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【SS】嫌がらせ?

「ちょっと髪が伸びてきたなぁ。そろそろ切りにいくか」
最近は、ヘアーサロンもネットで予約できる便利な時代だ。
メンズのヘアーサロンも我が家の近くにある。便利便利。

早速、髪を切るためにヘアーサロンをネット予約した。
明日の10:00からだ。ちょうど良い時間だな。
ウィルス対策で緊急事態宣言下のせいか、ネット予約表はガラガラだ。
予約する方としてはいいが、ヘアーサロンの方は大変だろうなと思う。

予約した日、目覚めるとなんと大雨。。。
9時すぎになり、「雨上がってるよ」と妻の声。
しかし、まだ予約した時間には早すぎる。
歩いて5-6分のところのサロンだから。

9時40分頃になった。「おっ雨降ってないね」
急いで、身支度してマンションのエレベータへ向かう。
ポーン。「1Fです」無機質なアナウンスが流れロビーへ出る。
コンシェルジュが、「行ってらっしゃいませ」と声を掛ける。
会釈をして外に出ると、少し雨が降ってきた。
まだ、パラパラって感じだから問題ないな。

ほんの少し遠回りにはなるが、駐車場を抜けて行くと少し濡れずに行ける。
まっすぐ進んで駐車場を抜け、隣のショッピングソーンに入った。
一番端っこはスーパーでその先は屋根がない。
スーパーの前までは傘をさす必要はない。
しかしここで急変、土砂降りに変わってしまった。。。
みるからに傘が役に立たないレベル。バケツをひっくり返したような雨。
12本の骨を持つ頑丈な傘を携えてはきたが、大きくないので濡れそうだ。

スーパーの軒先でしばらく立ちすくむが、おさまる気配は無い。
ヘアーサロンまでは、あと70メートル程度だろうか。
目の前の信号を渡って、直線だ。風はない。行けるか?

信号が青に変わる頃合いを見計らった。
そして、意を決し傘をさし、土砂降りの中にニットの靴で踏み出した。
歩道の水はけは割と良さそうなので風がなければ問題はなさそうだ。
交差点の車道と歩道の間をすごい勢いで水が流れている。
静かに流れている水を飛び越える。足早に横断歩道を渡る。

所々にできている水溜りを避けながら、ひたすら直進する事50メートル。
こんな時は、すごく長く感じるものだ。
やっと屋根がある場所に到着。ここからヘアーサロンまでは10メートル。
もう、濡れる事はない。ほっ

「おはようございます。10時から予約してました」
「お待ちしてました。奥の椅子へどうぞ。雨ひどかったですね」

促されるまま、一番奥の椅子まで行き、座った。

「どうぞマスクを交換してください。汚れますから」

つけていたマスクをトレーに乗せて、カット中につけるマスクを渡された。
冷たくて気持ちいい。Coolタイプの不織布マスクだ。なかなかいい感じ。

ふと、正面の鏡に映った外の様子をみると、雨はカラッと上がっていた。
しばらくすると太陽も顔を出してきた。

「あれ、雨上がりましたか?」
「そうですね。止んだみたいです。良かったですね」

全然良くないと思ったが、スタイリストさんの感じが良かったのでうなづいた。

なんということだ。
ヘアーサロンに向かって歩いている間だけ、土砂降りだったのだ。
誰かの嫌がらせのような土砂降りの雨だった。
こんな雨は嫌いだ。きっと、天の嫌がらせだ。

「髪、思いっきり短くしてください。バリカン使って」

雨に濡れても平気な髪型にしてやった。

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