは、たった一人を除いて、いろんなところに行くことができないことになっていたからです。どこにでも行けるただ一人の妖精さんは風さんとお友達のエアリーでした。おやおや、風さんとひといろ妖精のエアリーがお話ししているようですね。

「ねぇ、風さん。今日はどこまで連れて行ってくれるの〜」

「うーん、今日はもっと暖かい南の国まで行ってみようか」

「わーい、行ってみよう、行ってみよう」

 こうしてエアリーは、風に乗って遠い南の国まで行きました。いつも風さんにいろんなところに連れて行ってもらえるので、珍しい景色や綺麗な景色を見ることができました。でも、本当はエアリーはそれよりも一緒に遊べる友達が欲しいと思っていたのです。

 エアリーを南の国まで連れて来た風さんには、目的がありました。友達がいないエアリーのために空を飛べるスカイという女の子に会わせようと思ったのです。スカイもひといろ妖精の一人です。風さんはエアリーとスカイがきっと仲良しになってくれると思ったのです。

 スカイは空を飛べるけれども、どこにでも行けるわけではありません。南の国の上に広がる空だけを自由に飛べるのです。スカイも優しい心の持ち主でした。時々地上に降りて子供たちと鬼ごっこをして遊んだりしています。風に乗ったエアリーがふわふわとスカイに近づいて来ました。挨拶するようです。

「こんにちは。私はひといろ妖精のエアリー、風さんと仲良しでいろんなところに連れて行ってもらってるの」

「あら、初めまして、エアリー。私はスカイ。あなたと同じひといろ妖精よ。晴れた日にはいつもここの空にいるのよ。空からだと子供たちが遊んでいるのが全部見えるからなの。あっ、あそこに転んで泣いている子がいるわ。一緒に行ってくれる、エアリー」

 エアリーとスカイは泣いている子供のところに降りて行きました。どうやら転んで膝小僧を擦りむいてしまったようです。エアリーが傷口をふぅふぅしてあげると、傷口は瞬く間に乾いて痛みがなくなり、子供の顔が笑顔に戻りました。スカイは子供の頭を撫でながら「もう大丈夫だね。みんなのところに行って遊びましょう」と言うと、子供は頷いて走って行きました。そしてその子は振り向きざまに、エアリーとスカイにお礼を言いました。

「おねえちゃん、ありがとう。痛くなくなったよ。バイバーイ」

 エアリーとスカイはお互いに見つめながらニコッと笑いました。それを見ていた風さんは、エアリーに話しかけます。

「エアリー、お友達ができてよかったね。でもスカイはここから動くことはできないから、もうお別れしないといけないんだよ」

「ええ、もう帰らないといけないの。せっかくスカイとお友達になれたのに」

 ちょっと悲しそうな顔になったエアリーに風さんは言いました。

「他のところにも、ひといろ妖精の子はたくさんいるんだよ。エアリーが僕に乗ってその子たちに会いに行って、みんなのことを教えてあげようよ。そしたら、またスカイのところに戻って来て、たくさんのお友達のことをお話しできるよ。スカイみたいにお空を飛べない子もいるだろうし、いたずらっ子もいるかもしれないぞ」

「わぁ、楽しそう。私は風さんがいればどこへでもいけるね。じゃあ、他のひといろ妖精さんに会いに行ってお友達になれるね。いろんなところに行くことができないひといろ妖精さんたちとお友達になって、いろんなことをお話ししてあげられるわ。そして、また戻ってきて他の人色妖精さんの話をスカイにも教えてあげるね」

「うん、またエアリーに会えるのを楽しみにして待ってるわ。いってらっしゃーい」

 こうしてひといろ妖精のエアリーは、他のひといろ妖精とのお友達づくりの旅に出ることになりました。さぁ、どんな旅になるのでしょう。そしてどんな妖精さんと出会えるのでしょう。楽しみですね。

ただよう気ままな色のエアリー
飛べそう!な色のスカイ

おしまい


選択した色は、ホリゾンブルー。色が空気と溶け合うような感じで風に身を任せているような絵と色に感じたのでこの色でお話を作ってみました。そして、最初に会うお友達で選択したのは、ピーコックブルー。青空に合いそうな色ということで選択しました。


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