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【SS】鬼神様  #爪毛の挑戦状

「私は遂に死んでしまったのか? 私の骸の周りで泣いているのは誰だ。おぉ、妻と息子と母親だな。先に逝ってしまって申し訳ないな。でも仕方なかったのだよ」

 中国の内陸部の山間部で働き盛りの頑固な男が死んでしまった。いや、正確にいえば殺されたのだ。だが男は恨みを残さずに死んだ。それよりも自分を殺したものを憐れんだくらいだった。

 男は死んでしまってから考えていた。
「あまりにも人助けばかりしていたら反感を買ってしまうのだな。しかし、助けを求めている人々は常に助けてあげたい。妬む人たちを抑制できればいいのにな」

 そんなことを考えていた男は、自らが鬼神となり横道を許さない存在になると決めた。夜な夜な見える姿になり、村の中を歩いて回った。そうすると村からは次第に我が物顔で振る舞う輩が減って行き遂には「鬼神様」の祠ができた。男は嬉しかったが、通りゆく村人たちは噂した。

「近頃は鬼が徘徊しているようだ。鬼神様が退治してくれんかのぅ」

410文字


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#爪毛の挑戦状 #ショートショート #小説 #掌編 #鬼神様


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