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百貨店伸びぬネット販売 売上の1%未満4割

こんにちは、思考力特訓中の恩田です。

本日は以下を取り上げます。

記事によると、

・非対面の電子商取引(EC)の重要性が増しているが、百貨店の現状はリアル店舗に収益を偏重している。20年度のネット売上比率は回答43社のうち、「1%未満」が最多の41.9%、「1~3%未満」も30.2%だった。

・新型コロナは根底からビジネスモデルの転換を迫った。広域から大勢を集めて「館内に『密』をつくるのが百貨店だった」(J・フロントリテイリングの好本達也社長)が、コロナでこうした手法はとれなくなった。

・三越伊勢丹ホールディングスは20年秋から基幹店の多くの商品をオンライン上で買えるサービスを始めた。そごう・西武も同様の取り組みを秋に始める。Jフロントは百貨店と親和性の高い化粧品や芸術品で店頭でもオンラインでも接客・購入できる取り組みを始める。


百貨店は本noteで丸井を取り上げた際に触れましたが、市場は長いこと低迷。

ビジネスモデル変換の必要性が叫ばれて久しく、そんな中でのコロナ渦。

そこでオンラインに注力するも。。。


なぜ、ネット比率が高まらないのか?

以下に考察していきます。


1.日本のEC化率

まずは、日本の全産業のEC化率から

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約8%。

百貨店は1~3%。

異業種と比較して遅れていることがわかります。


続いて商品別では、

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EC化率が高いのは「書籍・映像ソフト:43%」「家電・AV機器:37%」。

この中で注目は百貨店のメイン商材である衣服・服飾雑貨。

これは19%。

しつこいですが、百貨店は1~3%。

この結果から衣服・服飾雑貨を求める消費者は、百貨店では買わず他のECサイトで購入していることがわかります。


2.ネット売上比率が高まらない理由

ネット売上比率低迷という記事がある一方で、以下のような報道もされています。

EC売上、エイチツーオーリテイリング86%増、近鉄76%増。

こんな記事を見ると、「伸びてるじゃん」「好調なのでは?」

と思えますよね。

ですので、一応、私の見方を説明しておきます。

上記報道の「好調」。

これは前年に対して。

前年の数字が低く、それを上回れば「○○%増」となります。

ちなみにエイチツーオーリテイリングの20年EC売上は84億円。
(前年は45億円なので前年から86%増)

同社の百貨店事業の2020年売上は3,478億円で84億円は2.4%。

「86%増でもEC化率は2.4%」

ということです。


それでは上手くいかない理由、私の観点は以下の2つ。

①取り扱い商品・顧客

③消化仕入れというビジネスモデル

一つずつ見ていきます。


①取り扱い商品・顧客

百貨店取り扱い商品の主は「衣料品」。

ちょっとオシャレで価格高めなブランド服。

あとは、富裕層向けの「高額商品」。

宝飾品や高級時計、美術など。

コロナ前まで、これら商品を購入し百貨店の売り上げを支えていたのは「インバウンド」と呼ばれる訪日外国人客や「高齢の富裕層」

これら「高価格な衣料品」「高額商品」「インバウンド」「高齢富裕層」とネットとの相性は?

「高価な衣料品をネットで購入したもののイメージと違ったり、サイズが合わなかったりしたら。。」

「何十万、数百する高価な商品をネットで買う気になるか?」

「外国人が日本の百貨店のオンラインサイトで購入する必要性はない」

「高齢者にECは不向き」

などなど。

百貨店の扱っている商品、顧客とオンライン。

親和性を全く感じないんですよね。


②消化仕入れというビジネスモデル

個人的にはこれが最大の原因だと思っています。

『消化仕入れ』により百貨店のオンラインストアは以下のような状況に陥っています。

「掲載商品・ブランドが少ない」

「顧客にとって購入リスクが高い」

オンラインストアとして魅力が全く感じられないのです。


まず「消化仕入れ」を説明します。

消化仕入れとは「百貨店の商品仕入れ」の方法。

例えば、Tシャツを販売するとします。

販売するためには、店頭にその商品(在庫)がなければ売れません。

だから百貨店はメーカーから商品を仕入れます。

一般的には、「メーカーから商品を仕入れ」た時点で、仕入れコストは発生します。

しかし、百貨店はこの時点でコストは発生せず、「仕入れて、それが売れた時点」で経費となります。

「売れた(消化)=仕入れ」

販売(消化)と仕入れが同時に起こる。

これが「消化仕入れ」です。

つまり、百貨店で売られている店頭の商品は「百貨店の在庫」ではなく、「メーカー側の在庫」なのです。

百貨店にとってのメリットは仮に売れ残ってもそれは自社の在庫ではなく、メーカの在庫。

不良在庫を抱えるリスクがありません。

一方、メーカー側にとっては常にリスク。

一昔前なら百貨店の「場としての魅力度」が高かったですからリスクを冒してでも、活用することは有効でした。

しかし、今や前述したように他のネット媒体、例えばZOZOなどで販売した方が売れる確率は高まります。

百貨店に出品するならZOZOなどのネット専売。

これが百貨店オンラインストアの「掲載商品・ブランドの少なさ」を引き起こしていると想像します。


もう一つが「顧客にとって購入リスクが高い」。

某百貨店のECサイトを見ると、

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39,600円のニットが売られています。

今やユニクロで○千円でカシミアニットが買える時代ですから。

この金額、安くはないですよね。

それが、

39,600円もする商品が、

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なんと、キャンセル・返品不可。

しかも「発送前」でも。

(いまや、返品無料が当たり前になりつつあるのに)

39,600円が返品不可だったら、怖くて買えなくないですか?

このような返品不可にしている要因も消化仕入れにあるのだと思います。

販売が確定した段階で仕入れコストが発生しますから。

百貨店としては

「仕入れコストは発生しているのに返品により売上は上がらない」

という自体を避けたいのでしょう。


今回の学び

百貨店は店舗ビジネスのビジネスモデルのまま、オンラインをやろうとしているように見えます。

これがECが上手くいかない最大の理由だと感じます。

時代背景の移り変わり、そして販売チャンネルの変化など、その時々でビジネスモデルをそれに適合するように転換させることが必要だと思います。

以上、本日も最後までお読みいただきありがとうございました。





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