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【SS】購入願望という悪魔の囁き

 現代社会は情報とモノに溢れかえっています。便利なグッズも生活をエンジョイさせるためのモノも心を豊かにするための情報も数えきれないほどインターネットという仮想空間の中でまるで宇宙空間のように日々膨張しています。それは止まることを知りません。そんな中で生活を余儀なくされている「人」は毎日の生活の中で何らかの方法で大なり小なりの情報をインプットして解釈し、喜怒哀楽を感じているのではないでしょうか。その中の一つに、溢れかえっているモノの中から自分が興味あるものを抽出して買おうかやめようかと悩むことも多いでしょう。そう、購買に対する誘惑との戦いです。

 世の中には、新製品と謳われるモノが頻繁に登場しています。そして、それがあなたにとっての興味を掻き立てるモノだったらどうでしょう。きっと欲しくなるのではないでしょうか。これが欲しいなとか買いたいなという思いが続いた時、あなたはどういう感情を抱きますか?

 もしかしたら、感情を感じる前に衝動買いをしてしまう方ですか?
私も過去は衝動買いをよくしていた方でした。年々、年を重ねるごとに衝動買いは減っているような気がします。

 私は、興味をそそるモノを見た時は、欲しい、欲しい、買いたい、買いたいという気持ちが少しずつ強くなります。でも、しばらくしているとその熱も冷めていくのです。そしてまた、しばらくして何かをきっかけにそのモノを見てしまったりするとまた買いたいという熱が復活していきます。そう、そんな熱が復活するような購入願望は次第に強くなってしまい、気持ちが購入願望に負けてしまった時にポチッてしまうのことになります。あなたはどうですか?

 少し我慢しますか?
 迷わずポチりますか?
 永遠の封印を決断しますか?
 誰かに判断を委ねますか?
 類似商品を検討しますか?
 財布の中を確認しますか?

 新しい製品の発表に弱い私は、過去何度もこの欲望に負けてきました。車も何台買い替えたことでしょう。パソコンも何台買い替えたことでしょう。携帯も何台買い替えたことでしょう。プリンターも何台買い替えたことでしょう。あげるとキリがありません。そういえば、世の中にWalkmanというSonyのテープレコーダーが発表された時は、すぐに飛びついた記憶があります。

 私が育った小さい頃の家庭環境はとても貧しかったので、欲しいものが買えず我慢していたのでその反動が成人して働き始めたときに目覚めたのかもしれません。もっとも、私が小さかった頃と成人した後では、世の中に溢れるモノの数が桁違いに増えていました。そのことも誘惑を大きく育てていった「現代」という悪魔の環境の影響だったのかもしれません。そして今、リタイアしてまた我慢するようになりつつあるのかもしれません。悪魔の「現代」から一歩引いたところで日々の生活をするようになったからかもしれません。

 今私が毎日のnoteや執筆活動に使っているPCは、AppleのMacBook Proです。そのMacBook Proもだいぶ購入から年数が経っています。新しいMacが発表されるたびに買い替え願望が大きくなるのですが、その度にもう少し使ってからと思いながら自分を抑えているような気がします。特に今使っているMacBook は、CPUがインテル製なので、新しいM2と呼ばれるアップルのチップのパフォーマンズが気になるところなのです。

 しかし、そんなMacのPowerを必要とする利用をしているのかといえば否です。動画編集などのように資源を多く使うことをしているわけではありません。もっぱらnoteへの投稿記事と小説の執筆活動なので今のMacBook  Proで実は十分なのです。ただただ、新しいものを使ってみたいという子供のような願望が根底にあるのかもしれません。また、今利用しているMacBookは、Apple認定中古PCで手に入れたものなので実質的な経過年数は5年近くになっているということと新品に対する憧れみたいな気持ちからかもしれません。しかしながら、今使っているApple認定中古PCは新品同様で届けられ、別途購入したハードカバーも付けて利用しているのでまだまだ新品のように綺麗なのです。だから見た目はとっても満足してつかっています。ただ、強いていえばいろんなソフトの起動がちょっと遅いかなと感じる時が増えてきたように気がしているのです。もちろん、Windows PCに比べれば比べ物にならないくらい早いのだと思います。

 世の中の動向としてソフトは徐々に機能も多くなり肥大化しハードウェア資源をより多く使うようになるのは自然の流れです。それに合わせたハードウェアを使わないと快適な環境が維持できないということになるのです。そして、快適ではない環境は思考ややる気に跳ね返ってくるので創作活動に支障が出るかもしれないと思うことを悪魔の部分を崇拝するもう一人の私が囁くのです。その囁きは私の購入願望を思いっきり後押ししてしまいますね。純粋に文字を綴るという執筆活動に対する支障は全くないにも関わらずです。うーむ、心の中の悪魔の囁きに惑わされてはいけません。

 定期的に欲しいと思う願望は強くなったり弱くなったりするのですが、最近は新製品が発表されたこともあり、ちょっと購入願望が強くなってきています。今、買い替えを我慢しているのは明らかな円安で、Mac製品が日本価格では値上がりしているということにあります。やはり買うからにはお得に買いたいと思う自分もいるのです。それは自分の買い物を褒めてあげたい自分がいるからに他なりません。値上がり分で従来ならメモリーのグレードアップができるほどの差があるので今は我慢すべきときだと判断しているわけです。もう一度円高になったら買い替えたいなと思う反面、円高になったら投資している方の資産が影響を受けて利幅が減るのではないかという心配もあります。どっちに転んでも心配のタネは尽きません。心配のシーソーごっこの迷路に入ってしまいそうですね。マンションのような大きな買い物の時は、いろんな意味で購入できる時が買い時だと自分に言い聞かせて決断してきましたが、新製品を使ってみたいからという若い頃のような理由では流石に買わなくなってきました。逆に、そんなことを考えている時間を楽しんでいるようにも思います。いろんな理由や買うべき理由、買わなくてもいい理由などを頭の中で戦わせて楽しんでいます。

 こうして、残り少なくなった私の人生という貴重な時間をあーでもないこーでもないと一人で考えながら、決断を先延ばしにして楽しんでいるのです。
時には、メーカーのページを訪問し、スペックの比較をしながら同じ価格ならこっちの方がお得だとか、出たばっかりの製品は安定供給されるようになってからのものを買った方がいいとか考えることは山ほどあります。そのほとんどがどうでもいいようなことかもしれません。でも、そんなことを考えていると深く深く吟味した気になってしまうので恐ろしいモノです。自分の中で自分の考えを正当化しているような気もします。これも悪魔の囁きのせいかもしれません。

 しかし、それ自体が楽しいのです。きっと今日もメーカーのページを訪問して、こっちがいいかなと楽しむことでしょう。

 購入願望という悪魔の囁きと闘いながら。


おわり

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#購入願望 #ショートショート #新しいPC #日常


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