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100年トリマー/持続可能なドッグサロンを目指して


1.はじめに

ごあいさつ


山形の片田舎から上京した僕は、ペット業界にどっぷりハマって30年が経ちました。
もともとは動物看護師を目指して…

あ、すでに興味がないですね。

ここはnoteの恩恵をフルに使って、アーカイブに任せたいと思います。
齋藤の黒歴史に興味があるという珍しい方だけお読みください。

そんな僕が長く携わってきたのは、トリミングスクールでの講師でした。

これからペット業界へと羽ばたく、トリマーの卵を育てていたんです。
見事大空を羽ばたく子もいれば、夢半ばにして飛ぶのをやめた子もいました。

今回はそんな始まりと終わりを長年見聞きしてきた僕が、自身でドッグサロンを経営し、仮説と検証を繰り返した結果を共有するお話です。

あくまで僕個人の経験に基づいたことなので、手触り感はあるものの再現性までは保証できません。
ド頭からなんですが、話半分でお読みくださいませ。

『One for Dog』とは何者か


飼い主さんのためのお教室『One for Dog』では、『これから犬を飼う人の相談会』をはじめ、子犬のサロンデビューを応援する『はじめてトリミング』、飼い主さんと一緒に学べる『しつけ教室』や飼い主さんのための『お手入れ教室』など、愛犬の成長に寄り添ったドッグライフプランを提供しています。他にも教育機関や公共施設での講演会、ドッグイベントなどより良い愛犬文化の創出に取り組んでいます。

SNSのプロフィールより

先に自分から言っておきますが…
ちょっと何言ってるか分かりません。

そうなんです、そういうお店なんです。

この場を宣伝に使いたくはないのですが、とはいえこのままだと何屋か分からないので、ちょっとだけ紹介させてください。

『これから犬を飼う人の相談会』


One for Dogの足元にはいつも「教育」があります。
ネグレクトも殺処分もボランティア活動だけでは足りず、根本のリテラシーが不可欠と思っているからです。

しかし、その教育も届けるタイミングによっては手遅れになってしまう…

では、いつか?

林修先生が出てこないうちに先を急ぎますが、それが家族会議の段階だと思っています。
ここからサポートできたなら、相当数の犬たちやその飼い主さんを救うことができるからです。

次に問題となるのが、どこでやるか?

登場するタイミングを逃した林修先生が出てこないうちに続けますが、本来ならば「ペットショップでやる」が正解です。

とはいえ想像してみると…

「その犬種は初心者向きではないですよ?」
「お子さんに手がかかる今、愛犬を迎える余裕はありますか?」

決して飼うなと言うつもりはないのだけれど

やはり現実的とは言えません。

そこで、不特定多数が訪れ、世代問わず集客力のある"無印良品"というブランドを使わせてもらうことに成功した結果、前代未聞の「犬を飼っていない人に向けたペットサービス」を届けることができたんです。

