【エヴァ考察】カヲル、13番目に堕ちたってよ
今回はQでカヲル君が使徒化したことについて.問題の多くを整理できたと思います.今更な話題かもしれませんが皆さんの考察の一助となれば幸いです.
1.再考の余地
このとき何が起きていたのか.これをめぐり多くの考察が生まれたわけですが、個人的にはシンエヴァ公開後もカヲルの使徒化に説明を与えることのできた考察はおろか,一定の支持を得た有力な仮説さえ存在しない状況に思えます.
私としてもすべてマルっと解決!というようなアイデアはありません.以下多くの考察が触れてきた点を再度地道に検討していこうと思います.
2.DSSチョーカー
まずはDSSチョーカーから再検討します.チョーカーの役割についてはリツコさんから説明がありました.
正式名称はDeification Shutdown System Choker.“Deification“とは神格化を意味します.覚醒回避を目的とする上記台詞から、エヴァの擬似シン化を防ぐことでインパクトの発生を阻止する装置といえます.チョーカー作動から爆発まで随分と時間的余裕があるじゃないといわれたりしますが、感情に飲み込まれた者が自力で覚醒を抑えるための猶予とも受け取れます.また、チョーカーに刻まれているのが呪詛文様であることから、人外未知で不確かなことが多いのでしょう.パイロットが自ら止める可能性を完全に捨ててはいないのかもしれません.
ではチョーカーの作動条件です.先程の装置の目的からすればエヴァのシン化“Deification“が条件に関わってくると考えられます.たとえばヒトでないというだけではチョーカーは作動しません.アスカは睡眠欲、食欲、羞恥心の欠如という使徒化状態なのに作動しません.
また、多少のフォースを使えても作動しません.カヲル君はシンジのDSSチョーカーを外す神通力を発動させたもののチョーカーは作動しません.
では今度は作動したケースを見てみましょう.カヲルの場合、半使徒化して13号機は擬似シン化形態を超えました(Qコンテ集.マーカー引用者以下同じ).
アスカの場合、左目の小型封印柱を抜き取り、全リミッターを解除、エンジェルブラッドなるものを注入された新2号機は光の巨人化します.その際、新2の周囲に稲妻、雷が発生していました.聖書などでは稲妻や雷は神の顕現を意味するので、新2が神化したということになります.したがって、封印柱を取り出すと同時に彼女のチョーカーが作動します.
さて続いて我らが主人公・碇シンジ.彼は再度覚醒しましたが、作動しません.
破ではパイロット覚醒時に機体は擬似シン化第1形態になります.上の2人のことを考えるとシンジのDSSチョーカーが反応してもよさそうです.
なぜ反応しないのか.さらに以上を整合的に理解できるのでしょうか.次の画像がヒントになります.
機体の緑の部位が赤色になることは疑似シン化第1形態を意味します.また、失った四肢の復元自体、使徒化に匹敵する力を要するはずです(cf. 新2).しかし、画像のように赤から緑に戻ります.つまり神化の力を発揮してもなおシンジ君は覚醒リスクを制御できていたと理解できるのです.シンクロ率∞は伊達じゃない.
カヲル君は13号機のシン化を止められず、アスカは端から止める気はなかった.チョーカーはパイロットに加えて機体の変化も考慮して作動するのです.
さて、ここまでは前置きで次からいよいよ本題です.検討する課題を一度整理しておきます.
3.カヲルの使徒化
さてカヲルは(半)使徒化するわけですが問題はその仕組みです.手がかりとなるのは、第12使徒に包まれた13号機に変化が見られることや、第12使徒が13号機に吸収されるコンテのコメントなど、13号機周辺の第12使徒の描写です.
上述の通りパイロットの覚醒と機体の覚醒は連動しています.機体に変化があるならパイロットにも変化があったと考えられます.13号機の覚醒はカヲルの使徒化に対応している.そしてあの場面でカヲルの使徒化に影響する事情といえば,その候補の筆頭に第12使徒が挙がるということになります.
