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夜空に泳ぐチョコレートグラミー/町田そのこ

すごい作品だった。
きっと一生忘れられないんだろうなと思う。
デビュー作って、マジか。

狭い世界に生き続ける苦しみを書いている作品。
その世界から抜け出す人もいれば、その世界で生き続ける決断をする人もいる。
どちらも正解のひとつで、ぱたぱたと尾びれを懸命に振って、息ができる場所を探して泳いでいる。
どちらかの決断をしなければいけないのだけど、個々の選択の前に立ちはだかるのは、苦しみすら感じる人と人の持つつながり、しがらみ。
こんなに大切に思っているのに、その大切な人は自分とは別の決断をするかもしれない。
君はここで生きることを決めたけれど、私は出ていくね。そんな、切なさ。
空はつながっているよ、みたいな感じで、この作品は海がつながっているんだね。

どの作品も切なくて、ぎゅっと胸が締め付けられて、そのせいで忘れられなくなる。
何年経っても主人公を思い返して、「あの時こうしていられたら、でもあのときの思い出があるから今があるんだろうな」ってうだうだ考えてしまう。
なのに、最後の作品だけはそれを裏切ってくれて、ちゃんと幸せになってくれて、ありがとうという気持ちになる。ずるい。こんなの書けるかよ。くそー!

短編集なんだけど、冒頭の文の強さがすごすぎる。クゥー!こわい。

溢れ出す涙から、「海」ができそうだったよ。

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