『はじめてトリミング』


トリマーであれば誰しもが経験する「咬み犬」。
そこまでいかずとも暴れる犬、嫌がる犬なんてのはトリミング業界への登竜門みたいなものでした。

しかし、その原因の多くが犬ではないことくらい皆、理解できています。
ましてや飼い主さんですらないことも薄々感じているかもしれません。

僕はその答えを「遅すぎたサロンデビュー」としています。

すなわち、社会化期(生後3週〜14週)から多くのトリミング経験を積ませることこそが、アレルギーを引き起こさない予防薬だと思っているからです。

そのためには、ワクチン接種の"完了"が最大の障壁なのですが、様々なリスクヘッジによって容易には突破できずにいます。

そこでOne for Dogでは、[完全予約制+完全貸切]という非効率極まりない打ち手を使って、ワクチン未接種での受け入れを可能にしました。

そして、この打ち手をとった本当の狙いが「新米飼い主さんへの教育」だったんです。

先に挙げたトラウマを引き起こす原因に、飼い主さんたちの「無知」があります。
トリミングに至っては、お手入れの何たるかなどそもそも分かっていないのです。

そこで、「家族参観」と称して解説を交えながら、無知を自覚してもらうことにより、その後の教育をしやすくしました。

  • 月に一度はトリミングを経験させてあげましょう

  • 無理なオーダーは愛犬の負担になります

  • 問題行動を学習する前にしつけを学んでおきましょう

  • トリミングに慣れた頃にはお手入れも学んでおきましょう

さらに"これから犬を飼う人の相談会"によっても、飼い主さんの"はじめて"をハックしやすくなりました。
この段階から飼い主さんとの関係性が築けることのメリットは、なにより業界の皆さんが感じていることかと思います。

  • 飛び込み客

  • サロンジプシー

  • トラウマ

ストレスによってトリマーの寿命を削り取るような場面は数え切れません。

愛犬家を正しく育てあげることで、トリマー自身もまた助けられることがあると感じています。

飼い主さんが学ぶ『しつけ教室』


僕がドッグトレーニングを学び始めたのは、かれこれ20年ほど前。

ニューヨークでドッグトレーニングをしていた日本人トレーナーの紹介で、大阪にある警察犬訓練所の所長さんからノウハウを学びました。

師と仰いだその人からの一語一句が僕の活動原点になっているのですが、そんな中でも特に印象深い言葉が胸に残っています。

ある日、こんな質問をしてみたんです。

「なぜトリマーである僕たちに、惜しまずノウハウを教えてくれるんですか?」

飼い主さんへの指導方法まで教えてくれた

当時、トリマーの世界において技術は目で見て盗むものであり、鍛錬によって磨き上げられたテクニックは鰻屋のタレくらい秘伝なものでした。

自分自身の種明かしともなるノウハウを、しかも別業界の人間にまで教えるわけですから、僕からしても不思議でたまりませんでした。

するとこう言ったんです。

「ドッグトレーナーは明日のために今日があって、明後日のために明日がある。長い時間をかけてコツコツ信頼を獲得していく地道な仕事。でもトリマーは違う。さっき会ったばかりの犬を短時間で、しかも嫌がることでもテクニックでなんとかしてしまう。ドッグトレーナーには考えられない技術だ。」

