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外国籍人材を受け入れることで、犯罪率はどう変化する...?素朴な疑問、不安をデータで検証してみる

こんにちは!広報の武井です。今年の5月よりスタートした「#日本から国境をなくす」プロジェクトが、この度6ヶ国語に対応し、日本にいる外国籍の方々が使う言語の78%をカバーしました...!引き続き多くのメディアに取り上げていただき、外国籍の方々からの反響もいただき嬉しい限りです。
詳しくはこちら:「#日本から国境をなくす」プロジェクトの裏側<前編>
本日は前編に引き続き、本プロジェクトやone visaにお寄せいただいた様々な感想・質問に対し調査を踏まえてお答えいたします。
コロナの先に見えてくる日本の姿が、「国境のない」すばらしい国に近づいているようにと願って...どうぞ!

Q.これから外国籍人材が増えると聞きました。日本はそんなに人手不足なのでしょうか。

現在の予測では2030年の7,073万人の労働需要に対し、6,429万人の労働供給しか見込めず、「10年後=644万人の人手不足」になると言われています。
そこで「シニア世代の活躍」により163万人、「女性活躍の推進」により102万人、「自動化などによる生産性向上」で298万人の、合計563万人の労働供給を補うことができるとしていますが、すべてが計算通りに増加しても、まだ81万人が不足している状態です。※1
そこで外国籍の方々の手を借りよう!というアイディアから、実質的な移民政策として発足したと言われているのが、新たな就労ビザ(在留資格)「特定技能」なのです。

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そして、今も私たちの思っている以上に外国籍の方々に支えられているのが現状です。全国にいる労働者のうち、人手不足が顕著な20〜30代に絞ってみると、農業では14人に1人。漁業は16人に1人。製造業は21人に1人が外国籍の方。これらの人たちがいなかった場合。または今後受け入れなかった場合に、これらの産業はどうなってしまうのでしょうか...。※2

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まとめ:「日本の10年後=644万人の人手不足」。あの手この手でカバーするアイディアの中には外国籍人材の受け入れも。今現在も一部の産業は彼らに支えられており、農業をする20〜30代の14人に1人が外国籍。

Q.外国籍人材を受け入れることで、犯罪率はどう変化するのでしょうか。

外国籍の方々が増えるのはなんとなく不安、犯罪率は変化するのかな...?そういった声もよく聞きます。今後外国籍の方々が増えて犯罪率がどうなるのかは断言できませんが、参考になるのが、これまで「外国籍の方がどのくらい日本に増えて」「犯罪(検挙)の数はどう推移しているのか」を知ることです。検証してみましょう。

在留外国人数の変化と検挙数

平成17〜30年の間に、在留外国人の数は1.4倍に増加しています。ちなみに、同じく平成30年度の短期滞在(海外からの観光客数)は、なんと3,119万人。どちらも毎年最高記録を更新しています。※3
では同じ期間の検挙数はどう推移しているのでしょうか。日本に住んでいる外国籍の方が増えると当然犯罪の数も増加するのかというと...実は、最多が平成17年の4万8000件。
それから暫くは減少傾向にあり、ここ10年ほどは半数以下の1万4000件前後で横ばいです。※4

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まとめ:平成17年〜30年の在留外国人数は1.4倍に増加しているのに対し、その検挙数は3分の1以下に減少。

Q.生活保護を受けている外国籍の方が多いと聞きましたが、本当でしょうか。

前提として、外国籍の方々が生活保護を受けるための要件は日本人同様、たくさんあります。さらに、適用されるのは「永住者、永住者の配偶者、日本人の配偶者等..」身分系の定住性あるビザを保有している人に限定されるため、日本に来て、仕事を失った=使える制度ではないのです。

厚労省によると、平成28年度に生活保護を受けた世帯は月平均で約163万世帯ありました。そのうち世帯主が外国籍の世帯は約4万世帯。
割合にすると、2.87%になります。これは日本全体の世帯数のうち、「日本人のみの世帯:外国人を含む世帯」の割合とほぼ同じということになります。

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ただし、個人ベースで外国人が何人(どのくらいの割合で)生活保護を受給しているかは不明です。上記はあくまで世帯主が外国籍の受給世帯数であり、その配偶者や子どもが日本国籍、または世帯主が日本人で配偶者が外国籍の場合もあるからです。※5

まとめ:「日本人のみの世帯:外国籍の方を含む世帯」の割合と、生活保護世帯のうち「日本人が世帯主:外国籍の方が世帯主」の割合はほぼ同じ。
世帯主が外国籍の家族が、多く生活保護を受給しているということはない。

Q.(10万円給付に関し)外国籍の方にも一律に配るのではなく「相手の国もそこに住む日本人を助けているのなら、お返しにこちらも助ける」など、相互主義の考えで支援すべきだと思います。

最後は統計データではなく、代表の岡村の考えから回答させていただきたいと思います。
「相互主義という考え方は様々な捉え方があります。一例として、日本人に優しくしてくれる場合(国)だけ、こちらもその国から来た外国籍の方に優しくしますよ。というスタンスを、今回の質問に適用した場合。
例えばA国に住む人全員、つまりそこに住む日本人に対しても一律100万円の給付があったとしたら、日本に住むA国人の方々全員にも、日本政府は同じ対応をするのでしょうか?
きっとこの場合、必ずしも同じ対応をするわけではなく、あくまでそれぞれの国が検討材料をもって判断するのではないでしょうか。他の国の状態を参考にするのはいいことですが、今回のような「相互主義」を軸に10万円給付の可否を判断をするのは、僕は違うのではと考えています。
僕は、国の状態・そこに定住する人の状況を踏まえて、給付や補償はされるべきと思っており、今回の場合、税金も納めて日本の社会を支えている外国籍の方々も、当然10万円の給付対象に含まれてよかったと思うのです。
私が事業を通して伝えたいのは、国籍は生まれた場所の違いでしかないということ。今回の議論をきっかけに分断を加速させるのではなく、人と人とが同じ社会で生きている仲間だという認識が日本でももっと広がるといいなと願っています。
そして補償に関してはまだまだ必要とする声もあがっています。言語面でサポートを必要とする人も。彼らがまずは必要な情報をかんたんに受け取れるよう、多言語で発信したい、そんな思いからスタートしたのが『#日本から国境をなくす』プロジェクトです。今後も動向を見守っていただけると嬉しいです。」
詳しくはこちらの記事で紹介されていますので、ご興味のある方はぜひご一読ください。

<出典>
※1:パーソル総合研究所・中央大学「労働市場の未来推計2030」
※2:2015年国勢調査 就業状態等基本集計「日本人以外」を外国人として20〜30代の農業就業者に占める割合
※3:中長期在留者数と特別永住者数を合計した数。法務省 在留外国人統計
※4:法務省 令和元年版 犯罪白書 第9章外国人犯罪・非行
※5:「外国人の生活保護は違法」は誤り ”最高裁の判決”がネットで拡散、厚労省の見解は?https://www.buzzfeed.com/jp/kotahatachi/seikatuhogo-debunk-2018

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