ニュータウンクロニクル
中澤日菜子 2017年
・あらすじ
・感想
「ニュータウン」という言葉を聞くと、都心からちょっと離れた丘陵地帯に、びっしりと家が並んでいるあの感じを連想します。関東だと横浜とか東京の多摩とかに多いですよね。よく「限界ニュータウン」という言葉を耳にすることがありますが、この本にもしっかりとその様子が描かれており、「リアリティがあるなぁ」と感じました。
この街で生まれ育った人について描かれておりました。開発が始まったばかりに生まれ、周りはまだ何もない状況。そこから10年ごとに描かれ、時に困難に見舞われながらも、人生を謳歌する姿が描かれておりました。その人生とニュータウンの成長、停滞、衰退といった一連のプロセスが、しっかりと対比されていて、とても面白かったです。
人はそれぞれいろいろな経験や葛藤がありますよね。これの場合は生まれてから、学生時代を経て、社会人、そして親になり、気が付けば半分生きてしまったということが描かれています。こうしてみると人生は先行きが分からず不安なことも多いですが、その分面白いことも多いと感じますね。それぞれの時代に特有の悩みがあり、それを鮮明に描かれているのですが、本当にリアルな悩みだなと感じます。私はまだ18年しか生きていませんが、結構今までの感覚でも分かるものも多く、リアリティに溢れていると思います。
街と人は常に繋がっており、それは物語にすることができると読んでいて感じました。これは、ただ人の一生を描いたものだけではなく、故郷の街と対比されながら描かれています。人の営みというだけでなく、バブル崩壊や高齢化社会を迎え、その都度変化するニュータウンも鮮明に描いているといってよいでしょう。人は常に街に住まうものです。故郷や長く住んできたということによって、その街に思い入れができるものです。最後の2021年の章では、母校が建て替えられて別の施設になっているというので、複雑な心境になっている様子が描かれていました。慣れ親しんだものが変わってしまったときの感情は私も何度も感じております。思い出って大事ですよね。
・書籍情報
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