なんだかすごく嬉しかったのを覚えてる

そういえば講師時代、社会人コースにはドッグトレーナーからトリマーに転身しようと入学してきた人もいたのですが、正直に言えばあまり得意ではありませんでした。

それはたぶん、考え方が違ったから。

爪切りが嫌ならば、まずは足を触ることから慣れさせるトレーナーに対し、骨格を利用して一瞬で作業をこなすトリマーでは、そもそもの考え方が違うんです。

どちらが良い悪いの話ではなく、考え方が違う。

だからこそ師はトリマーの技術に着目し、もしもこの人たちにドッグトレーニングを教えたらとんでもない逸材が誕生してしまうのではないかと考えたはずです。

しかも、トリマーは飼い主さんとの距離まで近い。

問題行動に発展し、なんならこじれまくってから泣きつかれるトレーナーに対し、パピーの頃から飼い主さんと接する機会が多いトリマーは、動物病院の頻度すら凌ぎます。

この人たちなら早いうちから飼い主さんに、「基礎教育」を届けられると思ったに違いありません。

そんな修行時代だったわけですが、ようやく今になって師の言っていることが分かった気がしています。

とはいえ僕は、訓練所や出張トレーナーさん、ひいてはパピーパーティを差し置いてまで、自身のしつけ教室を押し通そうとは思いません。

僕には僕のできるトレーニングがあり、できないこともまたあるからです。

  • 重度の問題行動

  • 飼育環境の改善

  • 犬同士の馴化

これらはOne for Dogのしつけ教室では取り組めないことを飼い主さんにも伝えています。

それぞれの立場で最善を尽くす

こうした考え方から、トリミングサロンでもしつけ教室をはじめる役割はあるのだと感じています。

飼い主さんのための『お手入れ教室』


このサービスがOne for Dogの生命線であり、また一定数のトリマーから共感を得られない不遇のサービスでもあります。

「飼い主さんにトリミングなんか教えたら商売あがったりでしょ!?」

もう何年言われ続けているだろうか

これは呪縛のようにつきまとっている業界関係者からの言葉。
いや、飼い主さんから言われることすらあります。

とはいえ、こればっかりはやってみなくちゃ分からないのも事実。
否定されても仕方ありません。

それでもなんだか虫の居所が悪いので、

「学校で費やした2年間もの実習を、数回のレッスンで巻き返される程度なら、トリマーなんて仕事はなくなってる!」

お手入れ教室の主役はあくまでグルーミングです

なんて、酒の席で愚痴ったり。

しかしながら皆、トリマーを続けるために日々苦しめられている現実があることも知っています。

現状のトリミングは、レストラン型のサービス。
常にトリマーは完成したサービス(仕上がり)の評価に晒されています。

作業をバックヤードに置いてきたことで、犬たちの負担や作業の大変さなど知る由もない飼い主さんが、トップトリマーのインスタグラムを片手に、楽観的なオーダーを要求するのは見慣れた光景。

その結果、自身のやりがいを上回る肉体的・精神的負担によって、現役生命を削り取られているんです。

一方、お手入れ教室はというと、言わばバーベキュー型のサービス。
仕上がりがイマイチだとしても、その過程に価値があるので、意外と満足度が高かったりします。

なによりトリミングそのものへの理解が深まることで、無理なオーダーをしなくなったり、理不尽なクレームすら言わなくなったりするんです。

誤解されてしまう前にお伝えしておきたいのですが、僕は"これから犬を飼う人の相談会"によってペットショップをなくしたいわけでもありませんし、"お手入れ教室"でトリマーの仕事を奪いたいわけでもありません。

むしろ、それぞれが好循環になる役割を作りたいと思っています。

子犬には飼い主さんのやる気だけでなく、プロトリマーの技術が欠かせません。
不慣れな子犬を飼い主さんが扱えることなんて不可能に近いからです。

そのため1才〜2才くらいまでは、トリマーさんにトリミングのマナーを教えてもらうことを義務付け、パピーの入学はお断りしています。
トリマーさんに慣れさせてもらってから、バトンを受け取りましょうと。

トラウマのある子のリハビリや、飼い主さんとの関係性(信頼関係を築けていない)にも制限を設けています。

こうした試行錯誤を繰り返した結果、お手入れ教室には論理的かつ体系的なカリキュラムが必要だと気付きました。
One for DogのYouTubeでは、レッスンの様子も公開していますので、ご興味がある方は覗いてみてください。

オンラインサロン『愛犬文化村』


僕が目指した未来に「トリマーと飼い主さんの分断を無くす」があります。
クレームの中には誤解によるものも多いからです。

  • 作業を秘密にしたがるトリマー

  • 不審がる飼い主さん

この関係がお互いの理解を邪魔していたりします。
であれば僕が矢面に立ち、それぞれの本音をぶちまけてしまおうじゃないかと考えました。

僕のオンラインサロン(オンラインコミュニティとも言う)は、トリマー限定とかお客様限定とかいう縛りはなく、分野も立場もごちゃまぜです。

そこから生まれる何かを期待して…

とまあ、このあたりの話をすると、校長先生のスピーチよりも長くなりそうなので、今日のところはこのくらいにしときます。

これらのメニューに結論付くまで、いくつもの失敗を重ねてきました。
そこから得た気付きや反省を元にして、これより書きなぐりたいと思います。

ちょっと長くなりそうなので、愛犬とのかくれんぼが途中という方は、きちんとケリを付けてからお戻りください。

2.ドッグサロンの現状と課題

離職率の高いトリマーという仕事


ここではあえてトリミングサロンとは位置付けず、ドッグサロンとして話を進めます。
ワンピースほどの伏線回収はありませんが、後ほど取りに来ますので今しばらくお付き合いください。

