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空に解き放った心 - 第四話 受け入れ

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受け入れ

 翔は里香に対して早めのフォローを実施すべく、会議室で里香に会うことにした。何事も早めのフォローが功を奏するのだ。

「里香、この前は遅くに電話して悪かった。今日は里香の将来について話をしよう」
「リーダー、私は北海道出身なのはご存知だと思うのですが、ゆくゆくは帰れればなと考えているんです」
「あぁ、そうだったね。北海道だったね。確か、、、旭川だったかな」
「はい、そうです」
「流石に旭川には事務所を作る計画はないけど、札幌だったら可能性あるよ。でも、君の分析力は惜しいなぁ。僕のそばで活躍してほしいと思っているから」
「でも、札幌でもリーダーの役に立てるような環境だったらいいですよね」
「ん、なんか含みを持った言い方だね。何か考えがあるのかな」
「大体察しはついてますよ。私を甘くみないでくださいね。最近というよりだいぶ前からですけど、コンサルだけじゃなくて開発まで業務を拡張しようと考えているでしょう」
「えっ、いや、そんなことはないよ」
「いいんですよ。他言はしませんから。だって、最近はコンサルが終了した時、次の開発を請け負う会社の情報とか、PMの情報とか拠点情報とか、IT業界動向の調査なんかをしてるじゃないですか。これは、私的に言えば、国内の開発拠点を探して既存の開発会社より良い条件でお客様に提案できる環境を作りたいと思っているんでしょう。もしかしたら海外まで考えてますか」
「うわー、まいったな。さすが里香だな。ますます、離したくなくなったな。まぁ、ほぼその通りだよ。これで里香に経営者としての采配力とPM力があれば求婚するんだけどなぁ」
「やっぱりそうですよね。私はリーダーのことがとっても好きですけど、絶対私じゃないってわかっているので、自分の方針を曲げたりはしませんよ」
「おー、やっぱり、里香はすごいな」
「で、もう少し話をしておきたいことがあるんです。この際だから」
「なんだ、僕や会社が損しないような話なら相談に乗るよ」
「まだ、見つかってないんですけど、私がこの人と一緒になりたいっていう人が見つかったら応援してほしいんですよね。サイドサポートというか。お手伝いというか」
「たとえば、どんなこと」
「良い人が見つかったとしたら、何とか北海道で仕事をするように仕向けてくれるとか、もし違う会社の人だったら、私をその会社に送り込んでくれるとか」
「なんかすごいこと考えているな。それって、計略だぞ。そんな人がいるのか」
「いえ、いません。そんな人ができたらっていうことです。もし違う会社に行ったとしても、この会社の利益に絶対貢献しますから。力を貸してください」
「よし、わかった。そうなった場合は、無条件に応援するよ。それまではこの会社の利益に貢献してくれよ。親父にも今の話は共有しておくから、万が一、僕がいないときは直接社長に話ができるようにしておくから必要な時は秘書にコンタクトしてくれ」
「やったー、やっぱりリーダーは頼りになります。もう、一生貢献しまーす。本当はお嫁さんでも良かったんですけどね」
「あぁ、まぁお嫁さんの件は無理だな。それ以外はよろしく頼むよ。で、次のプロジェクトはこれまで通り、しおりと共に担当して開発を担当する会社に対してしおりにも引き継ぎの担当を一部担当してもらうつもりなんだ。これまで以上にしおりをサポートしてプロジェクトを絶対に成功させてくれ」
「もう、しおりさんしか眼中にないんですね。仕方ないですけど、ちょっと焼けます」
「まぁ、そう言わないで、里香の北海道の件と未来の旦那様の件も社長に伝えておくからよろしく頼むよ」
「分かりました。約束ですからね」

 こうして、しおりを翔の会社に引き込む事とプロジェクト成功による社内の信頼獲得も成功した。最も、プロジェクトを通した社内とクライアントの信頼は、しおりの実力だったということは嬉しい誤算だった。期待以上のスピードで成果を出してくれたと感じていた。ここまでは、翔の頭の中で描いていた計画どおりに順調に進んでいった。

 しおりが水島コンサルティング・サービスに入社した後は、翔が事前に探して準備しておいたお台場のマンションに翔の方が足繁く通う関係となっていた。翔は、父親である社長と同居して生活していたのでしおりが翔の部屋に行くことはなかったのである。もちろん、そのことも翔は考えて六本木からちょっと離れたお台場を選んだのだった。それに社長との話で、システム開発部門の設立に漕ぎ着けるまでは、しおりを社長に紹介することが叶わないので当分はこの生活が続くと思っていた。ゆくゆくは別の場所のマンションを借りて住むことも翔の頭の中では描いていた。


つづく


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