教科書の話

Twitterで、

学部生がやたらレベルの高い教科書を読みかがる風潮あるけど、そんなの読むより初学者向けか標準的な教科書を完璧にする方がよっぽど良い。レベルの高い教科書を読むのは大学院生になって専門にする分野だけで良い。

とツイートしたところ、とても伸びてしまいました.

ということはこう感じている人が少なくないのかな,と思います.

Twitterをやっていると,全人類が学部生のうちから並みの院生以上の能力を持っているように思えます.実際そういう人を観測することも多いのがTwitterの意味わからないところですが,そうではない人向けの物理の記事ってあんまり見かけません.

そこで,ここでは僕のような雑魚物理学徒でもなんとか理解できるような,簡単でおすすめの教科書を紹介したいと思います.

とは言っても,僕もあまり教科書を数読んでいるわけではないので,紹介できない分野もありますのでご了承ください.

はじめに

まず,前にツイートしたことがあるのですが,僕に近い平凡な物理学徒には,

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この講談社基礎物理学シリーズを推しています.
B1やB2の方で,授業以外で物理を独学して見たいという方はまずこれを見てみると良いと思います.
完全なる初学者向け(=高校を出てすぐの人向け)に書かれているにも関わらず割と深くまで書かれており,このシリーズを練習問題まで含めて完璧にすれば,個人的には東大,京大,東工大以外の院試なら十分勝負できるくらいの実力はつくと思います.

大学の教授の部屋の本棚を見ると大抵あります.
とにかく読みやすいので迷ったらこれをお勧めします.

力学,解析力学編

いきなりあんまり紹介できません.
強いて言えば,B3くらいで院試の勉強を始めたくらいからは

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でひたすら演習していました.院試の頻出問題も多くあり,非常に得るものが多かったです.
力学は,高校と比べても微積でテクニカルになるだけなので比較的問題演習がしやすいと思います.そして,問題演習ができるならした方が定着は圧倒的に早いと思います.

解析力学は申し訳ないですがしっかり読んだ本がないので紹介できません(お前は本当にM1か?).

電磁気学編

まず,電磁気学は前述の講談社基礎物理シリーズが非常にわかりやすいです.あれ1冊で院試まで完結します.
あとB1かB2の時に開いてわかりやすかったのが

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兵頭俊夫先生の電磁気学.レベル的には講談社と大差なく,練習問題も豊富なので初学者に適切だと思います.

量子力学編

はい,量子力学は大学の物理っぽいのでみんな背伸びしたがりますね.
が,量子力学こそちゃんとステップを踏むべきだと思います.

僕が最初に先生にお勧めされて読んだのが

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でした.計算などは詳しくありませんが,このシリーズはカタログのように流れがざっと書かれています.
初学者が,まず量子力学ってなに?どんなことやるの?というアウトラインをつかむのに最適な本です.

計算は詳しくないので,そこは

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でカバーしました(後はおなじみ小出量子にもお世話になりました).
量子力学の計算で最初に躓くのが特殊関数だと思います.僕は数弱なのでここでやられてしまいました.
ただ,この本では級数展開で丁寧に特殊関数を計算していくので,僕のような数弱にも非常に明瞭でした.
ちなみにこの本は,”学部生の女の子が大学院生に量子力学を教わる”という体で書かれており,最終的には仲良くなってデートをして終わります.

発展的な量子力学の本として有名な猪木・川合は,これらを読んだ後,院試前に演習書として使うのが適切な使い方だと感じました.猪木・川合も院試で出る範囲はほとんどの大学でIまでで,II以降は余裕のある人や,院進後に読めば良いと思います.

熱・統計物理編

まずは,みなさんおなじみ

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です.最近読みました(お前は本当にM1か?).
わかりやすさは言わずもがなだと思いますし,わかりやすいロジックや詳しい注釈が,読んでいてこれはB2くらいの初学者に最高だなと思いました.
ただし,この本の唯一の悪いところは,読んだ人がみんな物性理論や非平衡に進みたくなるところですね.

統計は,あまり聞きませんが

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が良かったです.どの本もですが,この本は特に統計物理という大学特有の物理のモチベーションがはっきりと語られていて,こういうところがきちんと書いてある本は初学者にはとっつきやすいと感じました.

物理数学編

大学に入ったら,まず力学や電磁気と並行して勉強しないといけないのが数学だと思います.が,物理の各分野ほど数学は教科書の話はあまり聞かないですね.
僕は,

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を先生に勧められました.これは高専で使われている教科書です.
行列やフーリエ変換等,確実にどこでも使うであろう数学が,高校の数学の教科書のノリで書かれていて,本当に誰でも読めます.当然,高校の教科書のノリなので例題や問題もいいです.
このような,高専向けの教科書や,工学部生向けの教科書は,本当に最低限だけの知識が詰め込まれているので穴場だと思います.

その他

院試に関係ないので詳しい紹介は省きますが,あとは大きく相対性理論がありますね.
大学で物理を学ぶからには相対論をやってみたいという人も多いかと思います.
相対論は,
『一般相対性理論を数式で一歩一歩理解する(ベレ出版)』
『相対性理論(岩波書店)』
あたりが初めて相対論をやる人には読みやすいと思います.もっと数学的にやりたい人は『シュッツ相対論入門』とかですかね(初めてにしては難しいと思います).

最後に

ここまで一通り弱い院生が紹介してきましたが,重要なのは読む本なんて本当はなんでも良いということです.
本屋や図書館で見て,読みやすいと思う本を読むのが一番だと思います.
が,Twitterをやっていると,強い人向けの意見が多く,僕みたいな弱い人がちゃんと理解することが可能な本があまり紹介されていないのでこの記事を書きました.
参考になれば良いですが.

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