第12使徒に包まれるシーンについてはある考察が参考になるので紹介します(下記リンク).要点を掻い摘めば、ウルトラ兄弟のゾフィーが、ゼットンにやられたウルトラマンに新たな命を与えて復活させるシーンは、赤い球体にウルトラマンが包まれる描写となっており、これが第12使徒に包まれてカヲルが使徒の力を取り戻すことと重なるというものです.
どうしてカヲル君だけ?という疑問が湧く方もいるかと思いますが、第12使徒とカヲル君の関係に注目すれば納得いただけるのではないでしょうか.
たとえば第12使徒の行いが復活の儀式だっとすれば、シンジはすでに破で覚醒しており復活の必要はなかった.失われているのはカヲルだからという説明があり得ます.また、Mark.06(第12使徒)はもともと第1使徒の体であることから(「君の名は」)、第1使徒の魂を持つカヲルにだけ反応したというのもあり得ます.さらに、Mark.06はいわばイヴであり(同リンク)、カヲルと母と子という関係性が認められることからも説明できるかもしれません.
4.カヲルと第1使徒
そんなカヲル君にDSSチョーカーは第13の使徒を検知します.しかし自身を第1使徒と自覚するのに、そう検知されないのは不自然です.というのも、シンエヴァの裏コード999のシーンでパターン青のみならず第9使徒を検知していることから、波長パターンの分析は使徒の個体識別もできることがわかります.するとやはり復活したカヲルを第1使徒と識別しないのはおかしいことになります.13使徒の検討に入る前に、まずはこのことについて検討する必要があるでしょう.
疑いの目は当然カヲル君に向かいます.あなた本当に第1使徒ですか?と.思えば、第6使徒殲滅後に突然棺から出てきて僕って第1使徒さと言われても胡散臭過ぎるでしょう(使徒の番号が登場順と考えられることにつき下記動画序盤).
これについては、新劇にも第1使徒アダムが存在したとする立場なら理解は容易になります(「アダム新劇場版:再訪」、「君の名は」).
詳細は記事に譲り、要するに諸々を考慮すると月面の巨人がアダムの体で、カヲル君はアダムの魂と考えると辻褄が合うというものです(セカンドインパクト時にはすでにアダムはお亡くなりになっていた∵カルヴァリーベース).
つまりカヲル君は元々第1使徒だったといえるが、もはや別の存在に生まれ変わっているのでMark.06とともに第1使徒とは識別されないということです.
上記コンテで赤い球体が胎児の姿をしていたことは、カヲルが遅まきながら使徒としての生を授かったこと、新たな使徒の誕生の表現だったといえます.
結局、カヲル君の第1使徒としての自認は、ループ前の記憶を保持し今回もアダムの魂を持った存在であることを知っていることに起因するものではないでしょうか.棺の数からもクローン的な被造物のようですし.そのようなわけで、彼が自身を第1使徒と呼ぶのは間違いではないけれど、厳密にいえば元第1使徒であって現在は第1使徒ではないということもできるのです.よって、カヲル君が使徒化してもそれは第1使徒ではなく、さしあたり“番号のない新しい使徒“となります.
と意気込む際に乗っていた、もともと自分の体で造られたMark.06が原因で自身の願いを断たれてしまうかなしい少年なのでした.
5.13番目について
(1)存在しない13番目
これまでカヲル君の使徒化を説明してきました.先ほど番号のない使徒に位置づけたように、第13という番号が付与されるにはまだ距離があります(第1でないことは説明しました).
実のところ、12番目まで登場したのだからそれに続く13番目であることは当然、とはならないのがエヴァの世界.これは上のマリの台詞が物語っています.その説明としては下記動画(9:10から)に詳しいのですが、端的にいえば預言書的な存在の死海文書には第12使徒までしか記されていないため13番目は人類補完計画においてあるはずのない存在である.しかし、ネブカドネザルの鍵を使ったゲンドウが死海文書に従うゼーレのシナリオを離れたため(死海文書の契約改定)、同書にない13番目が登場することになったということです.
こうしてマリの台詞が理解できるとともに13番目であることもわかるのですが、以下ではさらに13番目ということに様々な指摘があるので紹介していきます.
(2)堕とされた?
13番目に「堕とされた」というと落伍した、劣った状態になるといった意味合いが生じます.
