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中小企業のDXをはじめよう。小さくはじめるDX

私は、現在いわゆる「DX」と呼ばれる分野の伴走支援をいくつかの中小企業さんを相手にお手伝いさせていただいています。しかしながら特に地方の中小企業ではDXという言葉が意味する壮大さのあまり、ほとんど手をつけられていない企業が多いのではないかと思っています。

今後しばらくそうした中小企業の状況を少しでも改善できるようなポイントを解説していきたいと思っています。今回の記事では、まず抑えておくべき基本的な考え方について説明しています。

実際問題中小企業はDXに手をつけられていない

https://www.ipa.go.jp/jinzai/chousa/skill-henkaku2019.html

さきほど主観で「ほとんど手をつけられていない」と話しましたが、実際にIPAの実態調査をみてもその実態は正しいようです。100名以下の企業では3割未満と、ほとんどの企業がDXと言っている世の中で手を打てていない状況です。

相談できる相手がいないが情報として転がっている事例は参考にならない

一方で中小企業の経営者の方々と話していると、こうしたDXや経営改善に興味を持っている方のほうがむしろ多いのです。なぜこのようなことが起きてしまうのか。経営者の方から聞くのは「なにか始めないとと思うが相談相手がいない」「ためしに知り合いのシステム屋さんに相談したらものすごい金額の見積もりを出されて断念した」という声がほとんどです。前者はともかくとして、後者が起きてしまう問題は「大手の導入事例などをみて自分たちも同じことをしようとするから」なのかな、とも思っています。

そもそも中小企業がいきなり「システム開発」をする必要はない

そもそもでいえば、中小企業が新規でシステム開発をする必要はほとんどの場合ないと考えています。
クラウドサービスが普及した現在、考えられる業務のほとんどはこうしたサービスで賄うことができます。
会計管理はマネーフォワード、人事労務はSmartHRのようなバックエンドサービスはもちろんのこと、販売管理、マーケティングの分析、ダイレクトマーケティングまでありとあらゆるサービスがこれらの業務に適応すべく開発されています。

中小企業がすべき「DX」とは?

それでは、逆に中小企業がすべきDXとはなんなのでしょうか。よくハマりがちな罠とあわせて考えていくべき方向性を提示します。あんまり多くても頭に入ってこないと思うので3つくらいまずは意識してみてほしいことを書きます。

1.「DX」ではなくまずやるのは「IT化」という認識を持つ

この見出しをつけましたが、まず多くの方がDXとIT化※を混同してしまっている(というかよくわからないので区別がついていない)のではないでしょうか。

あまり掘り下げるとわからなくなるのでかなりざくっと説明すると、IT化というのは「今の業務にITを導入すること=デジタル化や業務改善」、でDXというのは「その結果もたらされる人や組織、ビジネスモデルの変化」です。DXの前提にIT化は必要ですが、IT化したからといってそれがすなわちDXになるわけではありません。

こうして整理すると、これを読んでくださっている方のほとんどはDX=組織やビジネスモデルを新しくしたい!!、というよりかはIT化を通じた業務改善をしたい、というものなのではないでしょうか。

※もうすこし掘り下げると「デジタイゼーション」「デジタライゼーション」などのキーワードもでてくるのですが、ここではとりあえず「IT化」としています。もしこのあたりの詳細な話を知りたくなったらぜひ及川さんのソフトウェア・ファーストなどを読んでみてください

2.業務全体ではなく個別の業務をIT化することを考える

実際にIT化を検討しはじめると、「経営層」が指示し、システム会社などに見積もりや要件定義を依頼することがほとんどだと思います。しかしここにも落とし穴があるなぁと私は思っています。

どういうことかというと

  1. 部署単位や業務単位でIT化を考えてしまうため、要件が肥大化する

  2. 要件が肥大化すると、全部をカバーできる既存のクラウドサービスが見つけられない。あるいは特定の業務での精度が問題になり、導入の効果がえられないと感じるようになる。

  3. 結果的に膨大なコストをかけてシステムを1から開発するか、やらない、という二択になる

というものです。こうした罠に陥らないためには「個別の業務をIT化する」という考えを持つべきです。

受注関連の業務であれば、受注業務全体ではなく、FAXの受注、電話の受注、メールの受注を分けて考える。

生産管理であれば、Aという製品の生産、Bという製品の生産、と分けたり、生産管理の中でも在庫管理、工程管理、設備管理と分けて、一番効果がでそうな特定の業務だけをIT化することを考えてみてください。

そうすると、大きなパッケージを導入するのではなく、そもそもエクセルのマクロやをちょちょっと組むだけで自動化できたり、Googleの無料でつくれるフォームをつくるだけで代替できたり、お金をできるだけかけないで既存のものの組み合わせでどうにかなる方法を見つけやすくなります。

そしてこのときには、その運用にあたっている人の声をよく聞き、彼らが頭を悩ませていることに対して改善ポイントを見つけていくと良いと思います。

3.今の業務をIT化するのではなく、運用をITに合わせていく

2の話とも関連しますが、IT化の失敗の多くは「ITを業務に合わせようとする」ことによって発生していると思います。

これを人間に例えると、「既製品のスーツが着心地が悪い、営業に歩くのには合わない、といって完全なオーダーメードスーツを注文するようなもの」です。スーツだと数十万でも出来るでしょうが、IT化の場合は最低でも桁が2つくらい違ってしまいます。

これでは、IT化の費用対効果は望むべくもありません。逆に言うとソフトウェアはコストゼロで複製できるものなので、既製品を使うことによって大きく費用が下げられる分野ということを意識してください。
あれだけ高機能なマイクロソフトオフィスがたった数万円で利用できるのは、世界中で何億もの人が利用しており、それによって開発費用が割られているからです。

話を戻すと、2で言った個別具体的な業務をIT化することを考えるのはそのためでもあります。個別具体的にすることによって、IT化すべき範囲が明確になります。IT化すべき範囲が明確になったら、その周辺の業務をそれに少しあわせてあげるだけで導入がすすめられるためです。

特にクライアントが関わる受発注関連の業務などはどうしても運用を変えることに及び腰になりがちです。FAXで飛んでくる発注書があるばかりにIT化が進められない、というようなケースもよく聞きます。OCRで精度がでればよいのですが、FAXで送ってくるクライアントに限って殴り書きだったり略称だったりで難しい、みたいなことも。
ただ、BtoCならともかくBtoBで継続して付き合いのあるクライアントはせいぜい数十社、そのうちFAXで大量の注文をしてくるような企業は数社です。であれば、そのクライアントを個別に訪問し、受注システムの利用方法を丁寧に説明して利用してもらえるようにお願いすることで案外コトが進んだりします。

まとめ

いかがでしたでしょうか。
DXをすすめる上で大事なことは「業務を分解し、IT化の効果がでそうな個別の業務にフォーカスして、小さくはじめること」だと思っています。

戦力の逐次投入だとかそんなことを考える前に「まずは小さくでも成功して、社内に『IT化、進められると便利じゃん』という空気感をつくること」です。

なかなかハードルが高そうに見えるDX、IT化といった内容ですが、こうして考えていくと少し導入を考えやすくなるのではないでしょうか。次回以降は具体的なサービスにも触れながらTIPS紹介していきたいと思いますので、こちらもぜひお待ち下さい。

今後もnoteを更新していきますので、もし役に立ったなと思ったらポチッとハートマークを押して頂けると喜びます。



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