西荻ラプソディ

西荻窪にある喫茶店〝それいゆ〟。

上京してすぐの頃、この〝それいゆ〟でバイトをはじめました。


実はバイトを探し始めて最初に面接を受けたのはイタリア料理のお店でした。面接を受け、丁重にお断りされた私はその足でパチンコ屋に向かい、しっかり負けてトボトボと歩いている時に〝それいゆ〟のバイト募集の貼り紙を見つけたのです。


〝それいゆ〟へ面接に行くと、レトロで温かみのある店内で、これまた温かみのあるレトロなお姉さんが迎えてくれました。

※…（それいゆでは昭和30年代の創業から2人の姉妹の店主さんによって営業を続けられていて、バイトの私達は店主さんの事を〝お姉さん〟と呼びます。）


面接でお姉さんは本当に優しく自分を迎えてくれました。お姉さんが出してくれたコーヒーを2人で飲みながらの面接でした。


〝それいゆ〟のコーヒーは水出しコーヒーです。当時の私は普段コーヒーをまったく飲まなかったので、〝それいゆ〟のコーヒーの美味しさもわからずにただただ飲み進めてしまったのがとても申し訳なかったなと後になって思いました。

無事に〝それいゆ〟で働かせてもらえる事になり、1年とちょっとの間お世話になる事になります。


バイトの初日、閉店の23時が過ぎて表の看板を店内へしまうようにと言われた私は、看板をしまいに店の外に出ました。

人通りも少なくなった路地に立って「あー、東京で暮らしてんだ。」って、しみじみ思いました。あの時の西荻の狭い路地の風景はずっと忘れないと思います。




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