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国籍、身分を超えて人と人が対峙するとき、すべてが他人事ではなくなる。 | 映画「コンプリシティ / 優しい共犯」について

こんにちは!one visaの広報担当、武井です。
最近はご自宅で1日の大半を過ごされる方も多いと思います。個人的には、この季節には外に出かけたくってモヤモヤしてしまいます...悔しい!
でも、だからこそ、思いきりお出かけできるようになった頃に向けて、やりたいことリストや、観に行く映画リストを作っておきませんか。少しでも心がワクワクする未来に向けて...。そこでおすすめの一本が、「コンプリシティ/優しい共犯」なんです。

公式サイト紹介文にはこうあります。
この決断をあなたは許せるだろうか?
技能実習の職場から逃亡、他人になりすまして働きにきた中国人青年と、彼を受け入れる孤独な蕎麦職人。嘘の上に絆を強める二人を待つものとは―?
その決断に心震えるヒューマンサスペンス。
技能実習生、逃亡、日本国籍外国籍というボーダーを取り払った上に生まれた絆....。これは「世界から国境をなくす」チームone visaとして、絶対に観なくてはという衝動に駆られ、3月上旬に観に行きました。

映画あらすじ

外国人技能実習生の失踪は以前より社会問題になっており、2013年からの5年間で追いかけきれているだけでも2万6千人に登ります。これは、日本人として課題を感じずにはいられません。
近浦監督は、2014年の「ベトナム人技能実習生がヤギを盗んで食べた」というニュースをきっかけに、外国人技能実習生の取材を始め、この映画の制作に至ったそう。映画内では、劣悪な職場環境、法外な低賃金に母国での借金(ここでは貧しい家庭の出身の青年が祖母から借金をして来日する過程が描かれていました)そして逃亡、不法滞在と、技能実習制度が抱える課題のすべてが詰め込まれたようなストーリーが描かれます。

予告編を見たときの正直な印象は、ずっしりと重たい鉛のような。見たいような、見たくないような....なのに映画館に向かう足は止められず。楽しみな気持ち、他のメンバーを誘う声も止められず。
当日まで静かなドキドキが続いていました。
人は、誰かの苦しんでいる姿、見ていられないような痛々しい姿、自分ごととは思えない問題からは、目を背けたくなるもの。なのになぜ、私はこんなにもこの作品に惹かれていたのでしょうか。
2019年4月に施行された就労のための新たなビザ「特定技能」。これが技能実習の二の舞になってはいけないと、私たちは考えています。これ以上、私たちが生まれ育った日本という国で、搾取され、苦しむ人がいてはならないし、そんな人間の縮図を生んではならない。
さらには世界中で同じ失敗が起きないよう、模範的な姿をone visaから、日本から作りたいという思いがあるからでは、と思います。

<感想>one visaメンバーで観に行ってみました。※ネタバレ注意※

舞台は広大な緑がひろがる日本の地方都市。中国からやってきた主人公のチェン・リャンは、元々勤めていた技能実習先(ここは細かく描かれていません)から逃亡。劣悪な環境下の仕事で低賃金だったのでしょうか...。貧困にあえぎつつも、同じく中国にルーツを持つ実習生たちと狭いアパートに二段ベッドを詰め込めるだけ詰め込み、共同生活をしています。ある日、民家のボイラーを盗んで得たお金で、偽名の身分証、持ち主不明の携帯電話を裏の組織との取引で手に入れます
窃盗、偽名、裏組織...日本人の私が生活していると日常触れ合うことはない、でも社会のどこかにあるんだろうと、うっすら気が付きながら見て見ぬ振りしていた側面に、思いきり対峙したことで、胸がぐっと苦しくなりました。

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(公式サイトより)
そこからチェンの運命は一気に転がり始めます。偽造の身分証を持ってふらふらしていたある日、元の携帯電話の持ち主にかかってきた電話を通じて、新たな仕事に就くことができるのです。そこはなんと、田舎にぽつんと立った、地元で愛される小さな蕎麦屋さん。
チェンは孤独な店主、弘のもとで新しい名前「リュウ・ウェイ」として仕事をはじめます。つたない日本語、初めてのことばかりであぶなっかしい仕事ぶり。(蕎麦を何度もこぼす、配達の途中で迷子になるシーンで、アルバイトを始めた頃の私の学生時代と重なってヒヤヒヤ...。)
しかし素直でまじめな性格と、なんだか放って置けない無垢な笑顔を持つチェンと弘は、本当の息子と父のように、静かに絆を深めてゆきます。でも、そんな日々は長くは続かず....。
最後には、財布を落としたことから警察の足がつき、偽名を使って仕事をしていたこと、ビザなしの不法滞在だったことが弘の耳に入ります。これまで自分がこれまで接していた人物は「リュウ・ウェイ」ではない、それでは誰なのか?そして不法滞在の身だったということは、どうやってここに辿り着いたのか?今すぐ警察に協力するべきなのか...?
蕎麦屋に荒々しく迫る警察官の追っ手。チェンの大きな偽りと対峙した弘はどんな行動に出るのか...。結末はぜひ、本編で。

ここまで読んだ多くの方は、
そもそも渡航費だけでなく、彼になぜ多額の借金があるのか。法外な低賃金や違法な職場は取り締まればよいのでは。困ったら母国に帰ればよいのでは...。そんな疑問を持つ方も多いのではと思います。作品内でも大まかに背景は描かれていますが、もっと細かな背景を知りたい方はぜひ、技能実習特定技能というキーワードで調べてみてください。
one visa journalにもいくつか記事が載っていますので、よろしければ。

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(公式サイトより)

one visaメンバーの感想

主人公が不法滞在がいつバレるかという不安を抱えながら、慣れない土地で、言葉もあまりわからない中、道に迷ったりしながら出前に行く様子がとてもリアルで、観ている間ずっとハラハラしていました。
家族想いの普通の優しい主人公の行く末も、在留カードの元の持ち主でそば職人を目指した子はどうなったんだろうというのも気になってしまい、夢を持って真面目に働く人たちがちゃんと幸せになれるような社会や制度であってほしいと思いました。技能実習から逃げ出すに至る背景にはふれられていなかったので、そこはもっと知りたかったです。
カンボジアで人材育成に携わっている身からすると、常に胸を締め付けられる気持ちで見ていました。
主人公は中国の田舎出身、とても純朴で本来他人思いのいい人。それでも借金を抱えているという現状、逃げ出せない人間関係の中で制度の穴に落ちていく感じ。偽りの身分で周りの人間に愛されながら、自分に対しても、周囲に対しても嘘をつき続けなければいけない。いつかばれる、やめなくてはいけない。それでも母国には借金と共に残した家族がいる。自分が逃げてはいけない。このジレンマとの葛藤が繊細に描かれていてとても良かったです。

日本語のたどたどしさ、配膳のおぼつかなさ(主人公は蕎麦屋で身分を偽り修行をしている)などが、まさにこれから(one visaを経由して)来日して働くことになる学生たちと重なってしまい、親心のようなものを感じて泣きそうになりながら見ていました。こんな思いをする人が1人でも減ればいいなと、だからこそ人材に借金を背負わせずに、期待だけを背負って日本に来れる仕組みを作らなくてはいけないなと、事業への思いをより強くしました。

本作品にご興味をお持ちになった方は、こちらの公式サイトから詳細をご覧になれます。(一部の映画館では現状5月まで公開になっているようですね。)one visaはこれからも「世界から国境をなくす」べく、あらゆる情報発信にも力を入れて活動し続けます。

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