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『草枕』に溶けたい。

昨日。
新橋で友人と夕食を共にする約束があった。
夕食前に紹介したいお店があるから、と16:00に内幸町で待合せとなる。

内幸町。
通過することはあっても、降車する機会はなかった街だな。
”内幸い”って由来を後で調べてみよう。
なんか小説に登場する架空の街みたいな、そんな、カンジ。

昨日。
アラフォー域に入り、村上春樹氏の小説が読めるようになった、旨の投稿をした。
歳を重ねることによって、読書の許容域が広がる喜びを記した。
そのようなタイミング。

友人と落ち合い、こっちこっち、とオススメのお店に案内をしてもらう。

着いたのは、カフェ『草枕』

”漱石!”
いちばん最初に思ったこと。


小料理屋さんのような外観で、そーっと入店した。


まさに。
小説の1ページの中に、そーっと入ってしまった、私。
たくさんの本が所狭し。作家もジャンルも色々で、祖父の本棚を思い出す。
雑踏から一気に切り離され、ゆったり、という律を感じるカフェだ。

「どうぞ、お好きな席へ。」
物腰の柔らかなマスターがメニューを持ってきてくれる。
ドキドキした。
私、何度も色々な小説の中でお会いしてますよね、と心の中で呟いた。
そんな雰囲気の素敵な方だ。

水出しコーヒーを注文する。

友人とは何を話すでもないが、キョロキョロとしている私を許してくれている。
この情景が、本の中に、一節となって存在しているようで。
ときめいてしまった。

所狭しの本棚には、あ、ホラ。村上春樹氏の本もチラチラと混ざっている。
私ね、と少し慌てるように昨日の投稿の話をした。
人生にはこういう、不思議な一致、タイミングがあって、だから面白いよね、
と友人は言ってくれた。

キリッとした水出しコーヒーは、いうまでもなく美味しい。
丁寧にされているのが、素人でも良くわかる味だし、とってもホッとする。

お隣では男性二人が熱心に話し込んでいる。
失礼だけれど、ラジオを聴くみたいにお話を聴いているのも楽しいな。

奥のカウンターには女子大生かな、お嬢さんが。
小説を広げながらホットコーヒーを飲んでいる。素敵だ。私もそうなりたい。

マスターがゆっくりと、レコードを替えている。
アナログの、針のやつだ。やっぱり丁寧だ。
どうしよう。コンセプトに全く隙が無い。もう好きです。

時は止まって無いけれど、見えるようで。
淀むことなく、静かに流れている空間。

とっても素敵なお店を紹介してもらえた。

月初めにその月にやりたいワクワクリストを書き出す。
5月の1項目が埋まった。
今度はひとりで、内幸町で降りて、村上春樹氏の小説を持って訪れよう。

あのブラウスと、スカートを合わせて、あのミュールを履いていこう。


水出しコーヒーをすすりながら、キラキラと画策した。



-20220427-



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