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水族館~ミワ ノ色彩

ミワは付き合った男のほとんどと水族館にいっている。
ミワは水族館が好きだった。
好きな場所に好きな男と行きたい、と思い誘うと
水族館はデートのお決まりコースだからか、みな付き合ってくれた。

ペンギンのコーナーでかわいらしい反応をしてみたり
時々はイルカのショーなどで水しぶきをあびて声をあげたりもするけど
一番好きなのは深海のコーナー。
そしてその水族館で一番大きな水槽。
薄暗い水槽を前にして、ただそこにたたずむ。
いつまでもいつまでも見ていられる。
静かに、黙って、いつまでも。
なにかが思い浮かんだりするけどすぐにぼんやりとした輪郭になる。
時間を忘れる。
だから本当は一人で来て、好きなだけそこにいるのがよいのだけれど。

たいていの男たちはミワとそこそこの会話をしながら一通り見て回る。
今まで、妙に詳しかったりうんちくを語りだす男はいなかった。
普通に楽しいデートの時間。

・・・ひとりだけ違う男がいた。

その男は、人気がなくなるとミワにぐっと体を近づけてミワのからだのいろんなところに触れた。
付き合いが始まったばかりの頃だったからどきどきして刺激的ではあったけど。

本当は、じっくりゆっくりアカウミガメが回遊する様子を眺めたかったな。

好きな場所で好きなものを好きな人と一緒にみる ということから外れた行為をするその男と付き合って数年になる。
改めて思い返すと…ないなぁ、と思う。
またひとつ、ふんぎりをつける材料をみつけた。

ただそれだけのはなし。

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