トリマーの寿命がそう長くないことは、この記事をお読みの方ならなんとなくご承知のことかと思います。
ちなみに離職率の要因を挙げると、

  1. 給与や待遇の不満: トリマーの給与や待遇が不十分であると感じることが、最も一般的な離職原因となっています。トリマーは、犬や猫のトリミングに対する高い技能を持っており、その分給与が高くなることが期待されます。

  2. 勤務時間やシフトの不規則性: トリマーの仕事は、休日や夜間、週末に行われることが多く、勤務時間が不規則であることが多いため、プライベートな時間の確保が難しいと感じることがあります。

  3. ストレスや疲労: トリマーは、犬や猫との接客や、時には手術や治療のような難しい仕事をしなければならず、ストレスや疲労が蓄積されることがあります。

  4. 周囲の人間関係の問題: トリマーは、他のスタッフや顧客と頻繁に接触することがあるため、人間関係のトラブルが原因で離職することがあります。

  5. 職場の文化や環境の不適合: トリマーは、職場の文化や環境が合わないと感じることがあります。例えば、ペットに対する取り扱いが適切でない、清潔でない、トリミング機器や器具が不足しているなどの問題がある場合があります。

話題のChat GPTはそう言ってます。

仕事の仕方は年齢で変わる


加えてもう一つ、僕なりの仮説があったりします。
この時代にゴリゴリのジェンダーギャップを出しちゃいますが、齋藤の寝言だと思って聞いてください。

たまにお客様から、

「今後もトリミングの新規客は取らないんですか?」

トリミングは『はじめてトリミング』だけなんです

と言われます。

実はOne for Dog、トリミングをしていないんです。
あ、ウソです…全くしていないわけではなくて、開業当初のお客様だけ今は担当させてもらっているんです。

リーフレットにもHPにもSNSの発信ですら載っていないのですが、とはいえトリミングをしないドッグサロンなんて聞いたことがないわけで、やってて当然からのお問い合わせをいただくわけです。

※一応はトリマーなのですが

そもそも僕の歳(アラフィフ)にして現役バリバリにこなしているトリマーはどのくらいいるのでしょう?
いえ、いることはいるのですが、"ひとりまー"として家族を養っている50才なんて、そう検索に引っかかってこないと思います。

体力に自信がある20代や、技術に油の乗った30代は一線で活躍するでしょう。
とはいえ、ずっと雇われで働くトリマーは少なく、ある程度の経験や不可抗力(人間関係など)によって独立します。

ここは僕の肌感なのですが、開業5〜7年にもなれば大抵のサロンがアッパー(予約困難)を迎えます。
そこでサロンオーナーは選択をしなければいけないわけで、

①:人を雇って新規を増やす
②:新規を断って既存客で回す

ことになります。

① を選択すれば、自己責任だけで済む悠々自適な経営とはいかなくなります。
② を選択すれば、仕事のスタイルは変わりませんが、年齢(職業病)との戦いがはじまります。

もし上手くいったとしてもこのサイクルは変わらないわけで、5年後にはまた同じ岐路に立たされる…
要するに、

①’:店舗を増やしてオーナー業に徹する
②’:それでもひとりまーを続ける

です。

①’ に関しては、マネジメントが主な仕事になるので、トリミングが大好きな(自分でやるのが大好きな)人には酷かもしれません。

一方で、経営は安定するでしょう。
ただし、精神状態は不安定かもしれません。

以前、長いことサロンを経営していた卒業生を取材したことがあったのですが、

「毎日毎日、従業員が怪我をさせないか、クレームが来ないか、売上なんかよりもただただ無事に一日が終わってほしい数年です…」

切実なオーナーの悩みがそこにはあった

と話していたことが印象的でした。

②’ を選択しても未来は明るいものでなく、ちょうど開店当初に仔犬だった子たちがシニアに差し掛かり世代交代が訪れます。

その間、新規を取っていなかったことで予約は徐々に少なくなり、ライスワーク(生計を立てるための売上)にまで影を落とすようになります。

そこでオーナーは新規客の再獲得に乗り出すわけですが、それまで既存客で回してきた分、集客に向けた宣伝活動を控えていたことで、最新の広告モデル(今だとSNSとかの空中戦)についていくことが難しかったりします。

