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アーティストの目線を通して、建物の可能性と地域の声を探る。ワークショップ「ふうせん屋さん」イベントレポート

omusubi不動産では「旧 藝大寮活用プロジェクト」と題して、2022年3月に閉寮した東京藝術大学(以下、藝大)の学生寮の利活用の方法を探るプロジェクトを展開しています。
これまでに、松戸や藝大にゆかりのあるアーティストによるテスト滞在やイベントなどを実施してきました。

*プロジェクトの背景や過去のイベントの様子は以下よりご覧ください。
 ・9/4 演劇ワークショップ「芸大寮最後の夜」イベントレポート
 ・9/11「ドクメンタ15 報告会

今回は、その一環として行われたワークショップ「ふうせん屋さん」の様子をお届けします。

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見事な秋晴れの空が広がった9月25日(日)。しばらくの間使われてこなかった学生寮の庭先に、たくさんの白い風船がたなびき、賑やかな声が響きました。

この日行われた「ふうせん屋さん」は、藝大出身のメンバーを中心とした4人によるワークショップです。

朝11時、旧藝大寮の庭に集まった子どもたち。手には馬の絵がプリントされた白い風船を握っています。

「このお馬さんを連れて行きたい場所をイメージして描いてみてね」というスタッフの呼びかけを受けて、子どもたちは色とりどりのペンを手に、真剣に風船に絵を描いていきます。

スタッフや親御さん、他の友だちとお喋りしながら、この街でお気に入りの場所や行ってみたい憧れの場所など、さまざまな街の風景を想像して描いていきます。

通りがかりに風船を見つけた親子や、近くの公園で参加者から話を聞いた親子も加わり、庭はいつの間にかワークショップを楽しむ多くの人々で賑わっていました。

絵を描き終わったら、記念撮影タイムです。裏には自分が描いた場所の名前を書き、風船と一緒にパチリ。合わせて、どんな風景を描いたのか、それぞれの子どもたちの想いをスタッフが聞いていきました。


風船には「ぼくじょう」「花火大会」「ピクニック」「山」「みらいのこうえん」「くものうえ」「コンクリートジャングル」などさまざまな場所が描かれました

ワークショップの合間では、風船を持って、旧藝大寮の周りの街中にも繰り出しました。

公園や道端でワークショップにお誘いしたり、街や旧藝大寮にまつわるお話を聞いたり。

1日が終わる頃、さまざまな風景が描かれた風船が庭に置かれると、枯れ草がまるで藁のようにも見え、その中で馬たちが自由に舞っているかのようでした。

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この「ふうせんやさん」ワークショップを中心となって企画されたのは、村上愛佳さん。村上さんは、旧藝大寮活用プロジェクトの企画メンバーでもあります。今回の開催のきっかけなどについて改めて伺いました。

村上愛佳さん

ー今回のワークショップのきっかけを教えてください。

村上さん:私は、このプロジェクトを運営しているPARADISE AIRの加藤くんやomusubi不動産の遠藤さんと一緒に、この場所の再活用について考えるための作戦会議を定期的に行っています。
この建物の新たな可能性を探るために「まずは地域の方の声を聞くことから始めたいな」と思って。地域の方が参加しやすい企画をと考えた時に、住宅展示場のイメージが浮かんだんですね。「人々に、住宅として使われていた建物を開く」っていうのがまるで住宅展示場みたいだなと。そこから住宅展示場で装飾や集客のために使われている風船を使ってみようとアイデアが膨らんでいきました。

ー風船には馬が描かれていましたね。あの馬のモチーフはどこからきているのでしょうか?

村上さん:リサーチとして松戸の歴史を調べていた時に、松戸という地名の由来が、馬を連れて多くの人が行き交った宿場町である「馬津」という昔の地名から来ているという説を知ったんです。元々宿場町だったこの場所にもかつてたくさんの馬がいたかもしれないというところから、“今”の街中に馬を出没させるというコンセプトを思いつきました。みんなに描いてもらったいろんな馬が、さまざまなシチュエーションで再び現れるというようなイメージです。

ー子どもたちが描いた後の風船を持ち帰っていて、まさに馬たちが現代の街の中に放たれていっているかのようでしたね。
今回、この場所を使ってみていかがでしたか?

村上さん:実は、私はここが現役の寮として使われていた時にも何回か来たことがあるんです。久しぶりに来れて、しかも藝大を卒業したメンバーとも一緒にやれてよかったなと。

村上さん:今回私は旧藝大寮に滞在はしなかったのですが、この企画を進める中でここに滞在されている方と話をするのが楽しかったですね。大学を卒業すると、なかなかこういうアトリエのような場所に一同に集まって話す機会が減ってしまうんです。だからこの場所のように、滞在しながら制作したり、イベントとしてアウトプットできる場所はすごく貴重で、創作にとって良い環境だなと感じました。

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多くの地域の方が集まり、人々の街への想いをくみ取る場となった「ふうせん屋さん」ワークショップ。
この場所だからこそできることへの期待が、少しずつ広がっているように感じられた1日となりました。

参加してくれた方からは、
「アーティストや色々な人と話すことで、考えを知ることができて面白い」
「『藝大の寮』として使われていたこの場所が、今後子ども向けのアート活動で使われていくことを楽しみにしている」という声も。
そこからは、かつて学生の住居だった空間が、親子連れなどさまざまな世代の集まる場所としての可能性も持っていることが見えてきました。

地域の文脈や建物の背景を汲みとり、アーティスト目線で人々の参加しやすい企画としてアウトプットすることで、
街の人との接点を持ち、建物の可能性を広げる機会とすることができたのではないでしょうか。

地域へ活動を開いていくこと、その中で街の人と顔の見える関係性になること。そういった機会を重ねていくことが、今後藝大寮の可能性を広げていく上で必要なのかもしれません。


旧藝大寮活用プロジェクトでは、この場所の可能性を探るさまざま企画を実施していきました。その様子は随時お届けしていきますので、どうぞお楽しみに。

文章・写真:原田恵

【今回のイベント概要】
「ふうせん屋さん」ワークショップ

日時 :2022年9月25日(日) 11:00-16:00
参加費:無料
定員 :40名程度
詳細 :旧 藝大寮活用プロジェクト イベントページ

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