聖書では12使徒は特別な存在で数は固定です(イエスの弟子が12人に限られるということではありません).そのことは、イスカリオテのユダがその地位を剥奪され、彼の代わりにマティアが12使徒に仲間入りしたことにも表れています.ここからすれば、第1使徒である者が12の枠を外れて13番目になることは、正規からの逸脱、非正規、偽者への転落といった意味を持ちます(上記①).
また、裏切りのユダが13番目の使徒という聖書における俗説があります.俗説というのも、ユダは使徒の地位を剥奪されたため、13番目の使徒という地位自体が存在しないので聖書の理解としては誤りとされている、ということです.もっともカヲル君に何か裏切っていたところがあれば数字の一致と相まってこの意味合いも込められていたとしてもエヴァ的には全く問題ないはずです.
ではカヲル君はどうだったかといえば、13号機と2本の槍(カシウスとロンギヌス)で世界を修復しようとしました.ゼーレに身を置きながら明らかにゲンドウと同じく自身の目的のためにゴルゴダオブジェクトでインパクトを起こす腹づもりではないか(上記②).
(3)始まりと終わりは同じ?
1つは最初の使徒と最後の使徒がともにカヲル君だったことです.もう1つは、
シンエヴァ公開前のものですが、ゲンドウの趣味がこんな回収のされ方をするのかと驚きです.
いずれも1つの表現に複数の意味を与えていて、これぞエヴァ、ですね.
6.ゲンドウの罠
さてカヲルの排除が自身の作戦通りだと言い張るわけですが本当でしょうか.ほとんどゼーレのシナリオ通りなのに見栄張ってないでしょうか.今回の課題について残るところはカヲル排除に係るゲンドウの策の解明です.
(1)DSSチョーカー装着
自分の手柄というためには、まずシンジのDSSチョーカーをカヲルが装着したのは計算通りと言えなければならないでしょう.思うに、それは次のようなシナリオだったのではないでしょうか.
どれほど確実だったかは知り得ませんが、見事うまくいったわけです.
(2)別レイのひと振り
わざわざゲンドウの仕業であることを示すこのカットをどう理解すればよいでしょうか.単純に第12使徒を装甲という拘束具から解放するためと説明できます.もう1つの理解として、思いつきですが次の画像をヒントに考えてみます.
画像のシーンを説明すると、別レイがMark.09から脱出したためコアを直接攻撃できるようになり、アスカは首からコアに直接弾を撃ち込むのですが、Mark.09は全身コアとなって再生し破壊に失敗する箇所のものです.あえて時系列に詳しく説明したのは、当初Mark.09は全身コアではなく、アスカの攻撃をきっかけに変身したのではないかという推測を示すためです.画像では伝わりにくいのですが、アスカの上記攻撃を受けたMark.09は一度沈黙した様子を見せますが、即座に画像のように全身赤色になり活動を再開します.
このように、一部の機体は外的致命傷を与えると全身コア太郎に変化すると仮定すると、それは同じMarkシリーズのMark.06についても当てはまるのではないか.つまり、大鎌でMark.06の首を刈りEVAとしての致命傷を負わせて全身コアの生命体へと強制的に変身させることが彼女の言う命令だったのかもしれません.
もっとも全身コアにしたことがどのように関係するのか.少なくともカヲルの使徒化や13号機覚醒の贄となる前にヴィレに殲滅されることは防げそう、とはいえそうですが.このように曖昧な部分が多いので今後の課題としてお預けになります(全身コアについては「人類補完計画とコア化」)
(3)未解決問題
さて問題はドグマの2本の槍の方です.しかし現時点では手も足もでません.
いったいカヲル君の想定はどのようなもので、ゲンドウはそれを見越してどのような罠を敷いたのでしょうか.これも今後の課題になります.老婆心ながら皆さんお忘れではないでしょうねということで最後に触れた次第です.
以上、少なくとも論点の整理と考察対象の明確化はできたかなと思います.
それでは今回の話を簡単にまとめて“おさらばです“.
最後まで読んでいただきありがとうございました.
画像:©khara/Project Eva.
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