また、口コミや地上戦で新規を獲得したとしても、再度1から飼い主さんと犬との関係性を作り出すのに、かなりの労力を費やすことになるでしょう。

50歳を過ぎても現役でトリミングを続けている男性ひとりまーが少ない理由のひとつがこれです。

そこで僕は「③」を開拓すべく、日夜せっせと仮説と検証を繰り返しているわけなんです。
5年目にしてようやく[トリミング:お教室]の割合が逆転[トリミング<お教室]しました。

逆転したことで、職業病と戦っていた老体はすこぶる軽くなり、今現在も現場に立つことができています。

トリマー → インストラクター

このビジネスモデルを確立できれば、これからトリマーを目指す子供たちにも夢を届けられると思います。

3.One for Dogのビジネスモデル

サービスに嘘をつかない


One for Dogは「嘘をつかない」ことをサービスの軸にしています。
お客様にはもちろんのこと、自分にも嘘をつかないのです。

例えば「毛玉料金」。

トリミングとは切っても切れない腐れ縁なわけですが、飼い主さんたちは皆"毛玉料金を取られたぁ"と嘆きます。
一方で、サロン側はというと"毛玉料金がもらえた♪"とはならないはず…

そうなんです。
できればない方が良い負の料金、それが毛玉料金です。

では、なぜそこまで請求しにくい料金を発生させるかなのですが、それは技術料に加えて罰則を科している側面があるからだと思っています。

毛玉作ったら金かかるぞ!

という脅し文句です。
だからといって、そこまでの儲けになるのかですが…答えは"否"。

一つのオプションとすれば少額の利益にはなるものの、お客様へ説明するストレスや作業負担、犬たちに与える心身への負荷まで考えれると割りに合わないくらいです。

それであればいっそのこと"全バリ(全身クリッピング)"してしまえばいいのですが、世の中のトリマーはこの一手を出し惜しむ。

なぜなら[見た目:負担]の考え方が[見た目>負担]になっているからです。
多少お金がかかろうと、多少愛犬に負担がかかろうと、多少トリマーが大変だろうと、見た目だけは損ないたくない。

これが本音です。
#それってあなたの感想ですよね

とはいえ、なんだかバツが悪いので、

「おウチでもブラッシングしてくださいね」

なんて、100%不可能を承知で言葉だけ並べる始末。

だからといってお手入れ教室までやれというわけではないのですが、せめてブラシの持ち方や梳かし方まで教えてあげないと、2年間を練習に費やした自分を鑑みても容易に口には出せないはずです。

・・・と少々お口が過ぎてしまったのですが、それを許さないのが薄利多売のビジネスモデルだったりします。

数キロ程度の商圏で巻き起こる競合店との価格競争により、質より量を求める経営者は、日にこなせる限界の頭数まで予約を埋め尽くし、なんならそれでもまだ回転率を上げるため流れ作業へとシフトします。

結果、犬の気持ちやトリマーの気持ちなどどこへやら。
年末なんて時期には記憶も吹っ飛ぶ忙しさに、予期せぬ事故が起きたりするわけです。

そんなだからSNSでは今日も[ 飼い主さん VS トリマー]の構図が絶えません。

しかし本当は皆、それでいいなんて思ってない。
すべてのトリマーは、犬が好きでこの仕事についているんですもの。

飼い主さんの気持ちや言いたいことなんて百も承知なはず。
だからこそ、売上ノルマを達成するために必要なセールストークや、経営保身のためのクレーム処理に頭を抱え、夢見た仕事とのギャップに心が折れてしまうのです。

