尾崎世界観がラジオで喋った、ライブのこと

2021年1月3日深夜、27時〜29時、文化放送正月特番
『尾崎世界観の悩みの羽』

28時頃に印象深い発言があったので、文字起こししました。

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尾崎世界観が所属しているバンド、クリープハイプが最もお世話になっているライブハウス、下北沢デイジーバーの店長、加藤さんからお悩みのメールをいただきました。ご紹介します。

「デイジーバーは現在、キャパを絞りつつ、また配信なども行いながら営業をしております。それでもバンドがライブをするのにも、バンド側もかなり気を遣わなければならない状況が続いており、なかなかバンドもこれまで通りライブをすることができません。

また現在は時短営業を行っているため、年末のカウントダウンも取りやめ、早めの終演にしたり、打ち上げなども思い切りできない状況です。

配信などの、現在できる新しい形を取り入れつつ、ライブハウスのこれまでの良さをどう落とし込んでいくか、そのバランスの取り方も試行錯誤しながら取り組んでいるところです。」

なるほど。これは本当に、自分のバンドも直面している悩みですね。なかなか満足にライブができないという。

でも最近も考えたんですけど、もともとが異常だと思いましたね。あんだけぎゅうぎゅうに人が詰まって、ぶつかり合いながらライブを見ていて。それが当たり前になっていたんですよね。

そもそもが無理があったと思うので、それがバレちゃったなという感じがしますけどね。

こういう街のライブハウスもそうですよね。結構異常なことですよね、地下で、何組もバンドが出て、短い時間の中でお客さんもいて、あれだけの人が出入りして、爆音でライブをやっているというのは。他にもそういうこといっぱいあると思うんですけど、特に音楽でいうと。

でもそういう流れの中でシステムが構築されていって、色んな関わるスタッフさんがそこにいて、仕事として成り立っていったと思うんですけど、冷静に考えたら結構不思議な状況だな、と、当事者としては、思いますね。

だから、あったものが奪われたというよりは、すごいラッキーだったものが(誰かに)見つかった、というような感覚ですね、自分の中では。バレちゃいましたか、という感じの、それくらいの気持ちでまた新しく作り直していくしかないと、個人的には思っていますね。

だからもう、ロックフェスとかも結構異常な状況ですよね。あれだけ何万人もステージに集まって。すごい夢のような状況なんですけど、ステージから見てると。本当に神様になったような気持ちになるときもあるんですよ。

でも、そういう夢を見ているような光景だなと思ってたけど、まぁ夢だったのかもしれないな、と思って、また別の形を作り上げていくしかないのかな、と思っていますね。

ただやっぱり、ライブをやって打ち上げとかもみんな楽しみにしてるし。でも最近の若いバンドの人たちは飲まないっていうのも聞きますけどね。打ち上げをしないっていう。でもライブハウス側としては打ち上げをしてもらわないと、そこでも収入を見込んでいると思うので。そういう悩みもありますね。

若いバンドの人にとっては、今くらいの感じがいいのかもしれないですね。すぐパワハラって言われますからね、打ち上げとか。自分がアマチュアのときは本当に吐くまで飲まされたりとかもしてたし、でも今そういうこともないだろうし。音楽の伝え方も、生の演奏だけではないですよね、色んな形があるし。

加藤さんの悩みっていうのは、もうそのまんま次に向けての希望でもあるのかなって思いました。でも本当に自分たちがこのライブハウスから出てきたと思っているので、本当に長く続いて欲しいですね。潰れてしまったらもう終わりだと思うので。

新しい形を探りながら、ちゃんとライブハウスが続いていって欲しいなと思います。お悩みありがとうございました。

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「これまで当たり前だと思っていたライブができなくなった」というミュージシャンの発言はよく聞いていましたが、その「当たり前」を、もう一歩深く掘り下げて言葉にしていて、とても印象に残りました。