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文学系中小イベントを開催しようよ

この記事は、地方都市で文学・詩歌または評論・ノンフィクションなどのZINEや冊子を販売する、文学系中小イベントを打つことを勧める記事だ。
2024年2月24日に静岡県浜松市でポエデイを副代表として主催し、同年8月24日に詩丼を、そして2025年2月22日にポエデイ2を開催しようとしている人がこの記事を書いた。


文学フリマがある

文学・詩歌・評論・ノンフィクションなどのZINEや冊子を販売するイベントには文学フリマが既にあり、日本の各都市で開催されている。

条里空間としての文学フリマ

その文学フリマのうちのひとつ、5月の文学フリマ東京において入場者から入場料を徴収したと聞く。それについて下記のように文学フリマ事務局へ会計情報と行動計画(あるいは行動指針)を示すよう求める提言が西中賢治さんによって為された。この記事では、入場料と会計情報については述べない。私はそれらの情報を把握していないために述べられないからだ。

西中さんの提言をトリガーとして各所から湧き上がった声に対して文学フリマの望月倫彦代表は

と書く。「全地域が同じ文学フリマです」という望月代表の主張は

ただ、僕は文学フリマを新しい場所でやる時、いつもと同じ文学フリマがそこに来るからいいのであって、違うことをやってはダメだと思っています。

文学フリマ代表・望月倫彦が語る、リアルなイベントの価値

と、2022年から一貫している。もちろん地理上の制約や地理的な条件によってどこの都市で文学フリマを開催してもそれぞれの独自色がにじみ出るだろし、なにより入場料の徴収によって文学フリマ東京だけが「違うこと」をやる結果になった。ところで、望月代表が来ると「いい」と価値判断する「いつもと同じ文学フリマ」はどこの文学フリマなのだろうか?

とは言え、文学フリマが「地域性・独自性を演出しないよう、文学フリマでは主催者に自制が求められ」るイベントであることに変わりはなく、西中氏の求める文学フリマの行動指針は既に示されていたと言える。
すなわち、文学フリマは入場料を徴収することにより入場者を正確に算定し、チェーン店のように画一化・秩序化されたイベント様式を伝播させながら、商業出版という条里空間のオルタナティブとしての文学フリマという新たな条里空間を築こうとしているのである。

人は、平滑な時空間なら数えることなく占めるが、条里化された時空間を占めるためには数えなくてはならない。

ドゥルーズ+ガタリ『千のプラトー(下)』河出文庫

そしてそんな条里化が、一介の歩兵が敵陣で〈と金〉へ成るように文学フリマに出店するドージン作家たちのなかから新人賞受賞作家やベストセラー作家や芥川賞受賞作家を輩出し、不良債権としての文学へ自活の場を与えると考えているようだ。

たとえば碁の平滑空間とチェスの条里空間。

ドゥルーズ+ガタリ『千のプラトー(下)』河出文庫

芥川賞作家が出るには50年くらいかかると思っていました。だから、20年くらいで今ほどの方々を輩出しているのは予想よりいいペース。

文学フリマ代表・望月倫彦が語る、リアルなイベントの価値

いまこそ文学系中小イベントを

現状での文学フリマの行動指針は当初からの目的に適っている。そして、文学フリマのあり方がその目的に適っていけばいくほど、文学フリマにあてはまらない人がこぼれ落ちるだろう。たとえば、それぞれの駒に意味と点数のある将棋ではなくそれぞれの役割が等しい石たちが陣地戦を幻出させる囲碁を求める人たちだ。そんな人たちの受け皿として、地方の文学系中小イベントが求められる。その希求は、文学フリマと対立するかたちではなく、文学フリマと共存するかたちで、そして文学フリマが制約してきた地域性や独自性を発揮するかたちで。

最も条里化された都市さえも平滑空間を出現させるのだ。

ドゥルーズ+ガタリ『千のプラトー(下)』河出文庫

ちなみに、この場合の地方には東京の中央線沿線や文学フリマが既に開催権を掌握している地域も含まれる。

気軽にはじめられる文学系中小イベント

条里空間である文学フリマとともにこれから求められるようになるだろう平滑空間としての文学系中小イベントは、じつは気軽に始められる。出店者を、地方都市では現実的な規模感である20ブース以下に抑え、駅前にある会議室やちいさなイベントスペース、もしくは個人経営の飲食店などを借りればドージン誌の印刷費用と同じくらいの費用で場を借りられる。たとえばポエデイの場合、会場と音響機材のレンタル費用とその他通信費と広告掲載料で30,000円以下だった。

文学フリマが明かさない「会計情報」の件で触れなかったけれど、文学フリマを条里空間たらしめている要素のひとつがWEBカタログ、つまりPlag!だ。中小イベント開催にあたって出店者や入場者を集めることと同じように難しいのがこのWEBカタログ=Plag!の機能である出店申込と出店者カタログだけれど、無料のGoogleフォームとそのcsv機能を使えば簡単にそれっぽい代替物は作れる。そして、いまはAIが最適なhtmlを吐き出してくれるし、決済機能やEC機能を備えたウェブサイトもある時代なのでそれらを使えば困ることはないだろう。それと、出店料をとるにしても20ブース以下ならば手集金で領収証を切ればよい。

また、期待する客層とややずれるかもしれないが、開催予定の文学系中小イベントを登録できる情報サイトもある。

出店者集めは開催予定都市の近隣で開催されている文学フリマや他の文学系中小イベントや美術など他ジャンルの展示会や地方文芸賞に積極的に参加して顔を出し声をかけていくしかない。でも地道にやっていけば近隣に住む同じ志を持つ人と出会えるものだ。

もしあなたが既存のイベントのあり方にすこしでも疑問を持ったのであれば、気軽に文学系中小イベントをはじめてみよう。もちろん無理に最初から平滑空間を目指さなくてもいい。イベントをはじめたばかりのときに有名人が出店参加してくれるなら「誰々さんが出店します!」と広めて差別化を図りたくなるのは飛車を手駒にすると喜んでしまう人の性だからだ。言動でイデオロギーを表現するやり方は、計画と反省を繰り返すことでいつか自然に身につく。
もし、中小イベントをすこしでもやろうと思ったり困ったことがあったりしたら私でよければ相談にのるよ。

文学系中小イベントいろいろ

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