トリマーになることを夢見た頃の正義感のまま、仕事を続けることができないなんて、まったくもって間違っています。

動物商をしていてお金を稼ぐと、なにか後ろめたい気持ちになる風潮がありますが、考えることから逃げずに学びまくることで、あの頃の自分に嘘をつかない仕事の仕方は見い出せると思っています。

大切なのは営業するかではなく営業したいか


こうしたことからOne for Dogでは、心の底から勧めたいサービス以外は撤廃することにしました。

・後ろめたいオプション
効果が薄いにも関わらず客単価を上げるためだけのサービス

・強引なデザインカット
管理ができないのに映えたい飼い主と、承認欲求を満たしたいトリマーに着せ替えられるサービス

・負担でしかない写真撮影
ベストショットが撮れずイライラするトリマーと、それを知らずに期待する飼い主のため、必死でポーズに耐えなければならないサービス

数え出したらきりがないわけですが、自分に嘘をついた営業活動はそのうちボロが出ます。

飼い主さんにも、犬たちにも、胸を張って営業できるサービスだけを取り揃えることに徹したのが、One for Dogのビジネスモデルなんです。

僕が考えるドッグサロンの最適解

4.One for Dogが取り組む社会活動

犬文化創出プロジェクト


僕が独立を決意したとき、色々な不可抗力もあって、神奈川県の横浜市から埼玉県の宮代町へと移住することになりました。
そこで思ったのが「成熟していない土地で一から犬文化を作ってみたい」です。

一通りの経験をさせてもらった僕がこれからやるべきことは、トリミングサロンなんかではなく、なにか集大成のようなものでないといけない気がする…そう思ったんです。

特に力を入れているのが「地域活動」。
たくさんの方に支えられながら、地道に取り組んでいたりします。

どれだけ正しいと思う活動でも、自分のお店が弱いままでは誰も話を聞いてくれません。
影響力のある組織や団体に声を届けるためには、SNSだけではなく、体温のある場所でも強くならなければいけないと思っています。

その中で特に影響力を持ったのが、教育機関と公共施設でした。

僕が開業間もなくして攻略に挑んだのは「町のアイコン」でした。
観光スポットにもなっているコミュニティセンターで募集していた「公募講師」に応募したんです。

行政は後にも先にも実績ありき、公民館とお仕事をしたことで活動の幅が一気に広まったように思います。

ボランティア活動の推進


動物愛護の観点において、ベクトルは同じでもちょっと違った角度から攻略しようとしているのが、オンラインサロンで年に一度開催しているドッグイベント「愛犬文化フェス」です。

保護犬の譲渡会では、希望者への審査が行われることが多いのですが、そもそもの飼育条件を提示するのではなく、

"教育を通じて迎え入れる知識を得ておく"

という仕組みを目指しています。

コミュニティの中でドッグリテラシーを育て上げ、そこにボランティア活動を誘致するという考えです。

コロナ渦を経てようやく動き出した鼻息荒めのイベント。
毎年秋に開催を予定していますので、良かったら参加してみてください。

5.One for Dogが取り組む文化づくり

犬は文化の鏡である


受け売りの言葉ではあるのですが、とはいえ僕の好きな言葉です。

「犬は文化の鏡である」とは、犬が人々の文化や社会のあり方を反映しているということを表しています。
人々が犬を飼育する方法や扱い方、犬が果たす役割などは、その社会や文化の特徴を示すものとされているからです。
例えば、犬を愛玩動物として飼育する文化では、犬の外見や性格を重視することが多い一方で、狩猟や牧畜などの目的で犬を飼育する文化では、犬の能力や作業効率が重視されることが多いといったように、文化によって犬に求められる役割や価値観が異なります。
また、犬に対する扱い方にも文化的な違いがあることがあります。
例えば、犬を家族の一員として扱い、一緒に暮らすことが一般的な文化では、犬に対する愛情や思いやりが重視される傾向があります。
一方、犬を単なる道具として扱い、使い捨てにする文化では、犬に対する扱いが酷いことがあるかもしれません。
つまり、「犬は文化の鏡」ということは、犬に対する社会的・文化的な扱い方がその文化の特徴を反映しているということを示しています。

これまたChat GPTがそう言っています。
#AIばかりに頼るな齋藤!

でも、そういうことです。
国際社会においても、犬の存在は重要だと感じています。

僕は犬のことしかできませんが、だからこそ犬のことで世のため人のためになるのが、犬界人の務めだと思っています。

「犬が好きな人」が弱者であるべき理由


世間を見回すと、犬が嫌いであったり犬が苦手な人に対する風当たりが強い印象を受けます。

犬好きに悪い人はいない」なんて僕を見ていて良く言えたものです。
つまり、なぜか日本では"犬が好きな人が強い"傾向にあるようなんです。

犬が嫌いな人に対して、"なんで!?犬かわいいでしょ?"というハラスメントめいたものが僕は嫌いです。

犬と一緒に過ごさなければいけない人たちは、常に気を遣わなければいけない人たちであるというのが僕の言い分。

世の中の半分の人が犬好きで、半分の人は犬が嫌いなくらいに思っておくことが大事です。

だからこそ、「犬が好きなのでごめんなさいね」という気持ちでお散歩するべきですし、「犬が好きなのでご迷惑をかけないようにしますね」としつけを学ぶべきです。

なぜなら、犬が嫌いな人の矛先はいつも"犬"だから。

愛犬家であるならば、犬が嫌いな人にこれ以上嫌な思いをさせない努力をすべきです。
プロフェッショナルであるならば、そうした愛犬家を育てる努力をすべきです。

それが、人間の都合で改良され、繁殖され、共に暮らさざるを得ない犬たちへのせめての礼儀、すなわち動物愛護だと思うんです。

6.持続可能なドッグサロンを目指して

子供たちと一緒に育む愛犬文化


無印良品で"これから犬を飼う人の相談会"を開催し、気を良くしていた齋藤ですが、ここに来て新たな壁にぶち当たりました。

犬を飼い始める世帯No.1にして、犬を飼ってから困り果てる世帯No.1の「子育て世代」にまでは、まだまだ距離があるからです。

そこで狙いを付けたのが小中学校。
小学校や中学校のホームルームでチラシを配ってもらえたら、確実に保護者へ繋がると考えました。

また、子供たちのためにもなるイベントを掛け合わせることで、教育委員会の了承も得ることに成功したんです。

季節ごとのイベントを毎年恒例にすることで、広告物のデザインも転用できます。
なにより1度ハックしてしまえば、新入生は毎年変わるわけなので、年度ごとに営業を仕掛けられるというわけ。

すなわち学校を、サスティナブルな広告塔にしてしまおうと思ったんです。
#姑息だぞ齋藤
#そうだそうだ
#最後まで読みなさいよ!

子供たち、その保護者というマーケットを攻略できさえすれば、新規獲得に悩むこともありません。
きちんと誘導すれば、ドッグリテラシーの高い愛犬家がお店のサービスを利用してくれるでしょう。

すなわちこれが、愛犬文化の創出

このビジネスモデルがドッグサロンの答えとなるか、今後のOne for Dogもチェックしておいてくださいね。

7.おわりに

僕の現役引退はもうすぐそこまで来ています。
でも、焦りも諦めもありません。

なぜなら、すでに現世でのゴールは目指していないから。
スピ系の話に聞こえてしまいそうですが、いたって真面目な計画です。

One for Dogのビジネスモデルを面白がってくれ、僕の想いに共感してくれた後輩たちが、その人なりの信念に基づき継承してくれたらこれ本望。

100年後、バトンを受け取っていた誰かが、犬たちとその家族を幸せにしてくれていることを願って、最後の最後まで挑戦を続けていきたいと思います。


最後に。
僕をここまで連れてきてくれたみんなと、天国の愛犬へ感謝します。


飼い主さんのためのお教室『One for Dog』
オーナー・齋藤 大

ご拝読ありがとうございました!


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